上 下
13 / 257
異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第12話  領主の屋敷に連行されちゃう、ぽっちゃり

しおりを挟む

 オリビアの馬車からオリビアのお父さんの馬車に移動させられた、わたしたち四人。
 その車内は大変いたたまれない。
 なぜならオリビアのお父さんが終始しゅうし無言のぶちギレオーラを放出していたからだ。

 ほどなくして領主の屋敷に到着し、わたしたちは現在、執務室の机の前に並んで立たされている。
 執務机の椅子に腰を下ろすオリビアのお父さんが、鋭い目付きでオリビアを見た。

「さてオリビア、何か弁解はあるか?」
「……いえ、何の申し開きもございません。わたしがデリックとレイラにお願いして、《魔の大森林》まで連れて行ってもらいました。だから、どうかこの二人は許してあげてください」
「……まあ、そんなことだろうとは思っていた。目的はやはりダイヤモンドミスリルなんだな」
「はい……」

 オリビアのお父さんは、深いため息をついた。

「《魔の大森林》がどれほど危険な場所かお前もよく知っているだろう。とてもじゃないが、デリックとレイラだけではダイヤモンドミスリルが採掘できる領域までたどり着くことなど不可能だ。頼むから、こんな無茶なことはやめてくれ。お前の身に何かあれば、俺は街の管理どころではなくなってしまう」
「お父様……。はい、もうこのようなことはいたしません……」

 オリビアのお父さんは諭すような口調でオリビアの行動を叱った。
 オリビアも素直に聞き入れ、今回の行いを反省している。
 娘の身を案じる親心が伝わったのかもしれないね。
 いい話にまとまって良かったよ。

 親子愛にしみじみとしていると、オリビアのお父さんがわたしに視線を向けた。

「それで、その者は誰だ? デリックの新しいパーティーメンバーか?」

 え、わたし?
 これって自己紹介とかした方がいいのかな。
 どうしたものかと考えていると、隣のオリビアが説明してくれた。

「この方はコロネさんといいます。他国からいらっしゃったそうで、《魔の大森林》では私たちの命を救っていただきました」
「コ、コロネです。よろしくお願いします」

 わたしが申し訳程度の自己紹介をした瞬間、オリビアのお父さんは机をバンッ! と叩いて立ち上がる。

「そうか! これは挨拶が遅れて申し訳ない。俺はこの街、ベルオウンの領主をしているアルバートだ。此度こたびはオリビアを救っていただき、感謝する!」
「い、いえ、わたしは軽く手助けした程度なので」
「むっ、そんなことはありません。コロネさんがいなければ、本当にわたしたちは死んでいたかもしれないです」
「そうだな。良くてもお嬢一人を逃がせていたくらいだろう」
「ああ。コロネ殿がいなければ確実に私とデリックは死んでいた。心から感謝している」

 オリビアを皮切りに、デリックとレイラもわたしを称賛し始める。

 そんなにわたしを持ち上げないで欲しいんだけど。
 このアルバートって人、領主なんだよね?
 一応この街にしばらく滞在しようかと思っているから、領主様の前で変な悪目立ちはしたくない。

「ほう……オリビアらにここまで言わせるということは、よほどの窮地きゅうちを救ってくれたのだな。この街を治める領主として、深く礼を言おう」
「えっと、アルバート、様? 本当にわたしは大したことはしてないんで……」
「フッ、そう固くならなくてもいい。娘の命の恩人だ。無理に敬語も必要ないし、アルバートと呼んでくれ」

 オリビアと同じこと言われたんだけど。
 これはやっぱり親子ってことなのかな?
 でも、二人とも自分たちが貴族であるということを理解した方がいいと思うんだけどね。
 普通の人なら怖くてフランクに接するなんてできないだろう。
 まあ、わたしは何かトラブルがあったらどこかへ逃亡する気マンマンだから、そういう意味では精神的に少し余裕がある。

「それじゃあアルバートさんって呼ばせてもらいます」
「うむ。それで、娘を救ってくれた礼の件なんだが……」
「いやいや、お礼はいいです!」
「いや、しかしだな」

 明確な断りのメッセージを伝えたけど、アルバートさんも頑固なのか引き下がらない。
 是が非でもわたしにお礼の品を受け取らせたいようだ。

 こうしてしばらくの間、わたしはアルバートさんと押し問答を繰り広げることとなった。

 いや、このやり取りはさっきオリビアとやったばかりだからもういいよ!



しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

処理中です...