ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

文字の大きさ
上 下
9 / 265
異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第8話  ついでにウルフも片付けちゃう、ぽっちゃり

しおりを挟む

 響きわたる狼の遠吠えと同時に、森から数十体の黒い魔物が飛び出してくる。
 きっと狼の魔物なんだろうね。
 わたしがそう予想すると、先頭で剣を構えるデリックが叫んだ。

「あれは――ブラックウルフだ!」

 デリックの言葉に、レイラとオリビアが息を呑む。

「ブ、ブラックウルフだと!?」
「そんな……」

 あの狼はブラックウルフっていう名前なんだね。

 そう言えばわたしのスキルに『食の鑑定』ってのがあったし、ちょっとあのウルフで試してみるか。
 なんで『食の』って名前がついてるのかは気になるけど……まあいいや。

 いざ、鑑定!

 ―――――――――――――――――――
 種族名:ブラックウルフ

 《魔の大森林》に生息する魔物。
 ―――――――――――――――――――

 …………ん、これだけ?

 なんかもっと色々と情報が表示されるかと思ったんだけど、なんかすごい淡白だな。
 さっきギガントボアの肉を鑑定した時はもうちょっと詳しい情報が載ってたと思うんだけど……なんでだろう?

 んー、まあいっか。
 とりあえず、あの群れで走ってきてる狼はブラックウルフっていうんだね。
 鑑定文には“《魔の大森林》に生息する魔物”って書いてたけど、さっきまでわたしがいた森は《魔の大森林》って名前なんだ。

 ……それにしても、なんだか絶望感が漂っている。
 もしかしてあのブラックウルフたちはオークの群れよりも強いのかな?
 鑑定から大した情報が得られなかったから、そこら辺のバランスがいまいち分からないんだよね。
 わたしが呑気にそんなことを考えていると、レイラが意を決した様子で前に出る。

「……デリック。私たちが残れば、お嬢様だけでも逃がすことはできるか」
「残念だが、難しいだろうな。ヤツらは群れでの行動を基本とする厄介な魔物だし、しかもかなり興奮してる様子だ。そこらに転がってる大量のオークの死体の匂いに引き寄せられたんだろう。恐らく、すでに俺たちも獲物として認識されてる」
「くっ……! では、一体どうすれば……」

 おお、デリックはブラックウルフについてよく知ってるんだね。
 さすが冒険者をやってるだけあって魔物の知識は詳しいみたいだ。

 ……それにしても、やっぱりなんかシリアスな空気が漂っている。
 なんか話の流れ的にデリックとレイラが犠牲になってオリビアだけでも逃がすみたいな感じになってるし。
 さすがにこのまま知らん顔はできないよね。

「それなら、わたしの電撃魔法でも試してみようか?」

 軽くそう提案してみると、デリックとレイラの顔色がパッと明るくなる。

「コロネ……!」
「確かに、コロネ殿ならばもしかしたら……!」
「コロネさん、どうかお願いいたします……」

 なんかそんなに期待の眼差しを向けられると緊張するんだけど。
 特にオリビアの眼差しがすごい。
 まあ多分この電撃魔法は効くだろうし、大丈夫なはず。
 わたしはデリックとレイラの前に出て、襲い来るブラックウルフに対して右手を向ける。
 お腹に巡る魔力カロリーを感じながら、通常威力の電撃魔法を発動した。

「サンダーボルトッ!」

 わたしの右手から電撃が飛び出し、数体のブラックウルフに命中する。

「おお!」
「一撃で倒したのか!?」

 わたしのサンダーボルトを間近で見て、デリックとレイラは沸き立つ。
 だけど、オークの群れと違って広範囲に分散しているから、一発で倒したブラックウルフは少ないね。
 そういう意味では、たしかにオークより厄介かも?

「まあでも問題はない! それなら手数で勝負すればいいだけだからね! サンダーボルト連射!」

 わたしは魔力を贅沢に使って、サンダーボルトを連発する。
 一秒間に二発くらいのペースで電撃魔法を乱れ撃ちしていると、かなりブラックウルフの数が減ってきた。
 ふははは、やっぱり数の暴力は偉大だね!

「お、おいおい、マジかよ……」
「たった一人であれだけのブラックウルフを……コロネ殿は信じられないな」
「コロネさんの魔力量はどうなっているのでしょうか……?」

 わたしのサンダーボルト連射攻撃を見て、他の三人は驚いている。
 やっぱりわたしの魔法スキルと魔力量は異次元なんだね。

 だけど……。

「だが、まだ全部は仕留めきれてないぞ!」

 そうなんだよね。
 デリックの言う通り、九割くらいのブラックウルフは倒したけど、まだ十体くらい生き残りがいる。
 あの速度だともうすぐわたしたちの場所まで到達するだろう。
 やっぱり狼っていうだけあってかなり足が速いな。

 そんなことを考えていると、後ろにいたデリックとレイラがわたしの斜め前に立って剣を構える。

「デリック、十体程度なら私たちでも戦えるはずだ!」
「ああ! あの犬っころ共に俺の剣技を見せてやるぜ! 危なくなったら魔法で援護を頼む!」

 なんか二人はこのまま戦闘に入るみたいだけど、わたしはもっと安全な方法を取るつもりだ。
 別にブラックウルフを直接やっつける必要はないからね。
 要は、わたしたちの安全を確保できれば良いのだ。

 ブラックウルフがもう目の前までやって来る。
 その直後、勢いよく襲いかかってきたブラックウルフに、デリックたちが応戦しようとしたところで――

「はい、バリアーッ!」

 わたしたちの周囲にドーム状に淡い光の膜が現れる。
 飛びかかってきたブラックウルフたちはバリアに激突し、キャイン! と悲鳴を上げて落下していった。

 ふっふっふ、これぞわたしお得意のバリア魔法!
 何者をも通さぬ絶対の守りなのだ!

「な、なんだ!?」
「これは、結界だろうか……?」
「し、信じられません。私も魔法の鍛練はそれなりに積んできましたが、これほどハイレベルな魔法は見たことがありません……」

 デリックたちが驚愕の表情を浮かべている。
 わたしとしては普通の魔法みたいな感じだけど、やっぱり珍しいのかな。

「まあいっか。取り合えず、残りのブラックウルフは、と」

 周囲を見ると、さっきサンダーボルトで撃ち漏らしたブラックウルフたちがバリアに集まっていた。
 必死に噛みついてバリアを破壊しようとしているけど、無駄だよ。
 このバリアはあのギガントボアの突進攻撃すら防いだんだから、狼くらいのヤワな噛みつき攻撃なんかじゃビクともしない。

 そして、ここまで来たら後は簡単。
 このバリアは内側から外側に向けて魔法を放てる仕組みになっているので、安全圏から攻撃すれば良いだけだ。

「ってな訳で、サンダーボルトをちょちょい、と」

 わたしは指先からやや弱めのサンダーボルトを一匹ずつブラックウルフに放ち、各個撃破する。
 ブラックウルフはバリアを破壊することにご執心だったため、楽に仕留めることができた。

 念のため辺りを確認してみるけど、何も気配はない。
 遠くには無数のブラックウルフ、バリアの周囲には十体ほどのブラックウルフと大量のオークが倒れている。
 なんか死屍累々ししるいるいとした状況だけど、ひとまず危機は去ったみたいだ。

「これにてミッションコンプリート! いや~、これで一安心だよ」

 デリックたちはポカンとした顔でわたしを見ていた。

 あれ、どうしたのかな。
 命の危機を救ったっぽいから、もっと喜んでくれるかと思ったんだけど。
 まあ、お礼が欲しくて助けた訳じゃないから別にいいんだけどね。

「あ、そう言えばそもそもこのブラックウルフって、オークの肉を狙ってやって来たんだっけ? だったら、これも回収しないとまた他の魔物が来るかもしれないね」

 たしかわたしのスキルに『アイテムボックス』ってのがあったと思うから、それに入れておこうかな。
 一応、その前に鑑定でどんな素材なのか調べておこう。

 わたしはオークの死体に向かって鑑定を発動する。

 ―――――――――――――――――――
 名称:ファングオークの肉

 肉質は柔らかくて脂身が多い。焼き料理に適していて、厚切りステーキなどは絶品。主に上流家庭で好んで食される。
 ―――――――――――――――――――

 ふむふむ、なるほど。
 このオーク肉はかなり美味しいみたいだね。
 これはぜひとも後で実食して確かめさせて貰おう。
 オークと言っても要は豚だから、豚肉に近いのかもしれないね。

 ついでに、こっちのブラックウルフも調べておこう。

 ―――――――――――――――――――
 名称:ブラックウルフの肉

 肉質は少し硬いが、きちんと下処理を行えば問題なく食せる。味はさっぱりしているため、少し強めの香辛料や調味料を組み合わせて料理すると良い。全体的な栄養価が高い食材。
 ―――――――――――――――――――

 おお、ブラックウルフも食べることができるんだね。
 ブラックウルフの肉、か。

 ……なんかさっきから肉に関してしか鑑定されないんだけど、これってもしかしてわたしのスキルが『食の鑑定』だから?
 つまり、何かしらの食材に関する情報しか出てこないとか……。
 さっきブラックウルフを鑑定した時もほとんど情報が記載されてなかったし、この仮説は信憑性がある。
 だって絶対他にも素材とかあるはずだもん。
 特にこのウルフは黒い毛皮とか何かに使えそうだし!

 もしかして、わたしの鑑定って微妙に不便……?
 まあ、オーク肉もウルフ肉も両方とも興味は沸いたから、あとで食べるけどもね。

 食べるつもりなら解体する必要があるから、回収するのはわたしのアイテムボックスじゃない方がいいかな。
 ってな訳で。

「サラ、いるー?」
「ぷるん!」

 従魔であるサラを呼び掛けると、わたしの背中からするん、とい出てきた。
 さっきから姿が見えないと思っていたけど、いつの間にかわたしのジャージの裏側に潜り込んでいたようだ。
 わたしがぽっちゃりだから、きっと皆も気づかなかっただろう。

「サラ、このオークとウルフ、全部解体したいんだけど、できそうかな?」
「ぷるーん!」

 サラは、できるよ! と元気に返事をしてぴょんぴょんと跳ねた。
 わたしがバリアを解除すると、サラはオークとウルフを次々に丸呑みしていく。
 かなり数があるから全部回収できるか不安だったけど、サラは全然余裕みたいだ。
 そういえばあの巨大なギガントボアも丸呑みしてたし、容量はかなりあるみたいだね。

 近くにあったオークとウルフを呑み込み終えると、サラがぴょんぴょんと跳ねて帰ってきた。

「ぷるぅん?」
「ん? あー、あっちに倒れてるウルフは……今は一旦いいかな。後で持って帰ろうね」
「ぷるん!」

 サラは了解の意を元気よく伝えてくれる。
 この子は可愛いなぁなんて微笑んでいると、デリックとレイラが何か言いたげな表情で詰め寄ってくる。

「……コロネ」
「……コロネ殿」

 ま、まずい。
 オーク肉とウルフ肉、そしてサラの可愛さに夢中でデリックたちを忘れてた!
 もしかして放置されてたことに怒ってるのかな……?

「え、えっと、なにかな? なんか二人とも、顔が怖いよ?」

 やっぱり放置されたことにぶちギレてるの!?
 でもそんなに怒らなくてもよくない?
 ちょ~っとだけお肉とサラしか見えてなかっただけだよ。
 だからわたしは悪くないと思うんだけど……二人からはスゴいプレッシャーのようなものを感じる。

 そのプレッシャーに押されて少し後ずさると、トンッと何かにぶつかった。
 後ろを振り向いてみると、そこにはいたのはオリビア。
 表情こそ満面の笑顔だけど、何か有無を言わさないオーラを解き放っている。

「コロネさん。これは一体どういうことか、詳しくお話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
 
 あれ。
 もしかしてこれ、逃げられない?



しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

異世界で婚活したら、とんでもないのが釣れちゃった?!

家具付
恋愛
五年前に、異世界に落っこちてしまった少女スナゴ。受け入れてくれた村にすっかりなじんだ頃、近隣の村の若い人々が集まる婚活に誘われる。一度は行ってみるべきという勧めを受けて行ってみたそこで出会ったのは……? 多種多様な獣人が暮らす異世界でおくる、のんびりほのぼのな求婚ライフ!の、はずだったのに。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...