なぜ吟遊詩人は殺したか

一条りん

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第二章 仲間とともに

アルトー氏の罪

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「牢獄?」

 おうむ返しに口にしたテオに、ココは頷いて、

「ええ。殺人罪で投獄され、処刑予定と聞いています。法務大臣がいつ死刑執行の書類にサインするかは不明ですが、もう十数年も牢獄の中らしいので、そろそろかもしれません」

「殺人って、誰を殺したんだよ」

 上ずった声で訊ねたギザに、ココは初めて「それは僕にも分かりません」と答えた。

「でも、それじゃパーティに加えることはできないじゃないか」

 口を尖らせたテオに、ココはうっすらと笑みを浮かべて、

「ご存じありませんか? この国の法律では、特別なスキルを持った冒険者に限り、身元引受人がいれば保釈されるんです。それだけモンスター退治は人手不足ってことですけどね」

「それじゃ、誰かが引受人になれば……」

 ギザの言葉に、ココは「パーティに加えることは可能です」と断言した。

 しかし、リーナは形のよい眉の間に皺を寄せて、

「私は反対だわ」

「どうして?」

「いくら強いスキルを持ってると言っても、要は殺人犯なんでしょ? そんな人と冒険なんかできないわよ」

「何か事情があったのかもしれないじゃん」

 ギザが食い下がる。

 けれど、リーナは真剣な瞳で、

「その吟遊詩人は強大なスキルを持っているのかもしれない。けど、その代償に人の心を失ってるんでしょう。そんな人と旅ができる?」

 リーナの言葉に、テオは唸らざるを得なかった。

 アルトー・ラトゥールの持つスキルは確かに魅力的だ。けれど、人殺しであることに変わりはない。
 パーティを組むにあたっては、互いの信頼関係が何よりも大事だ。殺人者をパーティに加えれば、みな疑心暗鬼に駆られて気の休まる暇もないのではないか。

「テオ、あなたのパーティよ。あなたが決めて」

 リーナに促され、テオは絞り出すような声で、

「他の案を検討しよう」

 と告げた。
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