なぜ吟遊詩人は殺したか

一条りん

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第一章 冒険の始まり

現実は甘くない 2

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 武器屋を後にしたテオはめげずに防具屋やレストランも回ったが、やはり買い手はつかなかった。
 唯一、同じ孤児院出身で宿屋をやっている友達が同情し、

「従業員の賄いに使うよ」

 と言って肉を買い上げてくれたが、骨と毛皮には使いどころがないという。

 肉だけでは六ギルにしかならず、それも戦いで傷付いた身体を癒すために宿に泊まったらなくなってしまった。
 これでは借金返済はおろか、冒険を続けることも儘ならない。

 しかし、テオはあまり悲観しなかった。

「ま、初めのうちはこんなもんだろ。次はできるだけ毛皮を傷めずに倒せばいいや」

 宿屋の友達がくれた「なべのふた」を盾代わりに装備して、テオは再び冒険の旅へ出た――というより、借金返済のために野外フィールドへ出、現れたモンスターを片っ端から倒していった。

 スライムは金にならないから戦闘を避ける。

 ヘルドッグを倒すときは一撃のもとに首を斬り落とす。

 ゴブリンの死骸は金にならないが、他の冒険者から奪い取った武器や防具や道具、運が良ければギルを所有していることもあるため、見かけたら積極的に狩る。

 デスラビットは肉が比較的高値で売れる。
 但し、一体から獲れる肉の量が少ないため、できるだけ多く狩ってまとめて売ったほうが喜ばれる……。

 十日間に渡ってひたすら狩りをし、売買の経験を積むことで、テオはこうしたコツを少しずつ呑み込んでいった。

 さびた剣は何度目かの戦闘であえなく折れてしまったが、幸いにもその直前に仕留めたゴブリンが「青銅の剣」と「手榴弾」を落としていったため、新しく買い替える必要もなかった。

 文字通り汗水垂らし、命を削って戦い抜き、そうしてテオが稼いだ額は――
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