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6、フィオナの家族
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「ーーーうーーーん。」
ベッドに寝転がったまま唸ってしまった。
「………結局、分からなかった。」
ーーそう、この世界の成り立ちが描かれた本とやらを読んでも、この世界が『何の世界』か分からなかった。
「分かると思ったんだけどなぁ。この世界の成り立ちとか読めば……。」
また、行き詰まってしまって、これからどうするべきかと悩んでしまう。
ーー急に部屋の外が少し騒がしくなる。
「?」何事かと思っていると、部屋のドアをいきなり開けて誰かが入ってくる。
「ーーーフィオナ!!」
「―――フィオナ!!」
両親らしき男性と女性、兄妹らしき若い男性と女性が慌てた様子で入ってくる。
「大丈夫か?」と、父親らしき男性。
「平気ですか?」と、母親らしき女性。
「痛いところはないかい?」と、兄らしき男の子。
「気持ち悪くなってない?」と、姉らしき女の子。
口々に心配されて、本気で心配しているのが伝わってくる。
「(……どうやら、家族にいじめられたり、疎まれたりはしていないようね。)」
良かったとほっとした私は、「平気だよ」と笑顔を返した。
私の笑顔を見た家族は、ホッとしたように笑いあう。
ーーその家族の暖かい雰囲気を見て、
「(これが私の家族なのか。)」
と不思議に思ってしまう。何よりこの出来上がった空気の中に入れるのかという不安も……。
ーー頭の中に前世の家族らしき姿が思い浮かぶ。
背中を向けた父親らしき男性、
顔に手を当ててうんざりしているような様子の母親らしき女性、
大きな荷物を持って出ていく兄らしき男性、
泣き崩れている姉らしき女性、
不安そうに見上げる小さな男の子と女の子、
でも、その誰の表情も見えずよく分からなかい。
ーーその瞬間、ズキッと胸が痛むと、その記憶を詳しく見ることも見続けることも出来なくなり、前世の記憶自体封じ込めるしかなかったのだった。
ーー黙り込んだ私のことを心配そうに見下ろしていた家族。
誤魔化そうと思っていると、タイミングが良かったのか悪かったのか、私のお腹がぐーーっと鳴る。
皆、思わず吹き出すと、
「そうだな。まずはご飯だな。」
「そうですね。」
という両親の言葉に侍女たちが動き出す。
ーー身支度を済ませると、食堂のテーブルに座って家族で和やかで暖かい雰囲気のまま食事が始まる。
食事のメニューも家族それぞれに合わせたもので、フィオナの分もちゃんと子供のことを考えたものだった。
「(……あ。美味しい。)」
普通に食べていると、そういえば好き嫌いはどうだったかな……と記憶を探ると、普通の食事を始めてから、特に問題なく食事していたことを思い出す。
ーーどうやら、初めての食事からきちんと気を遣われていたみたいね。いい家族と使用人に恵まれているわね。
その記憶を取り戻してから、心置きなく食事を楽しんだのだった。
ーーデザートも美味しく頂き、食後のティータイムも家族と楽しい時間を過ごす中で何とか情報を聞き出した。
父親の名前は、スチュアート•ローレルで伯爵、
母親の名前は、ハリエット・ローレルで伯爵夫人、
兄の名前は、ジョシュ•ローレル、8歳、
姉の名前は、サマンサ•ローレル、7歳。
そして、フィオナは4歳。
家族の名前を聞いて、話をしても、この世界が何の世界か分からなかった。
ーー結局、何の手掛かりも得られないまま、その日は眠りにつくことになった。
ーーベッドに入って、天井を見上げる。
「……はぁっ。」
フィオナは物語の登場人物ではないのか、フィオナの家族も関係ないのか、まだ本編が始まってないから分からないのか……。
「うーーーーん。」
唸りながら寝返りをうつと、窓の外に夜空が見える。
ーー窓に触れながら夜空を見上げた。満天の星を見ながら、
「……ここがこれから私が生きていく世界……。」
そう呟きながらしばらく夜空の星を見上げていた。
ーーそう、自分がこの右も左も分からない世界で、このファンタジーの世界で生きていけるのか、うまくやっていけるのか。
頭の中に形にならない前世の記憶が思い浮かぶことなく記憶の深い深い奥底に沈んでいく。
ーーこうして、私はこのファンタジーの世界で普通にこの世界に生きるものとして、普通に生きていくことになったのだった。
ベッドに寝転がったまま唸ってしまった。
「………結局、分からなかった。」
ーーそう、この世界の成り立ちが描かれた本とやらを読んでも、この世界が『何の世界』か分からなかった。
「分かると思ったんだけどなぁ。この世界の成り立ちとか読めば……。」
また、行き詰まってしまって、これからどうするべきかと悩んでしまう。
ーー急に部屋の外が少し騒がしくなる。
「?」何事かと思っていると、部屋のドアをいきなり開けて誰かが入ってくる。
「ーーーフィオナ!!」
「―――フィオナ!!」
両親らしき男性と女性、兄妹らしき若い男性と女性が慌てた様子で入ってくる。
「大丈夫か?」と、父親らしき男性。
「平気ですか?」と、母親らしき女性。
「痛いところはないかい?」と、兄らしき男の子。
「気持ち悪くなってない?」と、姉らしき女の子。
口々に心配されて、本気で心配しているのが伝わってくる。
「(……どうやら、家族にいじめられたり、疎まれたりはしていないようね。)」
良かったとほっとした私は、「平気だよ」と笑顔を返した。
私の笑顔を見た家族は、ホッとしたように笑いあう。
ーーその家族の暖かい雰囲気を見て、
「(これが私の家族なのか。)」
と不思議に思ってしまう。何よりこの出来上がった空気の中に入れるのかという不安も……。
ーー頭の中に前世の家族らしき姿が思い浮かぶ。
背中を向けた父親らしき男性、
顔に手を当ててうんざりしているような様子の母親らしき女性、
大きな荷物を持って出ていく兄らしき男性、
泣き崩れている姉らしき女性、
不安そうに見上げる小さな男の子と女の子、
でも、その誰の表情も見えずよく分からなかい。
ーーその瞬間、ズキッと胸が痛むと、その記憶を詳しく見ることも見続けることも出来なくなり、前世の記憶自体封じ込めるしかなかったのだった。
ーー黙り込んだ私のことを心配そうに見下ろしていた家族。
誤魔化そうと思っていると、タイミングが良かったのか悪かったのか、私のお腹がぐーーっと鳴る。
皆、思わず吹き出すと、
「そうだな。まずはご飯だな。」
「そうですね。」
という両親の言葉に侍女たちが動き出す。
ーー身支度を済ませると、食堂のテーブルに座って家族で和やかで暖かい雰囲気のまま食事が始まる。
食事のメニューも家族それぞれに合わせたもので、フィオナの分もちゃんと子供のことを考えたものだった。
「(……あ。美味しい。)」
普通に食べていると、そういえば好き嫌いはどうだったかな……と記憶を探ると、普通の食事を始めてから、特に問題なく食事していたことを思い出す。
ーーどうやら、初めての食事からきちんと気を遣われていたみたいね。いい家族と使用人に恵まれているわね。
その記憶を取り戻してから、心置きなく食事を楽しんだのだった。
ーーデザートも美味しく頂き、食後のティータイムも家族と楽しい時間を過ごす中で何とか情報を聞き出した。
父親の名前は、スチュアート•ローレルで伯爵、
母親の名前は、ハリエット・ローレルで伯爵夫人、
兄の名前は、ジョシュ•ローレル、8歳、
姉の名前は、サマンサ•ローレル、7歳。
そして、フィオナは4歳。
家族の名前を聞いて、話をしても、この世界が何の世界か分からなかった。
ーー結局、何の手掛かりも得られないまま、その日は眠りにつくことになった。
ーーベッドに入って、天井を見上げる。
「……はぁっ。」
フィオナは物語の登場人物ではないのか、フィオナの家族も関係ないのか、まだ本編が始まってないから分からないのか……。
「うーーーーん。」
唸りながら寝返りをうつと、窓の外に夜空が見える。
ーー窓に触れながら夜空を見上げた。満天の星を見ながら、
「……ここがこれから私が生きていく世界……。」
そう呟きながらしばらく夜空の星を見上げていた。
ーーそう、自分がこの右も左も分からない世界で、このファンタジーの世界で生きていけるのか、うまくやっていけるのか。
頭の中に形にならない前世の記憶が思い浮かぶことなく記憶の深い深い奥底に沈んでいく。
ーーこうして、私はこのファンタジーの世界で普通にこの世界に生きるものとして、普通に生きていくことになったのだった。
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