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15、家族からの心配
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「セレス、大丈夫なの?」
紅茶を飲もうとしていたセレスは顔を上げて、声をかけてきた本人を見つめる。
そう、今日は母にお茶に誘われて一緒に飲んでいたところ。最初は母だけだったが、途中から父も参加して、ちょうど今の質問されたところだった。
母の言葉の意味が分からず、
「大丈夫か……とは?」
そう聞き返すと、両親は意味深な表情でお互いの顔を見合わす。
目で会話するように動きが激しい目で会話するかのように動かしていた両親。
「………コホンッ。あーーーいや、な……」
と一つ咳払いをして話し始めようとするものの、どう話を持ち出したらいいのかと思いながら困ったように頭をかいていた父。
なかなか話し出そうとしない。
「……はあ。もう、情けない」
そんな父の様子に呆れた母は飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置く。
「単刀直入に聞きます。セレス、アルフレッド·レイフィル·グレイヴィルア公爵様とはどういう関係ですか?」
ーー確かに直球だわ。
さすがに両親の耳に入るくらいまで噂が広がってきてるようね。
狙いどおりだけど……。
チラリと両親の表情を様子見る。
両親の表情は真剣だった。目もまっすぐとこちらを見ていて、どれだけ本気で心配しているのかがよく分かる。
ーー内心、嬉しくなってしまう。
「(そんなにも私のことを大切に思っていてくれるのね)」
両親の本物の愛情をひしひしと感じて心が温かいもので満たされていく。
ーーでも、ごめんなさい。
どこに誰の目があるかもしれないので、本当のことは話せないの。
だから……だから、せめて不幸になったりしないことをお約束します。
私は心の中で、そう両親に誓った。
それから、表情は変えないで心の中で息を整えた。
「……《どういう関係か》とはどういう意味ですか?」
あくまで私はその噂を知らない、知らなかったという形をとる。仮に「知っているはずだ」と問い詰められても、やましいことはないから噂を気にしていなかったという形もとる。
ーーそう、あくまで《公爵様との関係》は悪く言われるような下世話な関係ではなく、《純粋なもの》として貫く。
……まあ、正直、本当に純粋なものだと思う。
私は小さく芽生え続けているこの想いをもう消せないところまできていると実感している。
そして、遠慮もしなくていいのも分かってる。
「……噂があるのです」
「……噂ですか?」
あくまで母から話を進めるのを待つ間、正直、どの噂なのかと不安になる。
「それを踏まえて、『あなたはアルフレッド·レイフィル·グレイヴィルア公爵様とどういう関係になりたいのですか?』」
そう言った母の目は真剣だった。真剣で真摯な思いを感じる。
本当に心から私のことを……セレスのことを心配しているのが伝わってくる。
「…………ッ」
胸がきゅうっとなるのを必死で隠す。
ーーだからこそ、私はしっかりと自分の思いを伝えた方がいいのだと言うのがわかった。
「……正直のところ、自分がどこまでどうなりたいか……はまだよくわかっていないかもしれません」
ーーこれは、言わば本当のことだ。思うところはあるけど、当初の目的では、『アルフレッドを味方に付ける』を目指していた。
そこに感情が加わったことで感情が変化しているのも事実。
アルフレッドの自分への様子を見てからは、かなり期待してしまっているのも事実。
ーーそれでも、
「……それでも、ただ良い関係を築いていけたらいいと願っています」
アルフレッドの笑顔を思い出して、思わず顔が笑ってしまう。
そんなセレスの様子をじっと見つめていた両親。
「……わかりました。あなたの好きになさい」
と許可を出した母は、
「いいえ! むしろ彼を手に入れなさい!」
とむしろGOサインを出してきた
「ええっ!?」
さすがに驚いた。
まさか母から『アルフレッドを手に入れろ』なんてことを言われれるとは思っていなかったからだ。
「……お、お父様も同じ意見ですか?」
母個人の意見なのか両親の意見なのか気になる。
「う、うん。そうだな。彼はいい人物だ」
と少し曖昧な感じでそわそわしていた父。
「まったく! 気にしないで、この人はセレスがお嫁にいくのが嫌なだけよ」
という母の指摘に「そんなことは」と父は更に動揺していた。
ーーまあ、娘を持つ父親としての態度はこんな感じなのかな?
とにかく、私の答えとしては、
「お父様ったら、私はそんなにすぐにお嫁になんていったりしませんよ」
と笑って見せる。私の言葉に安心した様子で、
「勿論! 分かってるさ」
と明らかに嬉しそうだ。
そんな父の分かりやすい態度に母も呆れたように笑ってる。
「……コホンッ。ま、まあ、セレスよ。私はお前が心から幸せになってくれるなら、相手は誰でもいいとも思ってる。セレスの信じるように進みなさい」
両親のセレスを信じるその姿に泣きそうになるのを必死で堪えながら、
「……はい。絶対に幸せになります」
と決意を口にした。
ーーそのあとはとりとめのない会話で終始和やかにティータイムを過ごしたのだった。
紅茶を飲もうとしていたセレスは顔を上げて、声をかけてきた本人を見つめる。
そう、今日は母にお茶に誘われて一緒に飲んでいたところ。最初は母だけだったが、途中から父も参加して、ちょうど今の質問されたところだった。
母の言葉の意味が分からず、
「大丈夫か……とは?」
そう聞き返すと、両親は意味深な表情でお互いの顔を見合わす。
目で会話するように動きが激しい目で会話するかのように動かしていた両親。
「………コホンッ。あーーーいや、な……」
と一つ咳払いをして話し始めようとするものの、どう話を持ち出したらいいのかと思いながら困ったように頭をかいていた父。
なかなか話し出そうとしない。
「……はあ。もう、情けない」
そんな父の様子に呆れた母は飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置く。
「単刀直入に聞きます。セレス、アルフレッド·レイフィル·グレイヴィルア公爵様とはどういう関係ですか?」
ーー確かに直球だわ。
さすがに両親の耳に入るくらいまで噂が広がってきてるようね。
狙いどおりだけど……。
チラリと両親の表情を様子見る。
両親の表情は真剣だった。目もまっすぐとこちらを見ていて、どれだけ本気で心配しているのかがよく分かる。
ーー内心、嬉しくなってしまう。
「(そんなにも私のことを大切に思っていてくれるのね)」
両親の本物の愛情をひしひしと感じて心が温かいもので満たされていく。
ーーでも、ごめんなさい。
どこに誰の目があるかもしれないので、本当のことは話せないの。
だから……だから、せめて不幸になったりしないことをお約束します。
私は心の中で、そう両親に誓った。
それから、表情は変えないで心の中で息を整えた。
「……《どういう関係か》とはどういう意味ですか?」
あくまで私はその噂を知らない、知らなかったという形をとる。仮に「知っているはずだ」と問い詰められても、やましいことはないから噂を気にしていなかったという形もとる。
ーーそう、あくまで《公爵様との関係》は悪く言われるような下世話な関係ではなく、《純粋なもの》として貫く。
……まあ、正直、本当に純粋なものだと思う。
私は小さく芽生え続けているこの想いをもう消せないところまできていると実感している。
そして、遠慮もしなくていいのも分かってる。
「……噂があるのです」
「……噂ですか?」
あくまで母から話を進めるのを待つ間、正直、どの噂なのかと不安になる。
「それを踏まえて、『あなたはアルフレッド·レイフィル·グレイヴィルア公爵様とどういう関係になりたいのですか?』」
そう言った母の目は真剣だった。真剣で真摯な思いを感じる。
本当に心から私のことを……セレスのことを心配しているのが伝わってくる。
「…………ッ」
胸がきゅうっとなるのを必死で隠す。
ーーだからこそ、私はしっかりと自分の思いを伝えた方がいいのだと言うのがわかった。
「……正直のところ、自分がどこまでどうなりたいか……はまだよくわかっていないかもしれません」
ーーこれは、言わば本当のことだ。思うところはあるけど、当初の目的では、『アルフレッドを味方に付ける』を目指していた。
そこに感情が加わったことで感情が変化しているのも事実。
アルフレッドの自分への様子を見てからは、かなり期待してしまっているのも事実。
ーーそれでも、
「……それでも、ただ良い関係を築いていけたらいいと願っています」
アルフレッドの笑顔を思い出して、思わず顔が笑ってしまう。
そんなセレスの様子をじっと見つめていた両親。
「……わかりました。あなたの好きになさい」
と許可を出した母は、
「いいえ! むしろ彼を手に入れなさい!」
とむしろGOサインを出してきた
「ええっ!?」
さすがに驚いた。
まさか母から『アルフレッドを手に入れろ』なんてことを言われれるとは思っていなかったからだ。
「……お、お父様も同じ意見ですか?」
母個人の意見なのか両親の意見なのか気になる。
「う、うん。そうだな。彼はいい人物だ」
と少し曖昧な感じでそわそわしていた父。
「まったく! 気にしないで、この人はセレスがお嫁にいくのが嫌なだけよ」
という母の指摘に「そんなことは」と父は更に動揺していた。
ーーまあ、娘を持つ父親としての態度はこんな感じなのかな?
とにかく、私の答えとしては、
「お父様ったら、私はそんなにすぐにお嫁になんていったりしませんよ」
と笑って見せる。私の言葉に安心した様子で、
「勿論! 分かってるさ」
と明らかに嬉しそうだ。
そんな父の分かりやすい態度に母も呆れたように笑ってる。
「……コホンッ。ま、まあ、セレスよ。私はお前が心から幸せになってくれるなら、相手は誰でもいいとも思ってる。セレスの信じるように進みなさい」
両親のセレスを信じるその姿に泣きそうになるのを必死で堪えながら、
「……はい。絶対に幸せになります」
と決意を口にした。
ーーそのあとはとりとめのない会話で終始和やかにティータイムを過ごしたのだった。
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