転生者、月と魔法とプロポーズ

Rio

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第一章 魔法士学校編

第三話 神様、お金をつくる

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「彼方さーん、早く学校に行って下さいよぉ! 魔法士の資格を取ってくれないと困るんですよぉ」

「嫌です。死ぬかもしれないのでしょう? だったらこの部屋で一生ニートでいいです」

 大体なんで俺なんだよ、他にも適任はいるだろ。

「大丈夫ですって! その為に私もサポートしますし、だから安心して下さい!」

「それに彼方さんには彼女がいるんでしょう? いいんですかぁ、私とこの部屋で一生二人きり、私は大歓迎ですけどぉ、彼女さんが可哀想だなぁー」

 突然キスをしてきた人にそんな事を言われるとは。しかし、確かにこの神様と一緒にいると俺は絶対に彼女に対して罪を重ねてしまうだろう。それはまずい。

「……わかりました。学校行きます。ですが入学費用とか色々お金がかかるんじゃないですか?」

「心配ありません! お金のことなら任せて下さい!」
 そう言うとルナさんはおもむろに右手を天に掲げた。

 数秒後、チリン、チリーンと何かが落ちてきては地面にぶつかり音を立てて、それが少しの間続いた。辺り一面を見渡すと、キラキラした丸いものが大量に散らばっていた。

「何ですかこれ?」

「何ってこの世界のお金ですよ! この一番大きくて金色のものがーー」

「イヤイヤイヤイヤ、これ偽造でしょ! だめですよお金なんてつくったら犯罪ですよ」

 この神様、薄々気づいてはいたが馬鹿かもしれない。まさかお金を創り出すとは。しかも犯罪を平気でしでかしておきながら平然とした顔をしているところが狂気じみていてすごく怖い。

「よく分かりましたね! そう、お金を創りました! これは神様である私にしか出来ない神技じんぎというものです」

「神技はありとあらゆるものを創りだすことができます! すごいでしょう!」

「すごいでしょう、じゃないですよ! このお金を使って入学したらお縄じゃないですか!」

 入学早々に偽造通貨の使用で監獄行きとか絶対嫌だし、確かお金を無闇に増やすと経済が混乱するって学校で習ったからな。ルナさんに乗せられて使ってしまったら取り返しのつかないことになってしまう。

「大丈夫ですよ! 彼方さんの入学費用分のお金を偽造したくらいじゃ経済は混乱しませんよ」

 いや、そうかもしれないが犯罪であることに変わりはない。バレたら捕まってしまうし、この世界なら死刑なんてこともあるかもしれない。

「そんなに心配しなくてもこの世界のお金と同じ様に創ったから大丈夫ですよ! バレる事はないです! 信じて下さい、ねっ!?」

「本当でしょうね? バレたら製造元がルナさんだって事を証言しますからね」

「もー分かりましたよぉ、とりあえずこの一番大きい金色のやつを持って行って下さい。今日はとりあえず入学費用だけを払いに行って、お釣りが出ると思うので帰りにお店でまんじゅうを買ってきて下さい!」

 どさくさに紛れてまんじゅうを買ってきて下さいって言われたんだが、この世界にもまんじゅうはあるのか。そういえば目が覚めてからまだ何も口にしていなかったな。まんじゅうって言われたせいか急にお腹が空いてきた気がする。仕方ない、買ってきてやるか。

「分かりました、まんじゅうですね。あともしかして俺一人で行くんですか?」

 すると、神様はキョトンとした表情で、
「他に誰が行くんですかぁ? 彼方さん大人なんですから一人で行けますよぉ! それとも私が一緒に行ってあげましょうかぁ? もー甘えん坊さんでちゅねー」

「いえ結構です」

 思わずイラッとして即答してしまった。正直道が分からないから案内人としてついてきて欲しかったが、この神様と二人で行くよりはパシリにされてでも一人で行く方がマシな気がした。

 この部屋にはドアがある。多分そこから外に出るのだろう。だが、未知の世界だしすごく怖い、外に出たくない、帰りたい。

 だが行かなければならない。何故ならこの部屋にいてもルナさんと二人きりという地獄……

「あのー聞こえてるんですけど! 何ですか地獄って! こんなに可愛い神様と二人きりなんてむしろ天国じゃないですか!」

 無視無視。

 よし、覚悟は出来た。道が分からない未知の世界だが……あ、待って、道は分からない未知の世界……プフッ。

「二十点です彼方さん。私本当に心配になってきましたよ。学校の勉強だけはしっかりして下さいね」

 嫌味なルナさんを横目にドアを開け、まだ見たこともない世界へ足を踏み入れた。学校へ行くだけだが不思議と今まで住んでいた世界と違い、少しだけ気持ちが昂っているのを感じた。

「では行ってきます」

「はーい、行ってらっしゃーい!」

 そのセリフを返してきてくれることを期待していたが、実際に耳で聞くと可愛い声で、結構な破壊力があり、思わずドキッとしてしまった。一生の不覚である。


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