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エリアス・クレーズ
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しおりを挟むガキーン!!
「っく、」
………殿、下?
激しい金属のぶつかる音がして、見開くと、
目の前の光景に驚くしかなかった。
「うわっと…殿下、魔法解くなら解くって先に言って下さいよ」
ついさっきまでエリアナの言いなりだった殿下が、水魔法で造った剣で
お兄様の剣を弾き飛ばし、先生に掛けていた拘束魔法を解いていた。
一体、どういう事だろうか?殿下は術に掛かっていたはずでは……?
エリアナは信じられないと言った顔で呆然としている。
殿下は助けてくれた……んだよね?
お兄様は………
「ぐっ、うぅ……」
お兄様は、苦しそうに頭を抱えながらフラフラしていた。
……お兄様っ!!
「…な…なんで、何でよ!?エリアス様!エリアス様が好きなのはあたしでしょう!?魔法が効いてた筈なのに…なんで……」
「…残念だが、もう君の魔法に掛かることはない。」
「そ、んな!?」
殿下に近付いてすがろうとするエリアナを、殿下は水の膜を魔法で展開し拒絶した。
「グランツァー先生、キリク殿を。」
「あ、ああ。」
先生にお兄様を任せ、殿下は私の側に来ると、そのまま跪き、私の手を握った。
「ユリーナ嬢…このままでは君は死んでしまう。だから、早く思い出すんだ」
「……?」
思い出す?
「君の本当の力は、誰かに奪われるようなものじゃない。」
本当の力……?
「本当の、本来の力は、君にしか使えない物。」
私にしか使えない……
「ユリーナ嬢、君も薄々気付いている筈だ。」
「…………」
「その心のまま、願えばきっとうまく行く。」
真実の聖女は、君しかいないのだから。
そう言う殿下の表情はとても優しくて……久しぶりに本当の殿下を見た気がした。
エリアナに魔力を奪われている筈なのに、聖女の魔法を使えた事。
最初は確かに使えなくて、だから本当に奪われたんだと思った。
だけど、そうじゃない。そうじゃなかったのだ。
何故なら、聖女の魔法は………
ゆっくりと、瞼を閉じる。
心のまま、深層心理の更に奥まで意識を向ける。
私の願いは____
『………やっと、気付いてくれたんだね。』
魂と魂の繋がり。私達は精神の奥底で、微笑みあった。
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