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「フェリス嬢、次はこの書類をお願いできるかな?」
「わかりました。」
今、私は一日の授業が終わった放課後の時間、生徒会室で書類整理をしている。
一枚、一枚、終わらせていくたびに、生徒会長であるクレーズ殿下から追加の書類を次々渡されて、
後ろからキツ~イ視線をバシバシ感じながら私は笑顔を引きつりながらもそれを受け取っていく。
おかしな表情をしているはずなそんな私を見ても殿下は気にしていないようだが。
まあ、なぜそんなわざわざ殿下の書類を私が手伝っているのかというと、マクドウェル先生に連れられてやってきた生徒会への初日にさかのぼる。
「フェリス嬢は殿下と同列一位だったんだ、だから、彼女には副会長をしてもらおうと思うんだけどどうかな?」
「えっ!?」
いきなりとんでも発言をした先生の言葉に私は思いっきり首を横に振る。
いやいや、なんでわざわざそんな目立つようなポジションに付かなければならないのか。ただでさえ生徒会入りで目立ってしまうのに、
これ以上目立つのは勘弁願いたい。そう思っていたら思わぬ人物から援護射撃があった。
「そうですね、私も彼女が副会長で良いと思います。フェリス公爵家のご令嬢はとても優秀だと伺っておりますし」
そう言って私に向かってにこりと微笑んだ彼女は、悪役令嬢役であろうウェルミナ・アンカー公爵令嬢。そう、ヒロインの私と同爵位の令嬢だ。
っていうか、「ねえ?」と言って私に向けた笑み、明らかに敵意感じるんですが…
これ、絶対賛成の顔じゃないな。もしかしたら彼女と友達になれるかも…なんて考えは甘かったのか。
とりあえず辞退することに間違いない。よし、そんでアンカー嬢に副会長を推そう。
「マクドウェル先生、私はやはり辞退させていただきたいです。私には務まりそうにありません。それに、入試の成績だけで決められるのもどうかと思うんです。
そのかわりと言うわけではありませんが、アンカー嬢に副会長をしてもらうのはどうでしょう。」
「まあ、確かに入試の成績だけで役割を決めなければならないというわけでもないし、それも一理ある。ではとりあえず、先に入って生徒会の仕事に慣れているアンカー嬢に頼もうかな。クレーズ殿下はどう思うんだい?」
「私は別に仕事さえきちんとしてもらえれば誰でも構いませんよ」
「そうかい?アンカー嬢もそれでいいかな?」
「皆さんがそれで良いとおっしゃるなら」
「ではそうしようか。そうするとフェリス嬢はどうするかだけど…そうだな、入ったばかりだし、慣れるまでは殿下の補佐というのはどうかな?」
「!?」
「そうですね、他の役職は決まってしまっていますし。それがいいかと思います。」
「いや、…あの、」
「大丈夫だよ、殿下は優しいから、きちんと教えてくれるよ。だからすぐに慣れる。」
「いえ、そうではなく」
「殿下に教えてもらえれば問題ないよ。だから頑張ってね、フェリス嬢。」
じゃあ、私は用事で出るから後は頼んだよ。と、反論する間もなく先生は行ってしまった。
「……………」
副会長にならずに済んだのはよかったけど、殿下の補佐って。
最初に賛成したのはこの国の宰相の長男ケイン・バーストで、続けるように賛成してきたのは騎士団長の次男フレイ・コラルド。もちろん二人とも攻略対象者。
そしてその後を畳みかけるように先生が決定を告げた。
あれ?補佐役の拒否権なし?
最初に副会長を拒否したのは私だし、もしかして面倒くさがられたのだろうか。
もしそうなら私の印象最悪ではないか!
とりあえず、ここはおとなしく引き受けて、真面目に取り組もう。
「…ええと、では皆さん、よろしくお願いします」
少しぎこちなくなってしまいながらも挨拶をすると、皆それぞれよろしくと返してくれた。
正直、殿下の補佐役だなんて、殿下の傍にずっといるって事で、ある意味副会長よりやばいのではと思って辞退したかったのに、
これではもう無理じゃないか。あぁ、案の定、アンカー嬢の視線が痛い。
いや、婚約者のいる方に近づいたりしませんって。婚約者がいなくても近づくつもりないけど。って、あれ?そういえば殿下に婚約者がいるって話、聞いたことがないな。
確かゲームではアンカー嬢と婚約者になっていたはず。それとも私が知らないだけ?
う~んと思いながらも殿下から仕事を教わり、その日はそれで終わった。
そして今日も黙々と殿下の補佐業をこなしていく。
と、冒頭の話に戻る。
ただ作業をこなしていく分には問題ないが、たまにアンカー嬢とのやり取りで受ける彼女からの敵意が痛い。
私は元々勘がいい方ではない。
ただ、ああ、あの人は自分に何か良くない感情があるんだなとわかっている相手なら意識して接するから逆にその相手には敏感になる。
だからなのかもしれない。彼女の私への感情が過剰な位にきつく感じるのは…
いい加減、アンカー嬢とは話をした方がいいかもしれない。でないと私がキツイ。
そう思ってこのあとの生徒会業務終了後、彼女と話をしようと決心したのだった。
「わかりました。」
今、私は一日の授業が終わった放課後の時間、生徒会室で書類整理をしている。
一枚、一枚、終わらせていくたびに、生徒会長であるクレーズ殿下から追加の書類を次々渡されて、
後ろからキツ~イ視線をバシバシ感じながら私は笑顔を引きつりながらもそれを受け取っていく。
おかしな表情をしているはずなそんな私を見ても殿下は気にしていないようだが。
まあ、なぜそんなわざわざ殿下の書類を私が手伝っているのかというと、マクドウェル先生に連れられてやってきた生徒会への初日にさかのぼる。
「フェリス嬢は殿下と同列一位だったんだ、だから、彼女には副会長をしてもらおうと思うんだけどどうかな?」
「えっ!?」
いきなりとんでも発言をした先生の言葉に私は思いっきり首を横に振る。
いやいや、なんでわざわざそんな目立つようなポジションに付かなければならないのか。ただでさえ生徒会入りで目立ってしまうのに、
これ以上目立つのは勘弁願いたい。そう思っていたら思わぬ人物から援護射撃があった。
「そうですね、私も彼女が副会長で良いと思います。フェリス公爵家のご令嬢はとても優秀だと伺っておりますし」
そう言って私に向かってにこりと微笑んだ彼女は、悪役令嬢役であろうウェルミナ・アンカー公爵令嬢。そう、ヒロインの私と同爵位の令嬢だ。
っていうか、「ねえ?」と言って私に向けた笑み、明らかに敵意感じるんですが…
これ、絶対賛成の顔じゃないな。もしかしたら彼女と友達になれるかも…なんて考えは甘かったのか。
とりあえず辞退することに間違いない。よし、そんでアンカー嬢に副会長を推そう。
「マクドウェル先生、私はやはり辞退させていただきたいです。私には務まりそうにありません。それに、入試の成績だけで決められるのもどうかと思うんです。
そのかわりと言うわけではありませんが、アンカー嬢に副会長をしてもらうのはどうでしょう。」
「まあ、確かに入試の成績だけで役割を決めなければならないというわけでもないし、それも一理ある。ではとりあえず、先に入って生徒会の仕事に慣れているアンカー嬢に頼もうかな。クレーズ殿下はどう思うんだい?」
「私は別に仕事さえきちんとしてもらえれば誰でも構いませんよ」
「そうかい?アンカー嬢もそれでいいかな?」
「皆さんがそれで良いとおっしゃるなら」
「ではそうしようか。そうするとフェリス嬢はどうするかだけど…そうだな、入ったばかりだし、慣れるまでは殿下の補佐というのはどうかな?」
「!?」
「そうですね、他の役職は決まってしまっていますし。それがいいかと思います。」
「いや、…あの、」
「大丈夫だよ、殿下は優しいから、きちんと教えてくれるよ。だからすぐに慣れる。」
「いえ、そうではなく」
「殿下に教えてもらえれば問題ないよ。だから頑張ってね、フェリス嬢。」
じゃあ、私は用事で出るから後は頼んだよ。と、反論する間もなく先生は行ってしまった。
「……………」
副会長にならずに済んだのはよかったけど、殿下の補佐って。
最初に賛成したのはこの国の宰相の長男ケイン・バーストで、続けるように賛成してきたのは騎士団長の次男フレイ・コラルド。もちろん二人とも攻略対象者。
そしてその後を畳みかけるように先生が決定を告げた。
あれ?補佐役の拒否権なし?
最初に副会長を拒否したのは私だし、もしかして面倒くさがられたのだろうか。
もしそうなら私の印象最悪ではないか!
とりあえず、ここはおとなしく引き受けて、真面目に取り組もう。
「…ええと、では皆さん、よろしくお願いします」
少しぎこちなくなってしまいながらも挨拶をすると、皆それぞれよろしくと返してくれた。
正直、殿下の補佐役だなんて、殿下の傍にずっといるって事で、ある意味副会長よりやばいのではと思って辞退したかったのに、
これではもう無理じゃないか。あぁ、案の定、アンカー嬢の視線が痛い。
いや、婚約者のいる方に近づいたりしませんって。婚約者がいなくても近づくつもりないけど。って、あれ?そういえば殿下に婚約者がいるって話、聞いたことがないな。
確かゲームではアンカー嬢と婚約者になっていたはず。それとも私が知らないだけ?
う~んと思いながらも殿下から仕事を教わり、その日はそれで終わった。
そして今日も黙々と殿下の補佐業をこなしていく。
と、冒頭の話に戻る。
ただ作業をこなしていく分には問題ないが、たまにアンカー嬢とのやり取りで受ける彼女からの敵意が痛い。
私は元々勘がいい方ではない。
ただ、ああ、あの人は自分に何か良くない感情があるんだなとわかっている相手なら意識して接するから逆にその相手には敏感になる。
だからなのかもしれない。彼女の私への感情が過剰な位にきつく感じるのは…
いい加減、アンカー嬢とは話をした方がいいかもしれない。でないと私がキツイ。
そう思ってこのあとの生徒会業務終了後、彼女と話をしようと決心したのだった。
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