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4 そしてまたルイスは甘く微笑む。

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「あの3人とは、仲が良いんだな。」



あのあと、勇者としての鍛練を始めることになった慧たち3人と別れて、

ルイスに精霊の所へ案内してもらうことになった飛鳥。


直ぐにでも出発しようということになり、今はその案内の道中で、

当たり障りのない話をしていたら、ルイスから先ほどの王宮でのやり取りを思い出しての質問を受けたのだった。


「ケイ…と言ったか、あいつは特にお前に固執しているようだな?”強くなれ”と言ったときのあいつの顔、ただ悔しいだけという表情ではなかったしな」


「……」


確かに、慧から告白されて、慧の気持ちは知っている。

先ほど直ぐに城を出る時も、すごく心配された。

だが、だからといってそんな話をまだ会ったばかりの人間に話すことではないだろう。


何とも言えずに俯いていると、横を歩いていたルイスに顔を覗きこまれた。


「!!」



いきなりのことで驚いた飛鳥は思わず後ろに飛び退いてしまった。


「…そんなに嫌がらなくてもいいだろう、少し傷ついたぞ」

「あ、いえ、そんなつもりは…ただちょっと驚いただけで、別に嫌という訳では…」


先ほどまでの飄々とした態度はどこへやら、急にシュンとしたルイスにあわてて飛鳥は弁明する。


「…そうか。嫌でないなら良かった。」



そう言ってルイスは飛鳥にまるで恋人にでも向けるようなとても甘い表情で微笑んだ。

「!?」


おかしい、この人とはまだ会ったばかりの、さっき王宮でのことが初対面のはず…

何でそんな熱い眼差しで私を見るのだろう?


実はかなりの美形であるルイスの微笑みに内心ドギマギしながらも、何とかその後もルイスと会話を続けた飛鳥。


「そういえば、もう眼鏡はしないのか?」


ルイスに眼鏡をはずされてから、飛鳥は既に眼鏡をつけることをやめていた。


「はい、もう意味もないですし(この世界では)」


「そもそも、視力が悪い訳でもないのに、何故眼鏡を?」


「元の世界では、この瞳の色は奇異に映ります。だから、それを隠すためにと……

ですが、此方に来てからは王宮で皆に既に見られてしまいましたし、
この世界でならそんなに目立たないと思いまして。もういいかなと。」


因みにルイスは紫色。

王宮で見た騎士さんたちの目も色々で、異世界なんだなと思ったものだ。


「…なるほど、だからもう意味はないと。」


「…はい。」



「…そうだな。アスカ、お前はその方が全然良い」


そしてまたルイスは甘く微笑む。


「ありがとうございます…」


本当にどうしてこの人は……


「あの、ルイスさん。精霊の所へは、ここから遠いのですか?」


顔に熱がこもるのを自覚しながら、飛鳥は無理矢理話を反らす。


「ああ、言ってなかったか。この先をもう少し行った森の中に、精霊の聖地へ行く転移地があってな。

だからそんなに時間はかからない。それと、ルイスでいい。さんはいらない。」


「聖地へ行く転移地?そんな便利なものがあるなら、賊などに聖地を荒らされたりしないのですか?」


「その点は大丈夫だ。転移地を通る事ができるのは、限られた者だけ。
更に言えば、その転移地からでないと人は聖地に行けないんだ」



「限られた者だけ…なら私は通れるのですか?それにルイスさ…いや、ルイスは?」


さんをつけそうになって軽くルイスに睨まれた飛鳥は直ぐに言い直した。


「前にも言ったが、アスカは別だ。万物の片割れなのだから、間違いなく通れる。俺は…少し昔につてがあってな。」


「そうなんですか…」


少し昔と彼は言うが、自分の倍以上生きているルイスのことだ、きっと想像よりも遥か昔かもしれない。


それにしても…と思う



「…わざわざルイスに案内していただいて、何だか申し訳ないです。お忙しいのに」



「気にする必要はない。元々、こちらの不手際でお前を巻き込んでしまったんだ、

ならばそれ相応の待遇で然るべきのこと。

転移地を通れるのが俺だけということもあるが、俺個人でそうしたいからということもある。」


だから悪いなんて思わなくていいのだと、ルイスは柔らかく微笑んだ。


…個人で…?いや、今は何も聞くまい。


今までのルイスの言動や表情などに関係しているのだろうが、それを聞いてしまったら辛くなりそうな気がしたのだった



その後もポツポツと世間話をしつつ転移地へと向かう二人。


ルイスと話していて気付いたことがある。ルイスと一緒にいると、なんだかとても安心するというか、暖かい気持ちになる。


もしかして、自分はルイスを好きなんだろうか…


いやいや、そんなばかな。と心の中で首をふる飛鳥。


内心のそんな気持ちを隠すように、先ほどと変わらずにルイスと話を続けるのだった。






精霊の地で飛鳥がこの気持ちを完全に確信を持つことになるだろうことは知らずに…








つづく




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