エビクリ

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事件

第4の事件

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 警視庁では組織犯罪に加担しているとみられる、14歳の少年が犯した犯罪について、それぞれの課が、それぞれの罪について捜査に当たっているそうだ。
 警視庁で捜査二課長を務める弟が教えてくれた。
 部下の橘は暴力団のネタを追わせている6日目に、自分が殺されるかもしれないと言う、情報を入手した。
 それを聞いた俺は引き返した方がいいんじゃないかと言ったが、結局は張り込むマンションにいるからなどと話してから、橘は事実的に失踪しているのである。
 真面目な職員だったから、なおさらみんなは心配した。
 橘が遺してくれたのは、倉庫の中で行われた動画だけでない。数日の調査の中で、少年を中心とした組織、「ベルダッド」の構造がわかってきた。
 まず関係する組織は、「ガリメゾン」「山田會」「山田コンサルタント」「警察上層部」「健民党」の6つで、それらが14歳の少年にコントロールされている。
 次にそれぞれの役割としては、「山田會」→殺人、「山田コンサルタント」→金の仲介の二つしかわかっていない。
 今、「健民党」は大きなチャンスを迎えている。衆議院議員選挙を3か月後に、参議院議員選挙を5か月後に控えているが、現在、与党の「民権党」が収支報告書に記載をしなかったとして、国民の信頼が落ちてきている。そこで、「健民党」は確実に政権を奪取するために、新しくできた「日本改革の会」との連立野党として選挙に臨む。
 そんな「健民党」の党首、玉城聡史にも今、収支報告書不記載の疑惑がかかり、国民の信頼に関わる重要な“山場”を迎えている。
 健民党での収支報告書不記載問題については、「民権党」のとばっちりを受けて、調査されている。
 調査にあたる中で、少しずつわかってきたことがある。
 一つ、「民権党」のパターンとは異なり、政治家が渡したわけではない。
 二つ、玉城党首に金を渡したのは、個人であった。その上、その相手は何か便宜をはかってもらったわけではないとしているため、このスキャンダルは終わった。
 そして、俺が今考えているのは、その人物が、あの少年ではないかという点だ。そうすると、全てに合点がいく。
 しかし、調べる方法がない。橘の頑張りを無下にするような結果には絶対にしたくない。そこで一つ、気づいた。
 橘は深いところまで理解していたのではないか。
 そう考えると、倉庫にカメラを仕掛けたのはそれだけが理由ではなかったのではないか。
 そう考えて、倉庫のカメラを確認すると、他のカメラがあることに気がついた。そして、なんらかのデータが自分に送られてきているのではないだろうか、と考えた。
 しかし、どこにも送られてきていなかった。イラついて、写っているカメラのところでクリックを続けると、リンクが浮かんできた。そのリンクに飛ぶと、パスワードを求められる。何か俺でもわかるものになっているんじゃないか。
 社員番号、誕生日などあらゆる数字を試した。しかし当たらない。
 もしかして。
 実は俺はバツイチなのだが、その相手が橘なのだ。
 喧嘩の末に橘の方から離婚を切り出されて、俺も感情に任せて承認して、いつの間にか離婚していた。でも俺はそれを悔いている。もしかすると、橘も悔いていたのかもしれない。
 1225と打った。
 ロックは解除され、カメラの映像が出てくる。そこに写っているのは「健民党」の玉城と、少年だった。玉城は少年のことを「けいすけ君」と読んでいる。
 その「けいすけ君」はたまきと何やら会話しているようだ。そして手に持っていた大きなサムソナイトんkキャリーケースの中身を見せる。
 ヤフーの掲示板で調べてみると、8億円程入るようだ。彼はどうやってそんな大金を入手したのだろうか。
 その時、画面が黒くなった。如何なる操作も意味がないようだ。ハッキングされていたのだ。それを上司に報告し、直してもらうために移動して、トイレに寄った瞬間。刺されている。赤黒いシミが広がっていく。
 犯人はそのままでていき、警備員に取り押さえられたようだ。
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