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第十話
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しおりを挟む一応、セランはキッカと両想いになった。
一応とついてしまうのは、そうなっても今までと扱いが変わらなかったためである。
今日もやはり、キッカはいつも通りだった。
「そういや、お前が言ってたの参考にさせてもらったぞ」
「私が言ってたの?」
「水の。地面の下云々って言ってたろ」
「もしかして私がいない間になにか進展があったり?」
「まあ、そこそこ」
詳しく教えてくれるかと思いきや、そういうわけではない。
なんとなくセランはそんなキッカにもやもやしたものを感じていた。
(私、つがいになりたいって言われたよね? 聞き間違いじゃないよね? 好きって言ってもらったよね?)
ひたすら自問自答するセランの気持ちに、キッカは気付かない。
もともと、キッカは自由人気質だった。興味のないことは忘れ、気分転換にすぐふらりと出掛けてしまう。セランと話す時間は多かったが、それもあまり前と変わっていない。
つがいとは、夫婦とは。せめて恋人扱いくらいしてくれればいいのにと不満が浮かぶ。
セラン自身、自分がそんな気持ちになることを驚いていた。
結婚などもうこりごりだと思っており、男はそういう生き物なのだとすら思っていたセランである。そこまで誰かを独占したいと思う気持ちがあるはずもない。
そんなにキッカが好きなのか――と聞かれると、なんだかそれも違う気がした。
確かに好きだし、その『好き』は恋や愛に区分されるものである。
結局、セランはキッカに気持ちを伝える前以上に悩む羽目になっていた。
「俺、今日も出掛けるけど。お前は?」
(聞いてくるようになっただけ、いいのかなぁ)
「私は……勉強でもしようかな」
「偉いじゃん」
キッカが魔王で、自分はそのつがいになるのだから――という気持ちをどこまで理解してくれているのか。
「もし時間があったら、一緒に付き合ってくれる?」
「なんで?」
(なんでって、なに!)
「キッカに聞いた方が早いときもあるし、それに……できるだけ二人でいたいよ」
「俺より、他の奴に聞いた方が早いんじゃねぇかなぁ。ほら、忘れっぽいから覚えてねぇことの方が多いし」
「……う、うーん」
(一緒にいたくないの、なんて聞くのは……違う気がする……)
悶々とするセランに、やはりキッカは気付かない。
変わってしまったのはセランだけなのかもしれなかった。
もしくは、これが亜人と人間の違いなのか。
「そんじゃ、行ってくるわ。早く帰って来られたら付き合うよ」
「……うん」
バルコニーへ向かう前に、頬へくちばしを押し当てられる。
(こういうところは、夫婦っぽくなったんだけど……)
キッカはこれを毎日してくるようになった。
それはいいのだが、やはり仮面の中身は見せてもらっていない。
(私、本当につがいだと思われてる……?)
それが、セランの今の悩みだった。
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