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第1章

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「成績優秀に、その容姿‥、性格。君は生徒会役員にふさわしいよ!」


「そ、そんな‥ぼ、僕なんかがっ」


「俺と優と、君で、この学校を守る‥そして最高の仲間になるんだ!」



ガツガツと牛カルビ丼を腹に入れていく。

気がつけば昼食は勧誘会。


時にはスバルに、時には転校生。
俺と相田は空気と化して、ただただ目の前のものを食べ続ける。


これを食べ終えたら終了だ。
スバルは犠牲になるが、1人で教室に戻ろう。そうしよう。

そう決心した時、


「鉄朗くん、助けて!」


「は?」


急に呼びかけられて、俺は箸を止める。
だから、なんで俺‥
隣でうどんを食ってる相田にでも頼んでくれ‥。



「井上‥、お前ッまた邪魔をするのかッ」


‥こいつは
次は邪魔者扱いか

いい加減、失礼だぞお前。





「‥これでも飲んで落ち着け」




「は?んぐっ!?っ、~!?!?」


俺はテーブルの端に置かれていた赤い容器を開けて、まだ何か言うため開けた桜田の口にそれを突っ込む。


顔を容器と同じく真っ赤にした桜田に、ニヤリと口元が緩んだのが分かった。
やれやれ、
俺の表情筋も、機能をしているようだ。よかったよかった。


「っ、光!?お前ッ」


そう思ったのも束の間、
勢いよく立ち上がりスバルを押しのけ、
俺の襟を掴む里見。

痛い痛い。座ってるとはいえ、
そんなに強く引っ張るなよ‥




「井上!?光に何したんだよ!!?」


怖い里見さんに顔が引きつるも、
適当に誤魔化しの嘘をつく。



「‥水と思ったらタバスコだった。すまん」


棒読みなのは気にしないでくれ。
決してわざと‥ああ、わざとだ。すごい気分がいい。


緑の瞳がギラギラと怒りで揺れて

ふいに、
変わらず綺麗だな‥







なんて、




思ってないから。

ああ、やめろ馬鹿
気持ち悪い。寒気がした。
今のは無しだ無し

ゔゔ‥熱でもあるのかもしれない‥


俺は体をさする。





「て、ててててつろうに触るな里見いいい」

 
俺と里見の間でぺったんこになっていたスバル。
威嚇する猫は、びくびくと怯えていて頼りない。もうやめとけ、




「うるさい黙れッ!!!」


「ひっ、て、鉄朗~!?」


ほらな‥

こいつは怖えんだから‥俺たちはそっとしとこうぜ。


俺になきつくスバルに呆れた顔をした里見が
はあ、と、ため息をつく。


息をつくのもいいが、
離してくれないだろうか。そろそろ襟が伸びそうだ。



「ほんと馬鹿じゃないの弱虫‥は、光、だいじょうbーー」


「先輩‥だ、大丈夫、ですか‥?これ、僕の牛乳、飲んでください、」


口元を抑える桜田に、すかさずコップを差し出す転校生。
里見が出遅れるなんて珍しい。

いや、いつもは周りが遠慮して、
2人の間に入らないんだっけ‥



「ゲホゴホ‥あ、ありが、と‥






っ、‥君、よく見たらすっごい‥エロいね‥」


牛乳を受け取り、しゅぼしょぼさせた目を開ける桜田。

その際同時に開いた口にまたタバスコを入れそうになったが、里見に睨まれたのでやめておく。




「え、エロ‥ッ、」



戸惑う転校生。
分かるぞその気持ち。


急にエロいとか言われたらキモいよな。
言ってやれ、キモいって。
そしたら俺はお前と仲良くなれそうだ。


つか、そろそろ教室に戻りたい。
俺の牛カルビ丼は、里見の手により地面と仲良しになってしまった。


作ってくれた人には申し訳ないが、
落ちたものを食べる趣味はない。

俺は、この場から抜け出そうと、足に力を入れたのだが、





「‥君の口から‥飲みたい‥」



至近距離、
口を開いた赤毛に、里見の手が震えて、
俺はそっと力を抜く。



なにいってんだこいつ





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