悪役令息の取り巻きに転生した俺乙

花村 ネズリ

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第6章

イベント

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‥‥‥



ここがどこかもわからない。
ただ歩いて、気づけば木に囲まれた自然豊かな場所へとたどり着いていた。


俺は少し開いた場所にある、大きな木の下へ座り込む。


どれだけ時間が経っただろうーー。
ファイさんから何度も着信があった。
そういえば放課後は作戦会議とかそんな事メールで来てたような‥


あぁ駄目だ。今は会えない。


ドロドロと黒いものが渦になって、俺の心を蝕んでいく。


シオン‥どうしてあんなことを言ったんだっ。
俺が‥邪魔だったのか?本当は嫌いだったのか‥?

お前も‥ルーと同じようにっ

息がしずらい。
俺は胸を押さえて、ゆっくりと深呼吸した。

っ、
大丈夫だ。落ち着け。
少し休んで、また挑戦すればいいんだ。
リオンさんに‥信じてもらえるように努力して‥それで、



本当に‥信じてくれるのか‥?


「っ、く、ゔ‥」


先ほどから胸の辺りが痛い。身体がだるくて、立ち上がることすら出来なくなる。
グルグルと魔力が全身を駆け巡り、違和感を感じた。


その場で蹲っていると、ガサりと茂みが揺れて、誰かの足が俺の前に立つ。

だれ、だ‥?

「ねえ‥協力する気になった?」

「っ、お前‥」

ルー‥どうしてここにっ


「君の好きな人はみんな裏切っていく。」

「それ、は‥お前がっ‥ぐ、あっ‥ッ、なんだ‥?魔力、がっ」

言いたいことが山ほどあった。
シオンに何を言ったのか。
何のためにここまでするのか。


だけど、それよりも先に周囲と自分の身体の異変に戸惑う。

身体中に駆け巡る鋭い痛み。
魔法の詠唱もしていないのに、俺の周辺で緑豊かに咲いていた草花が枯れ果てていく。


「あれ?この場所に来て気づかないなんて、もしかして君ってそんなに詳しくない?」

一瞬、驚いた反応をするも、すぐさまいつもの嫌な顔に変わって俺を嘲笑う奴。

俺は奴の言葉の意味が分からず、痛みと苦しみの中、
彼に問いかけた。


「どういう、こと‥だ‥」

「今日はイベント日だよ!イベント!エル•クレヨンの魔力暴走。お前は魔力暴走を起こして、歴代校長が学園を守護するために作った守りの森一帯を死の森へと変えてしまう!」

「は‥?」

なんだよ、それっ、

「毒は魔物の大好物。学園へ大量の魔物が押し寄せて、大パニックさ!死人だってでる‥君、人殺しになっちゃうね。」

面白そうに笑う奴に、はじめて恐怖を感じた。
狂ってるっ、そんなのただの殺人鬼じゃないかっ、

「お、俺はッ、っそんな、ことっ、しないっ」

「誰も導いていないのにこの森へきたんだろ?可哀想に。世界は君をルートから決して離さないようだ。ふふ、本当に哀れだね。」

「っ、な、に」


絶望的な言葉だった。
知りたくなかった現実。

こいつの言う通りだ。この森へきたのだって偶然だったんだ。

だったら‥俺は‥世界にすら‥

心が闇に覆われる。



シオンは俺から離れて行く、

ファイさんだってシオンみたいにいつか

ルーも‥もう‥戻ってこないかもしれない


リオンさんは永遠に



俺を受け入れてはくれないーー。



はは‥そしたら俺は‥ひとりぼっちだ



「人殺しになれば周りは君をどんな目で見ると思う?どれだけ君が抗おうとも、悪役のモブっていう立場に戻ってくるんじゃない?いや、そうせざるおえなくなるんだよ。」

「っ‥く、う‥」

「うわ!ちょっと!まだ暴走しないでよっ、僕の靴溶けかけてるじゃないかっ!?買ったばかりなのにっ!もう!僕は巻き込まれないように一足お先に失礼するよ!ふん、確か体内から全身を刺されるような痛みだっけ?辛いだろうけど、一人で頑張ってね?精一杯苦しみなよ。イレギュラー。」

「はっ、ま、て‥ゔ、」


くる、しい‥息ができない。
ぐちゃりと音がして、俺の周囲、いやそれ以上の範囲で草花や木々が枯れ果ててゆく。

だめだっ、抑えないと‥
魔力暴走した時はどうするんだっけっ
痛みで頭が回らない。

激痛が全身を襲って、
俺はただ蹲って身悶えた。

誰かッ‥誰か‥

人殺しになんてっ、なりたくないっ


せめて、誰の命も奪わないようにッ


ドクンと心臓が波打つ。

俺は必死で魔携帯を取り出し、
揺れる視界と震える指を押さえつけ、

しゅごのもりちかづくな
まものがくえんきけんーーそう文字を打ち、送信ボタンを押す。



どうか‥気づいて‥あんた、返信、はやい、だろ‥?

だから‥間に合ってくれ‥



激痛で意識が遠のく中、
ピロリンと魔携帯の画面が灯る。


その1さんーー
承知した。こっちは任せろ。ーー



あぁ‥ほんと‥返信、はやくて、助かる‥よ‥さす、が‥



これで‥






そこで俺の意識は途絶えたーー。









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