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第6章
おかしな心 リオンside
しおりを挟むリオンside‥‥‥
「ちょ、君っ、どこ行く、のッ!?ーー、
‥離してくれない?シオンちゃん‥」
立ち去っていくあの子を追いかけようと脚を動かす。
それを引き止めるように、俺の胸ぐらを強く掴んだシオンちゃん。
「言っただろ。エルを、リオンには‥近づかせないって」
「何勝手に」
「いい加減にしろ。そうも言ったよな?傷つく言葉を浴びせられて‥殴られて‥酷い目にあったばかりなのにッボロボロなのに笑ってた‥必死でッ!」
「っ、意味わかんない‥シオンちゃんは何がしたいわけっ‥君だってあの子が酷い奴だって同意したでしょ?だから俺はっ」
「あぁ、そう思ったんだよなリオンは‥そう信じたんだよな‥ならもう関わらなくていいよ。俺も協力するから。」
「っ、だからどういう事なのさ?!なんでッ最後までッーー。」
笑って俺のことが好きだってーー、
おかしいでしょ‥あんなの。
あの子、口元‥切れてた‥
早く手当しないといけないのに
そこで、ふと気がつく。
あれ‥俺、なんであの子の心配なんか‥
「っ‥なんで、わかんねえんだよッ」
シオンちゃんの声に、
びくりと固まっていた脳が覚醒する。
俯くシオンちゃんの拳に落ちていくなにか。
「ッ、なに、泣いてんの‥」
「俺‥‥一体何してんだろうな‥」
ポロポロと流れ落ちる雫に戸惑う。
大きな瞳がゆらゆらと揺れて、まるで小さな子供のようだ。
「‥知らないよ‥そんなの」
「頼むから‥エルを‥傷つけるなら‥もう、エルに関わらないでくれよ‥」
好きで関わってるわけじゃないし、
むしろあの子が勝手に俺に絡んでくるんじゃないか。俺は悪くない‥。
『正しき運命をーー』
‥そうだ。
いなくなっちゃえばいい。
俺の前から消えてくれれば清々する。
あーあ、悩む必要なんてなかったじゃん。
てか俺も馬鹿だよね?あんなやつの心配なんかしちゃってさ。
もっとボコボコにしてやればよかった‥。
殴られたのにあんな顔しちゃってさ‥あんな‥
『大好きです、リオンさんーー』
っ、
「‥言わなきゃ良いんでしょ?」
「‥は?」
自然に口からこぼれた言葉。
恥ずかしくなって、シオンちゃんから顔を背ける。
「気をつける‥だから、あの子との事口出ししないで‥」
「っリオン、まさか‥エルのことっ」
「は!?好きなわけないでしょっ!?」
「‥俺、まだ何も言ってないんだけど‥。」
「っ、」
今すぐ顔を隠したい。
勢いで口から出た言葉に赤面する。
シオンちゃんの冷たい視線‥俺は居た堪れなくなって顔を背けた。もう‥かっこ悪すぎなんだけど‥。なんなのこれ‥。
「、好きじゃないなら‥なんでっ」
「き、嫌いでもないっ!」
シオンちゃんの言葉に被せるようにそう告げる俺は余裕がなくて、まるで小さい子の言い合いだ。
どうしてか、先ほどから嫌というほど焦りを感じていた。
シオンちゃんならやりかねない。そんな根拠のない自信が、心を不安にさせる。
あの子と関わりが無くなれば、俺は前みたいに自由にできるし願ったり叶ったりなはずなのに、即座に肯定できない胸の奥底のもやもや感。
あんな奴‥
うざいし、毎回邪魔してくるし、うざいし、うざいし‥
でも、
毎日のように伝えてくるあの言葉。
あの子のアレは、嫌いじゃない‥
「‥っ、」
シオンちゃんが間を置いて、俺の首元から手を離す。
ショックを受けたようなその表情に心配になったものの、あの子の傷の具合が気になって、
「じゃ、じゃあ‥そういうことだから‥、よろしく‥」
もごもごと俺はそんな言葉を言い残し、シオンちゃんを置いてその場から立ち去った。
◇
「はぁ、どこに‥行ったの‥」
あの子が居そうなところは‥
あぁもう!そんなのわからないってば‥。
いつも探しにくるのはあの子のほうだったから。
‥こんな事になるなら、少しぐらい‥ちゃんと話せばよかったな‥。
毎日懲りずにお弁当なんか作ってきちゃってさ。重いっての。
まあ、あの子の作った卵焼きは悪くなかったけど‥。
‥雨の日には、傘を持って俺が濡れないように傘の大半を俺の方に傾けてた。肩があたると顔を真っ赤にするものだから、俺は面白くて何度もわざとぶつかってやったっけ。
それにこの前なんて、俺とセフレちゃんが密会してるの見つけて飛んできたと思えば、石に躓いてスライディング。
恥ずかしさと嫉妬が混ざり合った葛藤してる姿は本当に面白かったな‥。
毎回懲りずに俺を止めにきてさ‥。俺を好きだ好きだって何度でもそう告げてくる。ダサくて、ドジで、諦めの悪い奴。
だけど、何度も伝えられるその言葉に、俺は毎回心の奥底で安心感をおぼえていた。
もしかしたら、俺の方が彼の言葉に依存しているのかもしれない。
愛に飢えすぎ。
‥どこにいるんだよ馬鹿。
俺はまだ探していないあの子の部屋を訪ねようと、寮までの道を歩いていたところで、見知った人物と出くわす。
「っ、くそ繋がらないっあいつまさかこの中に?」
「ファイ‥?」
初代校長が作ったとかなんとかの守りの森の前。焦った顔をしたファイが魔携帯を耳に当てて、苛立った様子で足を揺らしている。
どうしてこんなところに‥今は生徒会室で仕事をしてるはずじゃ‥?
誰かを心配しているのか、何度も魔携帯を確認するファイ。
ふと、ざわりと嫌な気配が森の奥からして、俺は目を細めた。
この魔力の感じ‥よく知ってる‥。
「っ、リオン、どうしてここにッ、避難放送を聞いていないのか‥?まあ、いい。とにかくお前も早く寮内へ避難しろ。守りの森付近は危険だからーー」
「今のあいつって誰‥」
ただの勘だった。だけど、本能がそこへ行けってそう言ってる。
「そりゃあ、エ、ごほんっ、、、いや、ただの一般生徒だ‥」
「へえ‥一般生徒ね‥」
当たりーー。
俺はすぐさま魔力の発信源である森の奥へと足を進めた。
「っ、は?おい!?リオンどこへいく!?」
ファイは本当に嘘をつくのが下手だよね‥。王様になった時に騙されそうで心配だよ。
背後から聞こえるファイの声に、俺は振り返える。
「その一般生徒の子、この中にいるんだよね?避難させないと」
「だがっ」
「俺が強いの知ってるでしょ。毒系の魔法かな‥?俺、毒なんてものは盛られすぎて効かないし。このぐらいじゃ死なないよ。」
表情が曇るファイ。たぶん、自分で行きたいんだろうな‥。
でも見たところ、何か動けない理由がありそうだ。だったら親友の俺に任せちゃいなよ。
悔しそうに、それでいて覚悟を決めたように顔を上げるファイ。
「、無理をするな。危険だと思えばすぐに引き返せ。約束しろ。」
「‥わかった。約束する。」
「‥っ、気をつけろよリオン。‥あいつを‥頼んだぞ。」
「っ、‥りょーかい。」
あいつね‥。なんだ、そこも繋がってるわけ。知らないのは俺だけか。嫌になるよ全く。
魔力の痕跡を辿り、深く濃くなる毒の霧の間を進んでいく。
少し開けた場所。大きな木の下で白い髪がふわりと揺れた。
俺、仲間外れって昔から大嫌いなんだよね。
だからさ、
「見つけたーー。」
これが終わったら、じっくり君の話を聞かせてもらうから。
覚悟しときなよ、エルくんーー。
リオン side endー。
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