悪役令息の取り巻きに転生した俺乙

花村 ネズリ

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第6章

不安

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「ふん‥ほんっと、邪魔だよねお前。」

「‥」

俺はルーをキッと睨みつける。
それはこっちのセリフだよ‥

掴まれた腕は強く握られた後、乱暴に離され、俺は痛みで顔を歪めた。この野郎‥わざとやりやがって‥いってえ‥

「シオンに‥何をした」

「別に?少し話をしただけだよ。」

ニヤニヤとルーの顔で笑う奴に沸々と怒りが湧き出す。
こいつ‥楽しんでる‥

「ルーッ」

「あんまり大きな声を出さないほうがいい。クスッ、皆んな見てるよ?」

「ッ」

ルーの言葉に俺は辺りをうかがう。ヒソヒソと俺たちを見つめるクラスメイト達。確かにここじゃ視線が多い。ああもう!めんどくさいな!

「~ッ、場所を移すよッ‥」

人の気持ちを散々コケにして‥お前には一言言ってやらないと気が済まないッ

「ふん!嫌だね!!誰が君の言うことなんか聞いてやるか!ばーかばーか!」

「はっ?ッ、待て!」


捨て台詞の様な言葉を投げ捨て、くるりと種を返し、教室から出て行くルー。
俺は呆然とその姿を眺めることしかできなかった。

自分から引き止めておいてなんて奴だ‥てか完全に煽り方がガキなんだよ‥中身は中学生とか‥ありうる‥
俺は空をきった腕を握りしめため息をついた。

シオンと話しただって‥?
一体何を‥

シオンの言葉、涙‥
リオンさんを任せてくれって‥いつものシオンならそんな事絶対に言わない。
俺の覚悟を知っているから。
人の気持ちを理解して行動できる優しい子だから。

「‥ッ」

あんなふうに‥泣くなんて‥
ルーとシオン、二人が何を話したかはわからない。
だけど、追い詰めたのは俺だ‥。

優しくて、明るくて、俺をいつも助けてくれる。
欲しい言葉をいつもくれる。
君にはもらってばかり。

それなのに俺は何も返せない。
返せないんだ‥


俺は君の気持ちには答えられない。ごめん、シオン。


ゆらゆらと心が彷徨っている。
暗闇や不安が襲ってきて、
俺は必死にそれを振り払った。

ファイさんだっている。
シオンも、俺が失恋した時の様に距離は必ずできてしまうだろうけど‥
彼の心が落ち着いてからでいい。
話し合って時間を作ればいつか‥

そう考えているのに、いつも明るい彼の涙やリオンさんの態度に、
俺の心は晴れないままでいたーー。



「リオンさんに‥会いたい‥」


ふいに呟いた言葉。
それに導かれる様に、
俺は彼の元へと足を進めていたーー。

‥‥




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