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第6章
恋敵
しおりを挟む「ふ、ファイッ、どうしてここに‥」
急に背後から声が掛かり、振り返る俺達。
冷や汗を掻くリオンさんと、そうさせている相手を睨み付ける俺。
タイミング‥悪い‥。
その1くんこと、輝く金髪を靡かせ、不思議そうに俺達を眺めるこの男。攻略対象1この国の第1王子‥ファイ•キングダム。
原作通りならシオンのお尻を追いかけている頃だと思うけど‥
最近姿を見せないから油断していた。
「‥?リオン、お前どこか調子でも悪いのか?口調が昔のように戻って「き、気のせいだよー!ファイ老化でも進んでるんじゃないのー」‥おい」
この人に敬語を使わないで許されているリオンさんは、よっぽど親しい仲で‥。
慰め合いのあの日聞いた話によれば、子どもの頃からの幼なじみ。時間は戻せないけど、一緒に育った仲なんて羨ましい。リオンさんの子供時代なまで見てみたかったな‥。絶対に可愛いから、断言できる。
「はあ、まあいい。それより、どうしてこの男なんかと食事を共にしているんだ?まさか、次はこいつと‥」
「なッ!?わけないじゃん~ッ!?馬鹿じゃないの!?」
ヤルつもりか、
そんな言葉をリオンさんが慌てて遮る。
これだからお下品野郎は‥リオンさんの耳を汚すなっての、、まあ、
リオンさんになら全てを捧げますけども
「‥ば、馬鹿、だと!?貴様っうお!?なんだ!?」
「俺はッこんなファイが嫌がりそうな奴とっ!つるむ訳ないからッ!!‥す、ストーカーだよこの子‥す、すごい迷惑しててー、困ってたんだよね~っ!そ、そうだ!ファイもなんか言ってやってよ~!ね?俺の親友でしょー?」
「ッ、」
その1くんの肩を掴み、俺との関係の誤解を解きたいのか、必死な形相のリオンさんに胸がズキリと痛む。
好きなんだ、よな‥?リオンさんは、この人の事‥。俺がルーを好きだったみたいにずっと‥ずっと‥。
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ゔう、そうだよな。この中では俺は邪魔者で‥心の距離がまだまだ遠いな‥。
「しん、ゆう‥しんゆ、‥ふ、ははっ、そうか!そうだな。いいだろう。親友のこの俺様がガツンと追い払ってやる!
おい、そこのアルビノ」
うわ。急に狂ったみたいに叫ぶから、ついにおかしくなったのかと思ったよ。
指を刺された先は俺。
何かまた言葉のナイフを刺されそうな予感‥やだなー‥。
だけど‥貴方の側にいられなくなるのは、もっと嫌だ。
俺はスゥと息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。大丈夫。
「‥」
「ふん、恐怖で返事すらできないか。臆病者が。よく聞け!これは、俺様の親友なる存在だ!お前の汚らわしい私利私欲をぶつけていい存在ではない!!これ以上付き纏うな。身分を弁えろ。」
ギュッとその1くんに握られたリオンさんの手。
きっとこの鈍感野郎はリオンさんの気持ちなんて知らないで行動しているんだろうけど、
顔を赤らめる彼と、俺にドヤ顔でナイフを刺してくるこの男にふつふつと怒りが込み上げてくる。
毎度毎度、俺を弱らせて何がしたいのやら‥。でも、手を握らなくてもよくない???
ほんっっっと
ムカつくッ
「‥何か言ったらどうだ?」
リオンさんに触れるなっ!!言いたい。言ってやりたいッぐっ、見苦しい男の嫉妬‥ダメ、絶対。
落ち着け、落ち着け‥ひいひいふー、、
「嫉妬ってほんと、見苦しいですよね‥俺、もっと心の広い男になれるように頑張りますね、リオンさん!!!」
ぱぁと顔を上げたと同時に無意識に目に映った恋人繋ぎ。‥は?いつの、ま、に‥いつの間に俺のリオンさんにッ恋人繋ぎなんてッ俺もしたことないのにいいいいッんぎゃあああああッ
こんの‥クソ野郎がッッ
勢いとは恐ろしいものだ。
握られたリオンさんの腕を絡めとる。
その1くんから引き離すと、そのまま彼の両手を包み込み引き寄せた。
「うわ!?え、は?」
「ッおい!?貴様ッ人の話を聞いていたのか!?なんなんだ!?」
俺の場違いな明るさと行動に空気が凍りついてるし、俺も凍りそうだけど、負けてられない。今度ばかりは後悔なんてしたくない。勇気を出すんだ。
引いた顔のお二人さんを無視して話しを続ける。
ポジティブなめんなよ。
「あ!それとリオンさんの親友さん!」
「お、俺様の事か‥?」
わざとらしい呼び方にも反応するその1くん。案外素直なのか天然なのか。
もしかしたら、根は悪い人では無いのかもしれない。周りの環境に作り上げられただけで本当は‥お優しい方‥そんな風にルーは言っていたっけ‥。
俺はリオンさんから腕を解いて、困惑した表情のその1くんに向き直る。
‥今からする質問は貴方が犯した罪の話だ。
「はい!そうです。ファイ•キングダム様。貴方は‥リオンさんを守れますか?」
「っ、いきなり、なんなんだ‥。それは、俺様は強いから容易いものだ。」
「そうですか。なら‥
リオンさんが助けを求めている時、すぐに救ってあげられますか?リオンさんが道を外そうとしている時、止められますか?リオンさん泣いている時、その涙を拭って慰めてあげられますか?」
「も、もちろんだ!親友だからな!」
親友‥親友ねぇ‥。
恋人ですら、気付けなかったくせにッ
ルーが何度傷つけられたか、記憶を変えられた貴方はもう覚えていないでしょうね。
だけど、俺は忘れないから。
握り締めた拳は血が滲んでズキズキと痛みが襲う。
「ファイ‥」
リオンさんが眉を下げて、俺では無く、彼の名を呼んだ。
はは、感動したような顔しちゃってさ‥。
俺が当て馬になれば、もしかしたらこの2人は引っ付くんじゃないかなんて、そんな事が頭をよぎるけど、すぐに考えを打ち消す。
俺が‥幸せにするんでしょうが。
この人には絶対に渡さないっ。
「‥じゃあ、それ全部、自分の好きな人を投げ打ってでも、リオンさんを優先してくれるんですよね?」
「ッ」
渡したくない。
「自分を犠牲にしてでも、好意を寄せる相手を捨ててでも、命をかけてでもーーー」
もう、逃げも隠れもしない。
「それ、はッ‥そ、そんな事!現実的では無いッ」
自分を押し殺して生きてきた。
何も言えないままいつも諦めて、だけどそんな人生はもう懲り懲りだ。
俺は俺の道を歩くんだ。
「現実的、ですか‥。その程度の‥」
「え?」
「その程度の覚悟が無いのならッ俺の邪魔をしないでくださいッ!軽々しく口出ししないでください!身勝手だって分かってます。リオンさんに迷惑をかけてることも‥だけど、俺、リオンさんにすげえ惚れてるんです‥自分の人生が変わっちゃうぐらいに、この人の事大好きなんです。その気持ちをッ想いをッ汚らわしいなんて言葉で表さないでください。俺は何を投げ打ってでも犠牲にしてでもッ命をかけてでもっ、この人を守り抜く覚悟です。この人の側にいたい。この人の笑顔が見たい。この人を幸せにしたい。これは、俺のわがままなお願いです。
俺にチャンスを、くれませんか?親友さん?」
馬鹿みたいな長文の末、頭を下げる。
息が切れて、それでも頭はスッキリしていて、
言いたい事‥今俺、言えたんだ。言えた。言えたんだっ
はは、は、
失礼だって、殴られるかな‥?
それとも男爵の分際で王子を侮辱だなんだって斬首刑とか?
あぁ、臆病なところはまだまだ治らないな‥。でも、爽快な気分だ。
ふわりと風が俺達の間を通り抜けて、それでも尚反応の無いその1くんが不安で恐る恐る顔を上げる。
「え?」
その1くんが、なんだか間抜けな表情をして固まってるんだけど。
リオンさんは俯いたままプルプル震えてるし‥
えっと、どうしたら良いのかな?
「あ、あの?」
「な‥」
「へ?リオンさん?」
ユラユラと俯いて俺に近づいてくるリオンさん。どうしたんだろ?気分が悪いのか?すぐに保健室に‥
「何言ってんだよ?!ほんっっっと!あんた正気じゃない!!」
「ぐえっ!?」
「自分を犠牲にしてまで?ふざけてんの!?そんな重いのが君の愛なら俺はいらないよ!!」
急に首元を掴まれて揺さぶられる。
ちょ、ま、く、苦しいリオンさん!?
タンマタンマ!?
「だ、だって本当に俺はそう思ってるんです!!それに、愛ってそういうものだって王国物語に書いてたからっ、あ、、、」
つい口走ってしまった言葉にハッとする。
あれ、これ。前にも‥
「‥王国物語、読んでるの?」
「‥は、い‥。愛読書です‥。」
ゆっくりと離される腕。
懐かしいな‥最近の、話のはずなのに‥貴方と話し合ったあの頃が、もう何年も昔のことみたいだ。
ぽかんとした顔のリオンさんが、ふいに頬を染めて恥ずかしそうに俺を見つめる。かわっ、じゃなくて‥何かまずったか?
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