悪役令息の取り巻きに転生した俺乙

第5章

イケメンだから許されるって調子のんな！

風が緩やかに流れ、
鳥のさえずりと、刃物を研ぐ音と、
俺の圧し殺した泣き声だけがその空間に響く。


「‥何故、泣いている。」


「‥ッ」


静寂とした空気に耐えられなくなったのか、俺に問いかけてくるその3くん。
デリカシーのないやつめ。
男の泣き顔を見たらソッと触れずに立ち去れよ。

嫌な意味で鈍感というか‥はあ


「何か‥悲しいことがあったのか？」

「‥ふ‥」


今この状態が悲しすぎるから。
止まらない涙って、相当俺、やばいよね。



ガサリと身動きをとる音が隣から聞こえて

ああ、やっとどこかに行ってくれるんだ
って、







「‥チューーー」






「ッ、



は？」



急な事に、頭が混乱する。
照りつける太陽に被さる何かがいて、それで‥それが近づいてきて、唇にふにゅって‥感覚が、して、
え、いや待て待て。どうしてそんな‥は？

俺は、訳もわからずに、大量の涙を溢れさせる。


「ッ何故‥泣き止まない？泣いている女は、大抵これで泣き止むはずッ‥。」

それ誰から教わったんだよッ
しかも、俺どこからどう見ても男だろうが馬鹿野郎ッ
まて‥でもこれ俺も同じような事リオンさんにしたんじゃッ、くっ、でもでもでもおおお！棚に上げるけどッこいつはっ許さんッ

「ッ、ほんと、馬鹿なんじゃねえの！！」


バチンッと響くビンタの音。
唖然と固まるその3くんを置いて、俺は走り去る。

ああ、もう‥意味不明だよ。


どうして俺が‥

唇をゴシゴシと擦って、止まらない涙に腹が立った。