鬼畜な悪党の下っ端に転生したのだが、頑張って生き抜きたい

第6章 選択編

はじまりの日

‥


いつまでこうしていたのだろう。


真っ暗だった海からは、光が顔を出してキラキラと波を揺らす。


「綺麗‥」



口から無意識に零れ落ちた言葉。
上へゆっくりと登っていく朝日を、ぼーっと見つめていた。


結局、誰も来なかったな‥
そんなことを考えて、ふと自分の虚しさに転げ回りたくなった。
いやいや、期待なんかしてなかったけどもっ！
ゔ、俺寂しい奴かよ‥。喜一が迎えに来てくれるような、そんな気がして‥うん、戻ろう‥。
一晩中考えても結局答えは出ないし、いつまでも落ち込んでいてはしょうがない。

それに、喜一を‥拒絶した‥。ちゃんと本当の事話して、謝らないと。
また死ぬ前みたいに誤解して終わらせたくない。



覚悟を決めて立ち上がった時だ



刹那、ガサリと背後から音がして、
俺は喜一が来てくれたんだと胸が踊り、笑顔でそこへ振り返る。




「きい、‥‥ッなん、で」


「‥」 


予想外。そんな言葉では言い表せない。
だって、ここに居るはずのない存在なのだから。
口を閉ざしたまま、俺を睨みつけるその眼差しは鋭いナイフのようで



とらわれた俺は、一歩も動けなくなった。



「ああ‥」



もう1人の俺が、悲鳴をあげる。
まだ、答えが出てないのに、ちゃんと話せてないのにッ、このままじゃ駄目だッ
今すぐ戻るんだ‥それで、きいちに、ちゃんと話して、それから‥意識が、いや、心の想いという部分が、落ちていく。まるで閉じ込められるように、心の奥深くへと‥


くそ‥
最悪な日‥。






日に照らされた金を




宝石のような赤い目を









この世界で1番


愛していた‥ーー






くそう、なにこのデジャブ感‥




「なんで‥来ちゃうかなぁ‥






ラシル‥」