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第5.5章 番外編 鬼の記憶〜
鬼の記憶6
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‥
ただただ歩く。
心の奥底で、何かがぽっかりと空いたような
そんな虚無感が押し寄せる。
何に対して、こんなにも絶望しているのか
ただの1人の人間。
弱い人間。
俺を助けただけ。
助けられただけ。
その理由を知りたかった。
だけど、知らなければ良かったと今じゃ後悔している。
恩は返した。
あとはどうとでもなればいい。
野垂れ死ぬなり、拾われるなり好きにしろ。
俺には関係ない。弱者は強者に喰われる。それがこの世界のルールだ。欲まみれのルール。
ああ‥そういえば‥アイツの名前‥聞いていなかったな
俺に向けた笑顔と、あの子どもに向けた笑顔が交互になって脳内にこびりつく
もう‥関係の無いことか
「‥」
いつのまにか、人の騒めきは消えていて、
目の前に広がる大きな湖に足を止めた。
「ここ、は‥」
自然に囲まれ湖。
先程まで建物や人々で賑わう通りだったはず。
町から出てしまったのか‥?
ーーくすくす、可哀想‥ひとりぼっちだ!ひとりぼっち!!ーー
水の上で跳ねて遊ぶソレ。
今は相手をする気分ではないのだが‥ちょうどいい、聞きたいことがある。
「‥何故、お前達は俺を助ける‥?母と何か関係があるのか‥?」
ずっと聞きたかった疑問。
母から聞いたおとぎ話がこうも運良く俺を助け、彼らを動かす力を得た。
もしかしたら母も精霊と何か関係があったのかもしれない。
こいつらに人間と意思疎通できる思考があるのかすらわからないが、
言葉が通じるのなら何かしら聞き出してみよう。
湖に浮かぶ葉に座り込んだまま首をかしげるソレ。
ーー‥??さあ?何のこと?僕も皆んなも、そして彼も君を気に入ったんだよ!!ドロドロのぐちゃぐちゃ!!感情の大噴火だ!! クスクスーー
「、彼‥?お前らだけじゃないのか‥?」
葉の上で転げ回る精霊。
会話はできたものの、言葉の意味があまりよく理解できない。
彼とは、何のことだ‥?
ーーだけど、危ない、危ない。危険だ危険!あの子もお前もひとりぼっち。光と陰は2つで1つ。だから、彼は手を出せない。でも今はひとりぼっち。ひとりぼっち!暗闇は絶望の印。離れ離れは死の前触れ。ひとりぼっちのお前はあの人の大好物。パクッとクッキーみたいに食べられちゃう!クスクスーー
「‥どういう意味だ‥?」
ーーああ‥
遅かったみたいだ。
ほら、見つかっちゃったね?クスクスーー
その微笑にゾッとする。
急いで、奴の視線の先に目を向ける。
「あーはは、
王子様‥
みーつけた」
濃い紫の長髪の男が、俺を見つめる。
細身のそいつは、死神のように俺に笑いかけた。
奴隷商 グレルーー
俺を‥俺は、こいつにっ、
「大丈夫‥ふふ‥震えなくて大丈夫‥大人しくしていれば何も痛くしない。ね?王子様はよく分かってるだろ?」
ーー大丈夫‥
たーっぷり可愛がってあげるからッ
ーーッ、やめろぉおおおおッ!?!?
おぞましい記憶が蘇り、身体中を掻き毟り消えてしまいたい衝動にかられる。
性の暴力とでも言うのだろうか。
口にすら出したくない記憶が押し寄せる。
気持ち悪い。汚らわしい。気持ち悪い気持ち悪いキモチワルイーー
「っ、はーー」
呼吸がうまく出来ない。
まず、い
まずい、まずい
動け。動くんだ。今なら簡単にこいつを殺せるだろう。
さあ、早くやれ。
早くッ
過去もろとも消し去れ。こいつさえ消せばッ
「ゔッーー!?」
刹那、動かなくなる身体。
腰の左側がやけに熱く痛む。
この症状は知っている。
奴隷痕ーー
契約書と血の奴隷痕の判が、奴隷を縛る死の首輪となる。
売られたその日に、
焼き付けられた痕ーー
まだ契約書が残っていたのかッ
「っ、‥」
くそっ
声、が
「さあ‥帰ろう‥依頼者から殺せと言われたんだけど‥ほら、あんな事件があっただろう?だから、お前は死んだことにしてあげたんだ‥。もう怯えなくて大丈夫‥帰ったらまた、可愛がってあげるからさッ!!!!」
笑う男に恐怖する。
いや、だ
いやだ
やめろ、
震えが止まらない中、ふとあの夜の事をおもいだした。
ああ‥
こんな事になるのなら、
あの時、死んでおけばよかったのにな‥
助けなんて
いらなかったんだーー
生きる意味も無かったのに
どうして俺はあの時‥
生きたいとーーそう、願ってしまったんだろうーー
近づいてくるそいつに、伸ばされる手に
俺は何もかもどうでもよくなって
そっと
目を閉じた
ただただ歩く。
心の奥底で、何かがぽっかりと空いたような
そんな虚無感が押し寄せる。
何に対して、こんなにも絶望しているのか
ただの1人の人間。
弱い人間。
俺を助けただけ。
助けられただけ。
その理由を知りたかった。
だけど、知らなければ良かったと今じゃ後悔している。
恩は返した。
あとはどうとでもなればいい。
野垂れ死ぬなり、拾われるなり好きにしろ。
俺には関係ない。弱者は強者に喰われる。それがこの世界のルールだ。欲まみれのルール。
ああ‥そういえば‥アイツの名前‥聞いていなかったな
俺に向けた笑顔と、あの子どもに向けた笑顔が交互になって脳内にこびりつく
もう‥関係の無いことか
「‥」
いつのまにか、人の騒めきは消えていて、
目の前に広がる大きな湖に足を止めた。
「ここ、は‥」
自然に囲まれ湖。
先程まで建物や人々で賑わう通りだったはず。
町から出てしまったのか‥?
ーーくすくす、可哀想‥ひとりぼっちだ!ひとりぼっち!!ーー
水の上で跳ねて遊ぶソレ。
今は相手をする気分ではないのだが‥ちょうどいい、聞きたいことがある。
「‥何故、お前達は俺を助ける‥?母と何か関係があるのか‥?」
ずっと聞きたかった疑問。
母から聞いたおとぎ話がこうも運良く俺を助け、彼らを動かす力を得た。
もしかしたら母も精霊と何か関係があったのかもしれない。
こいつらに人間と意思疎通できる思考があるのかすらわからないが、
言葉が通じるのなら何かしら聞き出してみよう。
湖に浮かぶ葉に座り込んだまま首をかしげるソレ。
ーー‥??さあ?何のこと?僕も皆んなも、そして彼も君を気に入ったんだよ!!ドロドロのぐちゃぐちゃ!!感情の大噴火だ!! クスクスーー
「、彼‥?お前らだけじゃないのか‥?」
葉の上で転げ回る精霊。
会話はできたものの、言葉の意味があまりよく理解できない。
彼とは、何のことだ‥?
ーーだけど、危ない、危ない。危険だ危険!あの子もお前もひとりぼっち。光と陰は2つで1つ。だから、彼は手を出せない。でも今はひとりぼっち。ひとりぼっち!暗闇は絶望の印。離れ離れは死の前触れ。ひとりぼっちのお前はあの人の大好物。パクッとクッキーみたいに食べられちゃう!クスクスーー
「‥どういう意味だ‥?」
ーーああ‥
遅かったみたいだ。
ほら、見つかっちゃったね?クスクスーー
その微笑にゾッとする。
急いで、奴の視線の先に目を向ける。
「あーはは、
王子様‥
みーつけた」
濃い紫の長髪の男が、俺を見つめる。
細身のそいつは、死神のように俺に笑いかけた。
奴隷商 グレルーー
俺を‥俺は、こいつにっ、
「大丈夫‥ふふ‥震えなくて大丈夫‥大人しくしていれば何も痛くしない。ね?王子様はよく分かってるだろ?」
ーー大丈夫‥
たーっぷり可愛がってあげるからッ
ーーッ、やめろぉおおおおッ!?!?
おぞましい記憶が蘇り、身体中を掻き毟り消えてしまいたい衝動にかられる。
性の暴力とでも言うのだろうか。
口にすら出したくない記憶が押し寄せる。
気持ち悪い。汚らわしい。気持ち悪い気持ち悪いキモチワルイーー
「っ、はーー」
呼吸がうまく出来ない。
まず、い
まずい、まずい
動け。動くんだ。今なら簡単にこいつを殺せるだろう。
さあ、早くやれ。
早くッ
過去もろとも消し去れ。こいつさえ消せばッ
「ゔッーー!?」
刹那、動かなくなる身体。
腰の左側がやけに熱く痛む。
この症状は知っている。
奴隷痕ーー
契約書と血の奴隷痕の判が、奴隷を縛る死の首輪となる。
売られたその日に、
焼き付けられた痕ーー
まだ契約書が残っていたのかッ
「っ、‥」
くそっ
声、が
「さあ‥帰ろう‥依頼者から殺せと言われたんだけど‥ほら、あんな事件があっただろう?だから、お前は死んだことにしてあげたんだ‥。もう怯えなくて大丈夫‥帰ったらまた、可愛がってあげるからさッ!!!!」
笑う男に恐怖する。
いや、だ
いやだ
やめろ、
震えが止まらない中、ふとあの夜の事をおもいだした。
ああ‥
こんな事になるのなら、
あの時、死んでおけばよかったのにな‥
助けなんて
いらなかったんだーー
生きる意味も無かったのに
どうして俺はあの時‥
生きたいとーーそう、願ってしまったんだろうーー
近づいてくるそいつに、伸ばされる手に
俺は何もかもどうでもよくなって
そっと
目を閉じた
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