126 / 134
第5.5章 番外編 鬼の記憶〜
鬼の記憶8
しおりを挟む
‥‥
「お前名前は‥?」
こいつと過ごして随分時が経った頃だ。
そんなことを聞いてきたこいつに不機嫌にその答えを返す。
「‥ラシル‥」
名付けは母方の祖父と聞いている。
由来はわからないが
ただ、それが祖国を意味するのだと教えられた。
「へぇ、かっけえ名前だな!」
キラキラと輝く双眼。
俺を見つめるその表情はいつも通りの笑顔で
「‥お前、は‥?」
何故が安心するその笑顔と同時に、溢れ出す疑問。
「っ!!お、俺!?お、俺、は‥えと‥」
俯く奴。モゴモゴと口を開いては閉じる。
言えないのか‥?それとも
無いのか‥?
「お、俺は‥」
刹那、顔を上げたアイツがとても悲しそうに俺を見つめて
初めて見た‥
俺の知らない表情‥
奴隷小屋に売られるくらいだ。
親に名などつけられなかったのかもしれない。
自分から聞いておいて、おかしな奴。
そいつの哀しげな瞳と目が合って、
ドキリと心臓が音を立てる。
キラキラと輝く潤んだ目。
黄色‥アレと同じ色
だったら、
「‥サル‥ファー‥」
途端呟いた言葉にぽけっと首をかしげる奴。
側に‥置いてやる‥。
特別だ。
お前は‥俺の特別
「‥え?今なんて?」
「ッ!!」
喜ぶだろうと、勝手に想像していた自分が恥ずかしくて、
そいつの、よく分からないといったそんな表情に俯く。
最悪だ‥
ーー母様。大切ってどんな意味?
ーーいつか、好きな子ができたらって意味よ
最悪だッ
「ッ、うるさい!サルッーーー」
「っ!?ちょ!?痛いッ!?なんで蹴るの!?酷え!!」
騒ぐそいつが涙目で俺を見つめて、
俺だけを捉えたーー
ぞくりと身体を走る高揚に気分が良くなる。
お前にその名と、側にいる許可を与える。
そのかわり、
俺から離れることは許さない。
「さっさと行くぞ‥サル」
名を呼ぶたびに感じる独占感に頬が緩んで、その顔を隠すように先を歩いた。
ーーとっても綺麗な黄色い石でしょ?キラキラと輝いて光を放つから、光の石って意味もあるの‥この石の名はね‥
サルファー。ーーー
「お前名前は‥?」
こいつと過ごして随分時が経った頃だ。
そんなことを聞いてきたこいつに不機嫌にその答えを返す。
「‥ラシル‥」
名付けは母方の祖父と聞いている。
由来はわからないが
ただ、それが祖国を意味するのだと教えられた。
「へぇ、かっけえ名前だな!」
キラキラと輝く双眼。
俺を見つめるその表情はいつも通りの笑顔で
「‥お前、は‥?」
何故が安心するその笑顔と同時に、溢れ出す疑問。
「っ!!お、俺!?お、俺、は‥えと‥」
俯く奴。モゴモゴと口を開いては閉じる。
言えないのか‥?それとも
無いのか‥?
「お、俺は‥」
刹那、顔を上げたアイツがとても悲しそうに俺を見つめて
初めて見た‥
俺の知らない表情‥
奴隷小屋に売られるくらいだ。
親に名などつけられなかったのかもしれない。
自分から聞いておいて、おかしな奴。
そいつの哀しげな瞳と目が合って、
ドキリと心臓が音を立てる。
キラキラと輝く潤んだ目。
黄色‥アレと同じ色
だったら、
「‥サル‥ファー‥」
途端呟いた言葉にぽけっと首をかしげる奴。
側に‥置いてやる‥。
特別だ。
お前は‥俺の特別
「‥え?今なんて?」
「ッ!!」
喜ぶだろうと、勝手に想像していた自分が恥ずかしくて、
そいつの、よく分からないといったそんな表情に俯く。
最悪だ‥
ーー母様。大切ってどんな意味?
ーーいつか、好きな子ができたらって意味よ
最悪だッ
「ッ、うるさい!サルッーーー」
「っ!?ちょ!?痛いッ!?なんで蹴るの!?酷え!!」
騒ぐそいつが涙目で俺を見つめて、
俺だけを捉えたーー
ぞくりと身体を走る高揚に気分が良くなる。
お前にその名と、側にいる許可を与える。
そのかわり、
俺から離れることは許さない。
「さっさと行くぞ‥サル」
名を呼ぶたびに感じる独占感に頬が緩んで、その顔を隠すように先を歩いた。
ーーとっても綺麗な黄色い石でしょ?キラキラと輝いて光を放つから、光の石って意味もあるの‥この石の名はね‥
サルファー。ーーー
0
お気に入りに追加
1,847
あなたにおすすめの小説
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。


新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる