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第5.5章 番外編 鬼の記憶〜
鬼の記憶8
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‥‥
「お前名前は‥?」
こいつと過ごして随分時が経った頃だ。
そんなことを聞いてきたこいつに不機嫌にその答えを返す。
「‥ラシル‥」
名付けは母方の祖父と聞いている。
由来はわからないが
ただ、それが祖国を意味するのだと教えられた。
「へぇ、かっけえ名前だな!」
キラキラと輝く双眼。
俺を見つめるその表情はいつも通りの笑顔で
「‥お前、は‥?」
何故が安心するその笑顔と同時に、溢れ出す疑問。
「っ!!お、俺!?お、俺、は‥えと‥」
俯く奴。モゴモゴと口を開いては閉じる。
言えないのか‥?それとも
無いのか‥?
「お、俺は‥」
刹那、顔を上げたアイツがとても悲しそうに俺を見つめて
初めて見た‥
俺の知らない表情‥
奴隷小屋に売られるくらいだ。
親に名などつけられなかったのかもしれない。
自分から聞いておいて、おかしな奴。
そいつの哀しげな瞳と目が合って、
ドキリと心臓が音を立てる。
キラキラと輝く潤んだ目。
黄色‥アレと同じ色
だったら、
「‥サル‥ファー‥」
途端呟いた言葉にぽけっと首をかしげる奴。
側に‥置いてやる‥。
特別だ。
お前は‥俺の特別
「‥え?今なんて?」
「ッ!!」
喜ぶだろうと、勝手に想像していた自分が恥ずかしくて、
そいつの、よく分からないといったそんな表情に俯く。
最悪だ‥
ーー母様。大切ってどんな意味?
ーーいつか、好きな子ができたらって意味よ
最悪だッ
「ッ、うるさい!サルッーーー」
「っ!?ちょ!?痛いッ!?なんで蹴るの!?酷え!!」
騒ぐそいつが涙目で俺を見つめて、
俺だけを捉えたーー
ぞくりと身体を走る高揚に気分が良くなる。
お前にその名と、側にいる許可を与える。
そのかわり、
俺から離れることは許さない。
「さっさと行くぞ‥サル」
名を呼ぶたびに感じる独占感に頬が緩んで、その顔を隠すように先を歩いた。
ーーとっても綺麗な黄色い石でしょ?キラキラと輝いて光を放つから、光の石って意味もあるの‥この石の名はね‥
サルファー。ーーー
「お前名前は‥?」
こいつと過ごして随分時が経った頃だ。
そんなことを聞いてきたこいつに不機嫌にその答えを返す。
「‥ラシル‥」
名付けは母方の祖父と聞いている。
由来はわからないが
ただ、それが祖国を意味するのだと教えられた。
「へぇ、かっけえ名前だな!」
キラキラと輝く双眼。
俺を見つめるその表情はいつも通りの笑顔で
「‥お前、は‥?」
何故が安心するその笑顔と同時に、溢れ出す疑問。
「っ!!お、俺!?お、俺、は‥えと‥」
俯く奴。モゴモゴと口を開いては閉じる。
言えないのか‥?それとも
無いのか‥?
「お、俺は‥」
刹那、顔を上げたアイツがとても悲しそうに俺を見つめて
初めて見た‥
俺の知らない表情‥
奴隷小屋に売られるくらいだ。
親に名などつけられなかったのかもしれない。
自分から聞いておいて、おかしな奴。
そいつの哀しげな瞳と目が合って、
ドキリと心臓が音を立てる。
キラキラと輝く潤んだ目。
黄色‥アレと同じ色
だったら、
「‥サル‥ファー‥」
途端呟いた言葉にぽけっと首をかしげる奴。
側に‥置いてやる‥。
特別だ。
お前は‥俺の特別
「‥え?今なんて?」
「ッ!!」
喜ぶだろうと、勝手に想像していた自分が恥ずかしくて、
そいつの、よく分からないといったそんな表情に俯く。
最悪だ‥
ーー母様。大切ってどんな意味?
ーーいつか、好きな子ができたらって意味よ
最悪だッ
「ッ、うるさい!サルッーーー」
「っ!?ちょ!?痛いッ!?なんで蹴るの!?酷え!!」
騒ぐそいつが涙目で俺を見つめて、
俺だけを捉えたーー
ぞくりと身体を走る高揚に気分が良くなる。
お前にその名と、側にいる許可を与える。
そのかわり、
俺から離れることは許さない。
「さっさと行くぞ‥サル」
名を呼ぶたびに感じる独占感に頬が緩んで、その顔を隠すように先を歩いた。
ーーとっても綺麗な黄色い石でしょ?キラキラと輝いて光を放つから、光の石って意味もあるの‥この石の名はね‥
サルファー。ーーー
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