鬼畜な悪党の下っ端に転生したのだが、頑張って生き抜きたい

花村 ネズリ

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第5.5章 番外編 鬼の記憶〜

鬼の記憶4

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バチバチと火花が目の前で飛び回り、
赤い光の粒は、楽しそうにそれに触れたり、
投げ飛ばしたりして遊んでいる。


やっとの事で辿り着いた小屋は冷え切っていて

寒いと呟くと、精霊達がクスクスと笑い、
急に燃えあがったかと思うと、
暖炉のように、焚き火のように集まって俺たちを温めた。


ひと段落すると
傷だらけの身体はもう動かなくなって、
へたりとその場に座り込む。




「‥」


血の匂いはもうしない。

だけど、感触が生々しく脳内にこびりつく。



叫び声


目線


肉の抉れる感覚


いつまでも冴える頭は、逃げられなかった恐怖と過去の恐ろしい記憶までもを映し出す。


力が抜けて、それでも尚目を閉じる事が恐ろしくて、どこかに視線を定めようと思い瞼を必死にあげた。

映るのは
焚き火の近くの壁にもたれさせた少年。
ぐっすりと眠る少年からは、息の音が聞こえない。


死んだ、のか‥?


確かめたいが、身体が動かない。
とにかく、ジッと奴の瞳が開くまで待つことにした。








「んん‥」



動いた‥

パチリとタレ目気味の黄色の様な不思議な瞳が開く。

生きてる‥



ほっと安堵して、眠りに入ろうとする身体とは別に、冴え続ける頭。


だめだ。おかしくなりそうだ。


何かボソボソと呟いて窓を見つめていた少年が、ふと俺を見つめた。




「寝てるし‥」




ポツリとそんな事を言って、溜息をつく奴。
寝ていない。眠ることができない。
身体が痛くて動けなくて、ただ俯いて動かないでいるから、眠ってるように見えたんだろう。



「さみぃ‥」



刹那、そんな事を呟いて
立ち上がる少年。


‥?




ゆっくりと近づいてくる音がして
俺は警戒した。

なにをする気だッ

くそ、動け‥
やられる前に‥やらないと‥



折角、逃げられたのにっ
こんなところでくたばってたまるかッーー


「よいしょっと」

「っ!?」


ぶわっと暖かくなる身体に固まる。
‥毛布、だろうか?
何かを俺にかけて、そして奴がその隣に潜り込んできた。


ピタリとくっつく身体。
なに、


「お、‥子供体温。うし、もう何でもいいや。寝て起きてからまた考えよう。色々ありすぎて疲れた‥おやすみ‥って俺誰に言ってんだよ寂しいわっ、‥はぁ‥寝よ」



グイッと頭を奴の肩に乗せられて、俺は訳もわからず混乱した。


なに、が、

なんなん、だ


こいつ


気づけばグゥーっと煩いイビキが聞こえてきて、
温かいその熱と、包まれるような心地よさにほんの一瞬だけ目を閉じる。





ハッと目を開けたのは、朝を知らせる日の出と共に鳴く鳥の声が聞こえたからだった。
気づけば俺は眠っていたようで
また困惑する。


あんなに恐れていた事も忘れて眠るとはよっぽど疲れていたに違いない。


隣で口を開けて幸せそうに眠るこいつ。
関係ない。

こいつなんて関係ない‥。


こいつのお陰だなんて、絶対ありえない。



痛みが引いている身体を確認する。
昔から回復能力は高い方だった。



動けるーー


遠くに行かなくては


もっと、



もっとーー


そうだ

こんな奴置いていこう。
邪魔なだけ。足手まとい。なら必要ない。

答えはもういい。
早く離れたい。一度助けられたが、俺もこいつをここまで連れてきたんだ。それでいいだろ。



さあ、はやく



立ち上がろうと足に力を入れた時だ




「ぐがっ!?、んあ?‥、
もう、朝、か‥?‥、」



「、」



イビキが変に止まって、その勢いでか虚ろげな瞳がゆっくりと開く。




「ん?おはよ?」




「っ!?ーー」


太陽の光に当たる赤茶色の髪が、
ニコリと俺に笑いかけた


途端

ドキリと跳ねる心臓。
ドクドク、


ドクドク‥



ふにゃりと目を細めて、まだ眠いのか俺の肩に頭を預け擦り寄ってくる少年。





「‥、‥






はよ‥」


「んー‥」

‥、

太陽みたいな、匂い‥


ッ、

‥こいつ、は‥こいつ、はッ




冷静になれ。感情のままに動くな。
‥心臓を刺されても生きているし、出血も無い‥
‥そうだ、何かに役に立つかもしれないじゃないか‥


‥道中囮にでもすればいい‥


使えるまで置いておいて


それから捨てればいいんだ


俺が助かるため‥


だから




だから‥




力を抜いた足。
赤茶色のくせっ毛に擦り寄ってその温度を確かめた。




こいつは

連れて行く‥
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