鬼畜な悪党の下っ端に転生したのだが、頑張って生き抜きたい

花村 ネズリ

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第5.5章 番外編 鬼の記憶〜

鬼の記憶

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ラシルsideーーー


「母さん、その石、何故いつも身につけてるの?」


いつか母に問いかけた言葉。
母の胸元で光る黄色い石が埋め込まれたネックレス。




「ん?そうね‥これはね、母さんの故郷の石なの。大事な人から貰ったものよ‥」


「大事な人‥?」


「うん。とってもとっても大事な人。」


「‥母さん‥」



聞いた事がある。
母には昔、将来を誓った相手がいたのだと

父に見初められ、この国に連れ去られる前の話だ




「ラシル、いつか大切な人が出来たら、この石をプレゼントするのよ?母さんの国の伝統なの‥とっても特別な。‥どんな時でも私には、


貴方が永遠に欠かせないって印ーーー」









永遠に‥





永遠に側に、か






湿気たカビと鉄の生臭い匂いで鼻が効かなくなって
痛みと苦しさで感覚も無くなって



考えるのは絶望と幸せだった頃の記憶の繰り返しだった。





母が殺されてもうどれほどの時が過ぎたのだろう。



牢獄に入れられ、奴隷小屋に売られて
拷問され続けた日々よりも、
母の顔さえ思い出せなくなってきた事に
堕ちてしまいそうになる。




その日は、いつもより騒がしくて
感情の出し方さえ分からなくなってしまった自分を見てニヤリと笑う男。


気持ちの悪いその表情ですら、何も感じない。
そろそろ、死ぬのだろうか?
そんな事を考えながら、
こちらに近づいてくる男をぼーっと眺めていた。


頭を踏みつけられ、

ナイフを突きつけられ

いつも通りの暴力



だけど、その男の目は死の色をしていて
俺はやっとかと、そっと目を閉じた。










「ッやめろぉおおおお!!」






刹那、


叫び声と共に見えたのは、



光だ。





闇の中で、一本の光が灯る。



グサっーーー

「ウグッ‥」


目を開けると、
俺をかばって倒れる少年の姿。


なにが、おこった‥?


「っ、この!クソガキがっ!!」

唾を飛ばし、少年を殴りつける男。少年の心臓に刺さっているナイフにゾッとする。



「グハッーー」




昨日、俺と同じ小屋に入れられた子ども。
感情のない人形のようだったのに、
今日はやけにうるさくて狂っているものだと思っていた。




「、ッおま、え‥ど、して‥」

 

俺を、助けたのか‥?




なぜ

俺を


俺のせい、なのに


俺が、生まれてこなければ、こんな事には


いや、違う。




無意味な事


全ては自らの意思


父が母に惚れた。


母は断りもせず金の為に嫁いだ。



その選択が犯した罪に俺は関係ない。


その結果が残酷だとしても、
己のせいなのだ。




欲だ。醜い欲。



汚くて汚くてしょうがない。



こいつだって




俺のせいじゃない




お前のせいだーーー




また闇に堕ちる


下へ下へと




もう、
戻れな‥



「‥はは、‥‥怪我は‥ない、か‥少年‥?ゔ‥ッーーー」





「ッ!!ーーーー」



たった一言。



それだけ



それだけなのに‥



欲のない声に、目を見開く。


俺を利用するのではなく、

俺のせいにするのではなく




俺の心配をしてるーー




分からない










少年が俺に笑いかけた




俺に笑いかけたんだ


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