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第5章 再開編
素直な解答
しおりを挟む「っ、そ、そろそろ離れろ!」
恥ずかしさで死にそうになって居たたまれなくなった俺は、大きな声でそう叫んだ。
「‥わかった」
「え、!?」
「‥」
予想外の展開。
すんなりと、俺を離した喜一。
素直だ‥
思わず声を上げて反応してしまったが、
どこか虚ろげな目に心配になる。
「き、喜一‥?」
「‥?なに?」
俺を呼ぶ声は全てを拒絶しているような、嫌な温度を感じて
思わず喜一の手を握り、その存在を離さないように必死で繋ぎ止めた。
「ッ、大丈夫、だよな‥?」
「?」
「お前が素直だと‥なんか‥調子狂うというか‥」
「ずっとこのままだと‥光は俺から離れていかないか‥?」
「へ?」
不意に投げかけられた問いに唖然とする。
それって、
どういう、意味だ
「え、と」
「‥、忘れろ‥冗談だから‥」
とてもそうには見えない。
手が届かないような闇の底に
喜一が落ちてしまいそうで
俺はぎゅっと冷たい手を両手で包み込んで、
喜一と目を合わせる。
「‥喜一、」
「光‥?」
「キャッチボール‥またしてくれるか?」
「うん。」
「ずっと‥ずっと‥おじいちゃんになってもか?」
「ああ」
簡単な‥適当な返事‥だけど‥
当たり前のように、そう返事をしてくれるものだから、俺は舞い上がっちまう‥
溢れ出す感情を乗せてニカリと笑い、
その手を胸に抱きしめた。
「なら、ずっと一緒に、居なきゃだろ?」
目を見開く喜一の目には光が灯って
その温かい感情に、俺は目を細める。
この時、
何かが身体からすっと抜けるような‥何かを忘れているような、そんな虚無感が一瞬胸を過ぎ去ったが、俺は目の前の事に夢中で、気にもならなかった。
「ッ、それ、意味わかって言ってんの?」
少しして、瞳を揺らした喜一がそう呟く。
「意味?」
「‥っ、」
首をかしげると同時にまた抱き寄せられて、
その焦ったような、動揺しているような、熱くて溶けそうなそんな視線に戸惑う。
さっきから、なんなんだよっ情緒不安定かっての!?
「ッ、ちょ!?喜一近えって!」
離れようと、握りしめていた手を離して胸を押すと、そのまま逆に握り込まれてしまう。
至近距離で喜一の薄い唇が開いて、
冷たい手が俺の頬に触れる。
「好きだーー」
「ッ、す!?」
「どうしようもねえくらい、お前が好きーー」
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