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第5章 再開編

久々の会話

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ラシルを引っ張りながら歩く。
気づけば
いつのまにか、そこは花の匂いであふれかえっていて
微かに水の音がするその河原の上で、立ち止まった。








「‥記憶を無くしたって‥どうして‥」


後ろを振り返らず、
握った体温の高い手もそのままで、俺は尋ねる。




「わからない‥、詳しくは聞いていない‥」


ラシルの声が少し低い‥
嘘‥

本当は、聞いているんだろう。
なぜ記憶を失ったのか、自分は何者なのか‥
それでも、


信じられないんだな‥。

何故だ‥何故こんなことに
俺は頭を抱える。
組織はどうなったんだ?
何故この街にいる‥せめて、ここに彼が居てくれたら‥




「犬くんは‥今どこに?」

「‥?」

首をかしげるラシル。
犬じゃ、分からない‥?


「、ああ、えっと‥アサヒくんは、一緒なのか?」

「アサヒとも知り合いか?今は仲間と共に、ギルドで宿賃等を稼いでいる。」



アサヒ‥呼び捨てにしているんだな‥

なんだ、‥胸んとここう、ムズムズする‥



「嫌な事とか‥苦しいことはされてねえか?」

「‥ああ」

「飯も好きなだけ食って、風呂入ってベッドで眠ってるか?不自由ないか?」

「ああ」

「そう、か‥」


記憶を無くしていたとしても、
捕らわれたり、拷問されたりなんて事はなさそうだ。
何不自由なく、普通の暮らしをしてる‥よかった


生きていけるーー


ちゃんと、

飯も食って
風呂入って眠って
住む場所だってある。
誰かに愛されてーー
俺が居なくても




大丈夫、なんだ‥

ポカリと胸に穴が空いたような虚しさが襲う。



久しぶりの、感覚だ




「‥あの‥俺の事を、教えてくれないか‥?俺はどんな人間だった?お前と俺はどんな関係だったんだ?」


黙っていると、
急に強く引っ張られよろける。
続けざまにズイッと迫られて、逆に質問攻め。
キラキラ光る宝石みたいな目で見られるもんだから、居た堪れない。




「お、おいっ、近えよ‥状況が分かんねえ今、無闇に喋れねえっての‥。お前が危険に晒されたら俺はっ」


「‥アンタは、どうするんだ?」


「っ、」



ラシルとの距離がまた近くなる。
腕から肩に移動した腕。
俺を逃さないようにか、硬く固定されて、
身動きが取れない。


頭の隅に追いやられた恋の記憶が、
やけに鮮明に脳に焼きつく。


答えたい。
心配なのだと。お前が傷つく事は、嫌なのだと


だけど



もし、忘れた方が


ラシルの幸せに繋がるのならば‥?



手のひらが汗ばむ。
嫌な空気だ。息がしにくい。



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