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第6章 選択編
狂アイ
しおりを挟むアサヒsideーーー
バンッ
「ハァ‥ハァッ、なん、で‥」
自室の扉を力強く閉める。
壊れそうなその脆い扉は、俺の心のようで頭を掻き乱したい衝動に駆られた。
ふと、全身鏡が目に入り、そこに映る人物にゾッとする。
悲しみに飲み込まれたような暗い瞳は、俺を責めるように見つめていて、思わず後ずさりしてしまう。
「ッ、お、俺達はっ、上手くやっているんです!!邪魔、しないでくださいッ‥貴方はもう、死人なんですからっ!!」
焦りと冷や汗で体温が下がって、息苦しい。
俺が殺した。あの人はそれに気づいたのかもしれない。思い出したのかもしれない。どうしたらいい。どう弁解したら‥。俺は、貴方のためにこの人を‥貴方の為だったんだ。
寂しければ支えてあげる。いつも隣にいてあげられる。あの人みたいに弱くない。俺は貴方の役に立てる。そうでしょ?ラシルさん。
もっと俺を求めて。俺だけを、、他なんて忘れたままでいいじゃないか。
ラシルさん、貴方が好きだーー
胸に広がる温かい気持ち。
誰にも負けない。アンタにもッ
キッと睨みつけた先に、涙を流すその人がいて
「‥ーーー」
その儚げな美しさに、沸々と怒りが溢れ出した。
やめろ。そんな顔でラシルさんを誘惑してッ俺から遠ざけてッ!何もできないくせに、ラシルさんを見捨てたくせにッ
「ッ、消えろって言ってんだろっ!!ーーー」
パリンッと破れたガラスが飛び散って、
ひび割れたその向こうで、その人が口を開いて、微笑んだのが見えた。
君は愛されないーーー
「は‥?」
なに、言って
怪しく微笑み消えたその人。
胸騒ぎがして、心臓が嫌な音を立てる。
ラシルさんに、もう一度、会いに、いこう。
そうだ、そうしよう!
俺の気のせいだ。こんな幻に騙されてたまるか。ラシルさんは俺を必要としてる。さっきは本当に体調が悪かっただけ。なら、俺が看病しないと
先程来た道を引き返す。
途中で、ユウ達とすれ違ったけれど、俺は無我夢中でその部屋へと向かっていた。
「ラシルさんっ」
ゆっくりとドアを開ける。
ベッドの上で何か考えている表情をしたラシルさんが、俺を見て眉をひそめた。
「‥何の用だ。1人にしてくれと言ったはずだが‥」
「っ、俺、心配で‥貴方の、側にいたいんです。」
キュッと握った手は暖かくてドキドキする。
熱がこもった身体。この人に触れたい。もっと、もっと‥
「はぁ‥なら、俺が出て行く‥」
「っ、‥えーーー」
払われた腕に唖然とする。
な、ぜ
ダメだダメだダメだダメだダメだダメだ。
どうしてそんなこと言うの
ここは貴方の居場所だ。
貴方のいる場所なんだ。
貴方は俺が居ないと不安でしょ?
隣にいないと、近くにいないと眠れなかったじゃないか!
俺は扉へ向かおうとしたラシルさんの背に抱きつく。
「いや、だ‥行かないでラシルさん‥俺、本当は‥貴方の恋人なんですッ。ずっと隠しててごめんなさい!記憶が無いから混乱すると思って言えなかったんです‥だから、貴方のそばにいたい。行かないで‥俺のそばに居て?
好き。大好き。愛してるんです。貴方をあいして」
「触るなーーー」
「うわっ!!?イッ、、、」
突き飛ばされ拍子に、腕をグネッてしまう。
苦痛の表情をする俺に、物ともせず冷たい表情で見下ろすラシルさん。
心の中の糸のようなものが、プツリと切れた音がした。
こんなの、おかしい。
俺を否定するなんて、間違ってる。
だって、そうでしょ?
俺が貴方を幸せにするんだから。
バタンと静かに閉まるドアは虚しく響いて
だけど俺は
もう見えなくなってしまった背中を見つめ続けていた。
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