84 / 134
第4章 魔王城編
衣食住
しおりを挟む
‥
「食に関してはさっき説明した通りです。また、当分は主人の部屋でおすごしください。お召し物もそちらで用意しております。」
部屋を出て、長ーい廊下を進む。
もう道なんて覚えてない。凄く不安です。
「了解っす~。で、次はどこ行くんだ?」
「働かざるもの食うべからず。それがここのルールです。次は、ここでの光様の、お仕事を探しましょうか。」
「仕事‥?」
魔王城での仕事って、凄い危険な香りがプンプンするのだが‥
俺っち、弱いの分かってるよねこの人‥
ねえ、分かってるよな‥?‥、魔物の群れの中に入れたりしないよなあッ
「と、なんですか?」
俺が恐怖の妄想を膨らませていると、
兵の格好をしたオークらしき男が、青に近づく。
少し警戒したものの、青を見てガタガタ震える姿は、俺と同じ類だと判断し、同情の目で彼を見つめた。
いったいこの人になにしたんだよ青‥
「あ、あの‥た、頼まれてたものです」
「‥これは、何ですか」
「だ、だから!頼まれていた、電魔法ミキサーというものです!」
ああ、今主婦達の間で流行りの、スムージーを作れるアレか。
でも、彼が持ってるものって‥
「‥それシーサーだよな」
うん。どう見ても綺麗な海を見ながら、家の屋根や玄関で守り神してる彼等だ。
懐かし
この世界にもあるんだな。
確か、東には地球に似た文化が発展している里があるらしいから、きっとそこで作られたものだろうな‥
うん、ミキサーではない。
「‥」
「あれ、なんかまずかった‥?」
俯いて、こちらもわなわな震える青に不安しかない。
「貴方は‥また」
「ひ、ごめんなさあああああい」
青の逆鱗と共に、バタバタと走り去っていく兵士を見つめて、俺は首を傾げた。
「‥なんだ?」
「はあ‥買出し係の失態です‥」
「買出し係?」
「魔物の類だといっても、僕らも人間と同じものを食べますし、優れているものであれば、その道具を使用したいのです。調達する事も可能ですが、やはり人間界の食事の方が見た目や味は美味だし、僕達では思いつかないような便利な道具も多いから、毎週買出し係の者が、人間界へと人の姿に化けて食料の調達に行くんだ。だけど、ここのものは人間界には皆詳しくないが故にッ騙されて高額な壺やらなんやらを持ち帰ってくるしッ!それに、頼んだものの種類が分からず、別の物を買ってくるわッ‥本当に使えないッ‥」
後半、表情が鬼のようになる青がとても恐ろしい。
でもまあ、魔王城といっても、こうやって窓から見る景色も普通だし。
一部を除いて、だけど‥
あまり人間の世界と変わらない生活をしているんだろうな。意外だけど知らない事を知れたのは面白い。
「あ、あー‥そうなのか‥‥俺も、魔物の事なんて分からねえし、きっとアイツも苦労したんだろうな‥ミキサーぐらいなら人気のメーカー知ってるし、代わりに俺が行ってやりてえぐれえだよ。」
「っ!‥光様は‥人間だから化ける必要もないし‥商品の価格や相場、種類や流行りには詳しいのですね‥?」
急にぐわっと俺の方を振り返るのやめて。怖い。
「ま、まあ‥組織でもほぼ家事当番だったし‥おばちゃんズと世間話できるぐらいには詳しいと思うけど‥」
「そうだ‥それがいい。光様、貴方を買出し係に推薦します。ただ、主人には内緒で」
名案だと、1人盛り上がる青に俺はただただ頷くことしか出来なかった。
「お、おお?分かった。そんな事でいいならお安い御用だ。」
「では、決まりですね!」
ニカリと笑う顔は可愛らしい。
歳は俺達より下に見えるのに、
言動がしっかりしてるから、よく分からなかった。
だけど、
こうしてニコニコしてると見た目的な年相応に見えて安心する。
「なんだか機嫌がいいな?」
「っ!そ、それはまあ‥人間界の道具は面白いですから!試してみたいものが沢山あるのです!」
「はは、そうかよ。俺も頑張って良い商品探してくるよ。それにしても、喜一に内緒って大丈夫なのか?」
「‥心配ありませんよ。今主人は仕事で手一杯ですから。それに全て片付くまで、書斎から出られない呪いをかけましたし」
「お前‥見た目によらず恐ろしいよな」
「これくらいしないと、魔王の右腕は勤まりません」
「右腕、か」
自分の事を話さなかったこいつが、ふとそんな事を言う。
もっと聞きたくて俺は視線を向けるが、
しまったという顔をしてすぐさままたあの真顔に戻ってしまった。
「っ、いえ、今のは忘れてください。仕事は週に一度、今週はもう終えましたから来週からで結構です。本日は城の内部を把握しておいてください。明日の予定はまた後ほど‥それでは僕は仕事がありますので」
早口で喋り終わると、早々に何処かへ転移でもしたのだろう。
「へ、おい、まだ聞きたい事がって‥行っちまった‥つったって‥どこをどう行けばいいんだよ‥沢山やる事があるって言ってたのはなんだったんだ‥全く‥はあ‥」
消えてしまった青がいた場所を見てため息をつく。
こらからどうしようか‥
喜一の部屋を探すのもいいが、
なんだか気まずくて戻りたくない気もする。
そういえば、さっき青と廊下を歩いてる時、窓の外に庭園のようなものが見えた。
そこに、行ってみるか‥
少し、1人で考える時間がほしい
「食に関してはさっき説明した通りです。また、当分は主人の部屋でおすごしください。お召し物もそちらで用意しております。」
部屋を出て、長ーい廊下を進む。
もう道なんて覚えてない。凄く不安です。
「了解っす~。で、次はどこ行くんだ?」
「働かざるもの食うべからず。それがここのルールです。次は、ここでの光様の、お仕事を探しましょうか。」
「仕事‥?」
魔王城での仕事って、凄い危険な香りがプンプンするのだが‥
俺っち、弱いの分かってるよねこの人‥
ねえ、分かってるよな‥?‥、魔物の群れの中に入れたりしないよなあッ
「と、なんですか?」
俺が恐怖の妄想を膨らませていると、
兵の格好をしたオークらしき男が、青に近づく。
少し警戒したものの、青を見てガタガタ震える姿は、俺と同じ類だと判断し、同情の目で彼を見つめた。
いったいこの人になにしたんだよ青‥
「あ、あの‥た、頼まれてたものです」
「‥これは、何ですか」
「だ、だから!頼まれていた、電魔法ミキサーというものです!」
ああ、今主婦達の間で流行りの、スムージーを作れるアレか。
でも、彼が持ってるものって‥
「‥それシーサーだよな」
うん。どう見ても綺麗な海を見ながら、家の屋根や玄関で守り神してる彼等だ。
懐かし
この世界にもあるんだな。
確か、東には地球に似た文化が発展している里があるらしいから、きっとそこで作られたものだろうな‥
うん、ミキサーではない。
「‥」
「あれ、なんかまずかった‥?」
俯いて、こちらもわなわな震える青に不安しかない。
「貴方は‥また」
「ひ、ごめんなさあああああい」
青の逆鱗と共に、バタバタと走り去っていく兵士を見つめて、俺は首を傾げた。
「‥なんだ?」
「はあ‥買出し係の失態です‥」
「買出し係?」
「魔物の類だといっても、僕らも人間と同じものを食べますし、優れているものであれば、その道具を使用したいのです。調達する事も可能ですが、やはり人間界の食事の方が見た目や味は美味だし、僕達では思いつかないような便利な道具も多いから、毎週買出し係の者が、人間界へと人の姿に化けて食料の調達に行くんだ。だけど、ここのものは人間界には皆詳しくないが故にッ騙されて高額な壺やらなんやらを持ち帰ってくるしッ!それに、頼んだものの種類が分からず、別の物を買ってくるわッ‥本当に使えないッ‥」
後半、表情が鬼のようになる青がとても恐ろしい。
でもまあ、魔王城といっても、こうやって窓から見る景色も普通だし。
一部を除いて、だけど‥
あまり人間の世界と変わらない生活をしているんだろうな。意外だけど知らない事を知れたのは面白い。
「あ、あー‥そうなのか‥‥俺も、魔物の事なんて分からねえし、きっとアイツも苦労したんだろうな‥ミキサーぐらいなら人気のメーカー知ってるし、代わりに俺が行ってやりてえぐれえだよ。」
「っ!‥光様は‥人間だから化ける必要もないし‥商品の価格や相場、種類や流行りには詳しいのですね‥?」
急にぐわっと俺の方を振り返るのやめて。怖い。
「ま、まあ‥組織でもほぼ家事当番だったし‥おばちゃんズと世間話できるぐらいには詳しいと思うけど‥」
「そうだ‥それがいい。光様、貴方を買出し係に推薦します。ただ、主人には内緒で」
名案だと、1人盛り上がる青に俺はただただ頷くことしか出来なかった。
「お、おお?分かった。そんな事でいいならお安い御用だ。」
「では、決まりですね!」
ニカリと笑う顔は可愛らしい。
歳は俺達より下に見えるのに、
言動がしっかりしてるから、よく分からなかった。
だけど、
こうしてニコニコしてると見た目的な年相応に見えて安心する。
「なんだか機嫌がいいな?」
「っ!そ、それはまあ‥人間界の道具は面白いですから!試してみたいものが沢山あるのです!」
「はは、そうかよ。俺も頑張って良い商品探してくるよ。それにしても、喜一に内緒って大丈夫なのか?」
「‥心配ありませんよ。今主人は仕事で手一杯ですから。それに全て片付くまで、書斎から出られない呪いをかけましたし」
「お前‥見た目によらず恐ろしいよな」
「これくらいしないと、魔王の右腕は勤まりません」
「右腕、か」
自分の事を話さなかったこいつが、ふとそんな事を言う。
もっと聞きたくて俺は視線を向けるが、
しまったという顔をしてすぐさままたあの真顔に戻ってしまった。
「っ、いえ、今のは忘れてください。仕事は週に一度、今週はもう終えましたから来週からで結構です。本日は城の内部を把握しておいてください。明日の予定はまた後ほど‥それでは僕は仕事がありますので」
早口で喋り終わると、早々に何処かへ転移でもしたのだろう。
「へ、おい、まだ聞きたい事がって‥行っちまった‥つったって‥どこをどう行けばいいんだよ‥沢山やる事があるって言ってたのはなんだったんだ‥全く‥はあ‥」
消えてしまった青がいた場所を見てため息をつく。
こらからどうしようか‥
喜一の部屋を探すのもいいが、
なんだか気まずくて戻りたくない気もする。
そういえば、さっき青と廊下を歩いてる時、窓の外に庭園のようなものが見えた。
そこに、行ってみるか‥
少し、1人で考える時間がほしい
0
お気に入りに追加
1,847
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。


主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる