鬼畜な悪党の下っ端に転生したのだが、頑張って生き抜きたい

花村 ネズリ

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第4章 魔王城編

衣食住

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「食に関してはさっき説明した通りです。また、当分は主人の部屋でおすごしください。お召し物もそちらで用意しております。」



部屋を出て、長ーい廊下を進む。
もう道なんて覚えてない。凄く不安です。




「了解っす~。で、次はどこ行くんだ?」



「働かざるもの食うべからず。それがここのルールです。次は、ここでの光様の、お仕事を探しましょうか。」



「仕事‥?」



魔王城での仕事って、凄い危険な香りがプンプンするのだが‥
俺っち、弱いの分かってるよねこの人‥
ねえ、分かってるよな‥?‥、魔物の群れの中に入れたりしないよなあッ




「と、なんですか?」


俺が恐怖の妄想を膨らませていると、
兵の格好をしたオークらしき男が、青に近づく。

少し警戒したものの、青を見てガタガタ震える姿は、俺と同じ類だと判断し、同情の目で彼を見つめた。

いったいこの人になにしたんだよ青‥



「あ、あの‥た、頼まれてたものです」




「‥これは、何ですか」



「だ、だから!頼まれていた、電魔法ミキサーというものです!」


ああ、今主婦達の間で流行りの、スムージーを作れるアレか。
でも、彼が持ってるものって‥


「‥それシーサーだよな」


うん。どう見ても綺麗な海を見ながら、家の屋根や玄関で守り神してる彼等だ。
懐かし

この世界にもあるんだな。
確か、東には地球に似た文化が発展している里があるらしいから、きっとそこで作られたものだろうな‥

うん、ミキサーではない。





「‥」


「あれ、なんかまずかった‥?」


俯いて、こちらもわなわな震える青に不安しかない。



「貴方は‥また」


「ひ、ごめんなさあああああい」



青の逆鱗と共に、バタバタと走り去っていく兵士を見つめて、俺は首を傾げた。



「‥なんだ?」


「はあ‥買出し係の失態です‥」


「買出し係?」

「魔物の類だといっても、僕らも人間と同じものを食べますし、優れているものであれば、その道具を使用したいのです。調達する事も可能ですが、やはり人間界の食事の方が見た目や味は美味だし、僕達では思いつかないような便利な道具も多いから、毎週買出し係の者が、人間界へと人の姿に化けて食料の調達に行くんだ。だけど、ここのものは人間界には皆詳しくないが故にッ騙されて高額な壺やらなんやらを持ち帰ってくるしッ!それに、頼んだものの種類が分からず、別の物を買ってくるわッ‥本当に使えないッ‥」


後半、表情が鬼のようになる青がとても恐ろしい。
でもまあ、魔王城といっても、こうやって窓から見る景色も普通だし。
一部を除いて、だけど‥

あまり人間の世界と変わらない生活をしているんだろうな。意外だけど知らない事を知れたのは面白い。


「あ、あー‥そうなのか‥‥俺も、魔物の事なんて分からねえし、きっとアイツも苦労したんだろうな‥ミキサーぐらいなら人気のメーカー知ってるし、代わりに俺が行ってやりてえぐれえだよ。」


「っ!‥光様は‥人間だから化ける必要もないし‥商品の価格や相場、種類や流行りには詳しいのですね‥?」


急にぐわっと俺の方を振り返るのやめて。怖い。



「ま、まあ‥組織でもほぼ家事当番だったし‥おばちゃんズと世間話できるぐらいには詳しいと思うけど‥」





「そうだ‥それがいい。光様、貴方を買出し係に推薦します。ただ、主人には内緒で」



名案だと、1人盛り上がる青に俺はただただ頷くことしか出来なかった。



「お、おお?分かった。そんな事でいいならお安い御用だ。」


「では、決まりですね!」


ニカリと笑う顔は可愛らしい。
歳は俺達より下に見えるのに、
言動がしっかりしてるから、よく分からなかった。

だけど、
こうしてニコニコしてると見た目的な年相応に見えて安心する。



「なんだか機嫌がいいな?」

「っ!そ、それはまあ‥人間界の道具は面白いですから!試してみたいものが沢山あるのです!」


「はは、そうかよ。俺も頑張って良い商品探してくるよ。それにしても、喜一に内緒って大丈夫なのか?」


「‥心配ありませんよ。今主人は仕事で手一杯ですから。それに全て片付くまで、書斎から出られない呪いをかけましたし」



「お前‥見た目によらず恐ろしいよな」



「これくらいしないと、魔王の右腕は勤まりません」


「右腕、か」



自分の事を話さなかったこいつが、ふとそんな事を言う。

もっと聞きたくて俺は視線を向けるが、
しまったという顔をしてすぐさままたあの真顔に戻ってしまった。



「っ、いえ、今のは忘れてください。仕事は週に一度、今週はもう終えましたから来週からで結構です。本日は城の内部を把握しておいてください。明日の予定はまた後ほど‥それでは僕は仕事がありますので」



早口で喋り終わると、早々に何処かへ転移でもしたのだろう。




「へ、おい、まだ聞きたい事がって‥行っちまった‥つったって‥どこをどう行けばいいんだよ‥沢山やる事があるって言ってたのはなんだったんだ‥全く‥はあ‥」



消えてしまった青がいた場所を見てため息をつく。


こらからどうしようか‥
喜一の部屋を探すのもいいが、
なんだか気まずくて戻りたくない気もする。


そういえば、さっき青と廊下を歩いてる時、窓の外に庭園のようなものが見えた。

そこに、行ってみるか‥


少し、1人で考える時間がほしい
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