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第4章 魔王城編
本音と嘘
しおりを挟む「‥喜一‥?」
俺を抱きしめ、弱々しく震える喜一に不安になる
「‥??どうしたんだよ‥どこか具合でも悪いのか‥?」
喜一の頬に手を伸ばし、体温を確認する。
少し熱い‥熱でもあるのか?
俺の問いかけにコクリと頷く喜一。
素直なこいつなんて珍しい。冗談が言えない程かなり弱ってるのかもしれない。
「っ、どこか痛む?それとも気分が悪いのか?」
「このままでいろ‥もう少しこのままで‥」
こんな体制じゃ辛いだろ馬鹿‥
「駄目に決まってんだろ」
喜一の腕を掴み、無理矢理膝の上へとダイブさせる。
やはり腕力が並外れた自分に驚きながらも、
今は好都合だとその力を振りかざすッ
ほれほれ、大人しくしやがれ
「ッ、ーーおま、えっ、‥うおッーー」
何か言いかけていた喜一を無視して、
再度額や首筋の温度を確認していく。
やはり少し熱いけど、魔力で確認しても身体に問題はないようだ。
それにしても‥
「ほら、横になって顔見せてみろ。つーか、なぜに枕ない訳?お前枕いらない派なの?なにそれ首痛そう。、‥あーあー、うん。顔色悪いな。熱は無いみたいだけど、大丈夫か?」
ペタペタと喜一に触ってるぞ俺っち‥
俺が殴ろうとしてもヒョイと避けてしまうすばしっこい奴。いや、猛獣‥
今はこんなにも大人しくて感動する。
うわ、こんな事初めてかも
意外とほっぺ柔らけえ‥
まつ毛こんなに長かったんだ‥
つか、鼻高えなムカつく
「は?‥あ、ああ。平気だ‥ちょいと、貧血っぽい‥?‥え、えっと‥あっ!お、お前の足硬いんだけど」
視線を逸らしまくってる喜一さん。
わざとらしい嫌味にムッとする
「な!う、うるせえやい!我慢しろ馬鹿‥色々、聞きてえ事があるんだ‥お前がそんな調子じゃ聞けねえだろうが」
「、ああ、そうだな‥、
‥硬い」
「次言ったら殴るぞ」
「‥キャー、コウくんこわ~い」
「しばく」
「はは‥、」
こんな会話ですら懐かしくて心が温かくなる。
そっと伸ばされた腕。
俺の首筋に触れる大きな手に目を細めた。
喜一‥会いたかったーーー
途端、喜一の目が大きく見開かれて
「‥?なんだよ」
「ふはっ、いや、なんでもない」
俺の首筋を撫でながら笑顔を見せる喜一に
ほっと胸をなでおろす。
弱ってるこいつなんて珍しすぎて、正直焦った。明日、槍の雨が降りそうだ
苦しそうな顔
弱々しい声
こいつに何があったのかなんてわからない。
いつもからかってきては、俺の反応をさぞ面白そうにケラケラと腹を抱えて笑っている。
怖いものなんてない。
いつも強気で、上から目線だ。
けど‥
しんどい時も、プレッシャーに押しつぶされそうな時も、母さんと喧嘩した時も、
父さんが死んだ時も
いつも、いつも‥
そばに居てくれたな‥
俺を優先してくれる
俺を助けてくれる
俺に笑顔を向けてくれる
俺の隣に居てくれる
一番に信頼できる大切な
大切な‥
俺だけの相棒ーーー
「喜一‥」
「んー?」
そう思っていたなんて、
ほんと、馬鹿な俺っち
「お前に会いたくなかったよ‥」
あの頃と変わらぬ黒髪に触れる
お前に会ってしまったら、
心の奥底に閉じ込めた、終わったはずの記憶が蘇ってくるんだ
棘だらけのそれは、俺を絡め取って突き刺す。
望めない夢の先。痛みに耐える日々。
不幸にしてしまった罪悪感。無くなった俺の居場所ーー
嫉妬、嫌悪、絶望、
醜い感情ばかりが渦巻いて吐き気がした。
光だ。光の中に居たからこそ、
闇に堕ちたその痛みに耐えられなかった
そっと喜一が口を開く。
ああ、なんて言われる?
俺もお前の顔なんて見たくなかったとか?
俺が死んだ後の方がやりやすかったとか‥
お前がいなくなって良かった‥とか
はは、ありえる
「俺も会いたかったよーー俺だけの
素直じゃねえ相棒さん」
「‥え?」
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