鬼畜な悪党の下っ端に転生したのだが、頑張って生き抜きたい

花村 ネズリ

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第3章 復讐編

絶望

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‥ーーーside





『肝心なところでバテるなんざ、頂点には向いてねえよ。諦めてそこで俺様の活躍、眺めてろ。ヘナチョコ』



来年もある。その次の年だって、お前と一緒に







『っ、‥出て行ってくれ‥』


『‥あ?』


『いいからッ早く出ていけよ!!!』


やせ細った身体が、
その細い腕が、俺を力いっぱい扉の方へと追いやっていく。


『ッちょ、はぁ?!意味わかんねえ!ッ~、ああ、ああ、分かりました~!出てってやるよ!!お望み通りにな!!』


せっかくこの俺様が見舞いに来てやったのに、



さてはこいつ拗ねてやがるな‥


ふは、そうかそうか、面白え‥






もっと、妬いて俺に縋りつけよ



俺は奴の細い腕を掴み取って、
ニヤリと笑ってみせた


『はっ、そういえば、お前の代わりのアイツ、結構使えるんだぜ?お前と違って素直で扱いやすいよ~だッて、何、泣いてっ』


『ーーーー』




光の消えたその瞳が、
今でも俺を離さない






人間が、こんなにも脆いとは
知らなかった






「光‥、‥‥?」



ベットの上で、青白く動かないアイツを見つめる。


「ごめんね‥喜一くん‥。せっかく来てくれたのにね‥」



「‥いえ‥それよりも、どうして、光の顔に白い布を‥?これじゃあ、息がしにくいじゃないですか」


「っ、喜一くん、喜一くんッ!光はねッ、もうッ」


「‥?何故、泣いてるんですかおばさん?どうしてーー」



「光はね!!もう死んじゃったのよ!!ーーー」














「知らなかった‥人間が、こんなにも弱いなんて」



「貴方が一番知っていたはずでしょう。」


「‥ずっと、側にいると思っていた。
俺の隣にずっと‥」



光の冷たい頬に触れる。

窓際に座っていた男が、眉をひそめるのが分かった。


「何を‥貴方とあの人間では、寿命以前に、まず種族が違うのですから、永遠になど‥不可能です。」

「ああ‥そうだったな‥」



「‥、悲しんで、おられるのですか?」




「‥んなわけねえだろ。何故俺が人間如きに悲しまなきゃいけねえんだよ。バカかお前は。バーカバーカ。」


「‥」


「‥なあ、死者を蘇生する方法‥って」


「ありませんね。」


「‥」


死者の蘇生‥


死者と会話‥



死者の転生‥、




ああ、そうだ。確か親父の禁忌魔法書に‥


「それよりも、暇つぶしの異世界旅行はもう楽しめたでしょう。魔界は主人が不在なせいで大荒れです。早く戻って、って!?何してるんですか!?」



「‥儀式の魔法陣を展開中なう」



「はい!?」

「輪廻の輪に行く前に、コイツの魂を此方側の器に移す。
あは、やっぱ俺って天才だな。」



「主人!?いけませんッ!!異界の神に抗ってはッ、力が失われてッうわ!?」



魔法陣を展開させ、指を噛み、血を一滴、光の口元へと垂らす。


途端に、眩い光が光を包んだ。




「お前は‥俺の隣で笑っていればいいんだよ‥そう、だろ?光ーーー」


「主人ッッ!!!?」




がくりと力が抜けて、
俺の魔力がこの世界に吸い取られていくのが分かる。
随分とせこい創造者だな。

1人ぐらい攫っても構わないだろ。

まあ、いい



「俺が目覚めるまで、光をーーー守れーーこれは命令だーー」



次に目覚めた時、また‥
あいつに会えるのなら、それでいい。


あいつに怒られて、それで、


仕方のない奴だと、



笑うんだーー



「っ、‥








御意ーー」





「は、使える従者だーー‥、」




これが、地球という異界の惑星での、
最後の記憶だーー








目が覚めたら




俺とお前は




ずっと







「ラシルっ、おい、しっかりしろって!!?」




「‥はッ、」





身体は動くし、


力も戻った



それなのに



 どうして今、






手が届かないもどかしさを感じているんだろうかーー




くそ‥なんだよ

なぜ、そいつにばかり

 


知らねえ。
こんなの分かんねえんだよ。
気分が悪りぃ
めんどくせえ
全部ぶっ壊してえ‥





‥なあ


教えろよ、光




ーーーside end‥
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