鬼畜な悪党の下っ端に転生したのだが、頑張って生き抜きたい

花村 ネズリ

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第3章 復讐編

恐怖

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アサヒsideーー




シンと静まり返る会場と、無惨に転がるサルさんの首。

そして、俯いて動かないラシルさんを、俺は見ないように、
次のターゲットへと視線を移した。


「‥意外だな‥悲しそうな顔をしている‥」



悲しい‥?
そんなはずない、だって覚悟を決めたんだから


俺はズキリと突き刺さった何かを誤魔化すように口を開く。






「‥次はあなたの番です。」



「クス‥ああ、いいだろう‥その代わり君が負けたら、ッーー‥?」




突然、目を見開くターゲットに眉をひそめる。
なんだ‥?不意打ちを狙っているのか?


俺は警戒しながら
彼の視線の先を辿っていく



「?っ、」



なッ、



「これがコウの新しい顔か‥あ、まって。この言い方ウケる。ふーん‥まあまあ綺麗じゃん。なんかムカつく」


「、誰、だ‥?」


サルさんの頭を持ち上げて、マジマジと眺める男。


漆黒の髪に鋭い闇のような瞳は、
どこまでも深い海の底のようで


いつからいた?

どうして気づかなかったんだ






「うんしょっと‥で、これが身体か‥ふーん、駄目だな。全然肩ができてねえ。これじゃあ、良いボール投げれねえじゃん。あのバカ、戻ってきたら説教だな。」



「っなにして‥」



サルさんの頭を片腕で抱えながら、
身体の前に座り、それを突っつきながらぶつぶつと喋り続ける男。

その異様な姿に俺は唖然と男を見つめた。




「‥脳ミソと心臓‥この2つがあればいいんだっけ?はあーー!!ああ、ああ!!めんどくせえし、恥ずかしくて俺様反吐が出そうだぜ!全く‥この借りはたけえぞ‥

えっと‥創造魔法と‥蘇生魔法と‥あと魂がどうのこうの言ってたな‥
あるべき姿へっと、ーーああ、そうだ‥元に戻しちゃえばいいのか。
そしたら、また‥はは、俺様天才かも。」



「おいっ、」



聞こえてないのか‥?
いや、違う‥無視してるんだ
俺に興味が全くない‥なんなんだこいつッ





「いでよ~!俺の奴隷、コウくん召喚~!!!なんちって」




「ッ、」




男がふざけたように片手を天にあげた。


その刹那




大きな魔法陣がサルさんの身体の下に展開され、そのまま首なしの身体を飲み込んでいく。

そこに首を投げ入れる男。


ふざけた表情が一瞬で消えて、


それは
悲しみと、憂いを込めた




愛おしいものを見つめる男の


そんな表情だった






「戻ってこいよ‥クソマヌケ‥」







魔法陣の形が変形して、
光が塊となり、どんどん膨らんでいく



それは
細かく繊細に広がっていき、



最後は




人の形になった





パシャリと光の粒が弾けて、









「っ‥なん、で‥」


その中心部から
茶髪の青年が姿を現わした。

ふわりと揺れる長めの前髪が風に揺れて、
露わになった顔に驚く。



この人ッ



「っ‥なんのつもりだよ‥お前‥この身体は‥ッ」




何故か自分の身体を抱きしめ震える青年。
それを目を細め見つめる男の顔も、記憶の底に少し残っていて




「はは‥やっぱ俺は天才だな。完璧な‥
コウだ‥。


よう、久しぶりだな。調子はどうだ?」



「っっっ!何でてめえがいんだよっ!?キイチーーー」





高城 光ーー
一時期、スポーツ番組や雑誌で話題になっていたのを覚えている。
高校生にして天才ピッチャー。
甲子園出場決定と同時に、


不治の病で生涯を終えた、不幸な少年ーー


甲子園出場を果たした彼の高校は、彼の叶えられなかった夢を果たすかのように見事に優勝し、
強豪校となる‥だったっけ‥?


彼の友人であり、バッテリーを組んでいた捕手の氷川 喜一。

素晴らしい活躍で、メンバーを甲子園優勝へと導いた‥




俺はスポーツは苦手だったけど、観戦するのが好きだったから、彼らの事が放送されていたニュースや記事はよく覚えている。



彼は死んだ。
俺が地球に居た時に、ニュースキャスターが何度もそう告げていたから



それなのに何故



彼はここにいるんだ




とてつもない不安感が俺を襲う。



サルさんはもういない


オレが殺したから



なのに何故




「ッ、ラシル‥?おい、しっかりしろ!!」




あの人がここにいるような気がして堪らない。




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