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第3章 復讐編
それは
しおりを挟むそれは突然だった
騒めく会場と、中央の扉から現れる金の髪をなびかせた美しい女性。
そして、その女性をエスコートする、
同じく〝金髪の男。
「あれは‥」
「この国の姫様だ。そして、第一王子の‥どうしてあの人がここにッ‥俺達ギルドにも知らされていないぞっ」
ゼノくんの焦りと同時に、
こちらに気づいたのか、
カツリと音を鳴らして此方に近づいてくる女性。
彼女を眺めながら視線を横に移すと、
ぞくりと押しつぶされそうな緊張感が俺を襲った。
あれが‥モノホンの王子様‥
よく、白馬の王子様~とか、前世でクラスの女子が騒いでたけど
その通り、やはりオーラが違うぜ‥チッイケメンなんて滅びなさい!!
っ、‥なんてさ、
いつもの冗談で、シリアスをぶっ壊そうと思ってた‥思ってたけどさ
だけど、目が合った瞬間に、急いでそらしてしまうくらい
なんだか
とてつもなくヤバいぜあの人
「貴方が勇者様ですね!!お会いしたかったです!!」
「っ!?」
ビビりながら小鹿ちゃんのように震えていたら、何故か金髪美女に突き飛ばされた俺っち。
悲報 ヒールがぐらついて足をひねる。
あ〝ああああッ!??!
いっつつううう!?
「え、えっと‥はい、一応勇者?なのかな‥」
「姫様‥お誕生日、お祝い申し上げます‥。」
スッとゼノくんが悶える俺から手を離し、
跪いた。
まって、そういうのは最初に説明が欲しい。
皆んな俺を裏切りすぎだ。
僕ちん礼儀とかわかんねえんだけど~
‥
ど、どどどうしようぅう‥
「お祝い申し上げますわ!!」
近くにいた令嬢が、運良くお辞儀する。
「‥お、お祝い申し上げます‥」
こうなりゃ真似事だ。
その娘を真似て、お辞儀をしようとドレスの裾を持ち上げた俺。
男の一生でこんなことをするとはな‥
だがしかし
なかなか様になっているんじゃないだろうか。
えへ、俺っち美しい?そうかそうかッーー
あ〝ーーー
グキッーーー
デジャーヴ
「ッ、さ、ライトーー!!」
「わぶしっ!?」
見事に裾を踏み、再度足をグネッた。これが真の馬鹿だ。
バランスを崩し、隣の勇者くんへとダイブする俺っち。
勇者くんになんとか支えられて体勢を立て直すが、周りの冷たい視線が痛い。
すんません。調子に乗りました‥打ち首だけは勘弁してええええ
「‥ッねえ‥勇者様、そのご令嬢は一体?」
「ッ、」
ぎゅっと支えられた腕に力が入って、
勇者くんの焦りが俺に伝わってくる。
この人、たぶん勇者くんの事好きだよな。
頬を染めたり、声を高くしたり‥
やだよー、これだからイケメンは
嫉妬されてるのだろう。
睨まれる俺。可哀想
‥、ここはなんか適当にごまかしてさ‥
「えと、あの‥その、こ、この人はッ」
おい、なにどもってんだよ
怪しいよ君、怪しすぎるよ!その反応一番したらまずいやつだからな!!
ま、まさか‥何も考えずに俺を連れてきたんじゃ‥
ダラダラと汗を流す勇者くんに、
表情がスンとなる俺っち。
馬鹿野郎があああ考えとくもんでしょおおお!!
俺、こう見えても世界的犯罪者扱いされてる組織にいるんだからねえええ!!俺を処刑させたいんかあああ
俺がビンタしてやろうかと勇者くんを睨みつけた時だ
「ッ、」
突然、頬に触れる冷たい手に、驚く。
なにッ!?セクハラッ?!痴漢っ!?
あら、やだ。俺男ですけど
モジモジと体をくねらせて、
白目を剥きかけた時だ
「そうか、お前が‥
捨て子のお気に入りかーーー」
赤が俺を楽しげに見つめるーー
俺はその赤を見て、
目を見開いた。
ああ、この人、
ラシルによく似てる
そっか
この人
たぶん
お前と血がーーー
ドクンっと、自分の鼓動の音が聴こえて
気づいたら、
何故か目の前の彼の〝赤しか見えなくなっていた。
なん、だ
「私はクロス・レインホート。お前に私の名を呼ぶ事を許そう。」
「は、い‥
クロス‥様‥」
自らの口から出た言葉に違和感を覚えるも、
今はそんな事どうでもいいと思える。
そんな事より
胸が熱い。
彼に見つめられると、何故か物欲しさに駆られた。
もっと‥
もっと、俺を
〝見てーーー
「ふ‥可愛い人形の出来上がりだーー」
彼の声しか聞こえない。
俺はうっとりと彼を見つめているだろう。
彼の声がとても心地よい。
だけど、近くで、それ以上行くなと誰かが告げている。
誰だよ‥うるせえぞー
俺はこの人の側にいたいんだ。
この人の為に俺は‥
あれ‥俺はなんだったっけ?
そうだ。
俺はこの人の‥
人形ーーー
刹那、ガシャンッーーと、大きな音がして、
お城のガラスがキラキラと空を舞った。
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