鬼畜な悪党の下っ端に転生したのだが、頑張って生き抜きたい

第2章 勇者降臨編

鬼は夢の中 side ラシル

ーーラシル side





夢を見た



大人達が、殴りかかってくる。
時には鞭で

またある日は、
魔法を使い傷めつけられる。

爪を剥がされ、水に沈められ


気絶して

そして、すぐにまた起こされる




その繰り返し






捨てられた王子
不幸をもたらす、いらない王子

〝産まれなければーー



皆が口を揃えてそう言った。




なら、産まれてしまった俺は？



また、クソみたいな地獄が続く。



逃げても逃げても捕まえられる


そんな恐怖で、本当に逃げだせたはずなのに、眠る事が出来なかった。



〝大丈夫か？寒い？震えてるから


俺はその日は正直で、

恐ろしいと、そう少年に話した。

すると、
赤茶色の髪をした小さな少年は、
真剣な顔で俺に言うのだ。




〝俺が見張っててやるから安心しろ。



弱いくせに、馬鹿馬鹿しい。
頼りない言葉だ


だが、

俺は不思議とその言葉に安心して、
久々に力が抜けた。






〝おやすみラシル‥いい夢を



少年が、俺の頭を撫でるのがわかる。
何故だかとても心地良くて、抵抗しなかった。
そのまま俺は意識を手放したのだ






ーー。



「‥」



眩しい光が、俺を現実へと連れ戻す。
朝か








「‥、あ、おはようございますボス。」


成長してもアホ面。



俺は、あの頃から変わらぬ赤茶色の髪に手を伸ばした。






「っ、‥？ラシル？」


不思議そうな顔。
俺は髪を撫でた手をそのまま下へ滑らせる。



「ちょ、くすぐったいって！ははっ」





瞳‥頬、



〝唇




「ん、‥ラシル？」




「ふぁ～、あ、サルさん、ボスさん。おはようございます」


犬の声が聞こえて、唇に触れていた手を離す。



馬鹿げている。
こんなアホ面の唇に噛みつきたくなったーー



俺はおかしい。
おかしくなったのは、
全部こいつのせいだ



だから、償ってもらう。
一生をかけて


逃げることは許さない
他の奴に触らせるのも
そのヘラヘラしたアホ面を向けるのも



「おはよー。犬くん、よく眠れたかい？ッ、イッーーてええええ！？なにしてんすかああ！？まだ、寝ぼけてるなコンチクショおお！？」




強く噛みついたのは、
真っ白な腕。


涙目になって騒ぐアホと、


血が滲んだそれを見つめる。




「ちょっとボス！？聞いてんすか！？」


「うるせぇ‥」






〝これは俺のものだ





ーーラシル side end