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弥勒過去編(瑛二&白銀)

白銀 1

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「・・・え、瑛二?」

目を、開けて。
自分の腕の中に、瑛二がいることに驚く。
抱きしめていた体勢を維持しながら、顔を覗き込む。
あどけない、寝顔。

でも、二人とも。
いや、鬼は一体だから、一体と一人は裸で。
瑛二の身体からは、僕の匂いが充満していて。
僕の身体は、瑛二に満たされていて。

全然、あどけなさは無い状況だった。

「・・・ふぁ?
おき、たのか??」

目を擦り、僕の顔を覗きこむ。
無防備な起き抜けの顔、可愛い~

「あ”-、顔色いいな。
全然違うじゃねーか」

微笑んでいたら。
ペチリと、指先で唇を軽く叩かれる。

「それに、身体もあったかいし・・・
どんだけ、ムリして俺を騙してたんだ?」

・・・バレテル。
そして、僕は瑛二をたくさん食べてしまっている。
なにから言葉にしていいのかさえわからず。
沈黙しか返せない。

食べている間の、熱に浮かされたような高揚は無くなっている。
冷静に、なれている。
元に戻った。
そう、思えているけれど・・・僕は一度知ってしまった。
僕の中で人と鬼が完全に混ざったあの気持ちを。

瑛二と目があっただけで、落ち着かない。

「勝手に、自殺しようとしてんじゃねーよ」

ふわぁ~と大あくびが止まらない様子。
瑛二は、体中がダルイ、ダルイと俺を睨む。
記憶は、あります。
わかってる、僕の、せい、だよね。

「あの、僕、どうか、していて・・・」

身体を起こそうとして、止められてしまう。
まだ、眠いから、このまま寝かせろと目を閉じられる。

「あとで、ちゃんと聞くから。
彰姫サンに結界張ってもらったから、三日は誰もこれねーよ。
本家にも、しばらく弥勒家は使うなと話をつけとくそーだ」

彰姫・・・そういえば、名前口にしてたな。
瑛二の肩が冷えないように、布団を整えて。
でも、僕の中は、ぐちゃぐちゃのまま。
たしか、もう、砂になったと思っていたのに。
気付いたら、瑛二に・・・

しかも、瑛二がいつも以上に甘えてかわいい。

いや、ダメだっ
何を思っているんだ僕はっ

考え方が、おかしくなっている。
頭ではおかしいと思うのに、どこがおかしいかさえ考えられなくなってる。
以前なら、鬼の気持ちと自分とを分けて考えれていたのに。
今も、瑛二の背に手をまわして、抱きしめてしまっている。

「あのさ、お前の名前、白銀、な。
お前の髪にぴったりだろ?」

夢見心地の瑛二。
うっすらと目を開けて。
ふわふわと、笑っている。
可愛すぎるっ!

それに、僕の名前、白銀って・・・

「とりあえず、寝かせろ・・・」

スゥスゥと、寝息がすぐに聞こえてくる。
僕も、考え込むことを放棄して目を閉じた。
お腹も、心も満たされて。
瑛二もこんなに近くにいて。

悩むことは、何も無い。
そう思っていた。




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