鬼ごっこ~あのこがほしい~

三日月

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弥勒過去編(瑛二&白銀)

異常 side 瑛二 3

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手当たり次第に棚や箪笥、隠してそうな場所を探って。
ソレは見つかった。
自分で服を創造できるようになった瑛一には、不要な筈の服の下。
箪笥の奥に、並べられた古書。

まだ、習い始めたばかりで。
わからない、読めない字も多いが・・・
鬼の食糧が血などの体液であること。
唇の色で飢餓状態がわかること。
人間の光を匂いとして知覚し選別していること。
何冊も同じことが書かれている。

「くっそ、基礎ってことだよな」

一ヶ月近く、アイツら、ココをわざと飛ばして教えてやがったな。
瑛一の唇は、あの晩から青かった。
いつから空腹だったんだ。
俺が殺してきた鬼のように、砂になって死ぬのか?

「・・・なんだ、コレは?」

古書の更に下から、何冊もノートが出てくる。
二十冊は、超えてるな。
箪笥の底に敷き詰められたノートには、ナンバリングがされている。
・・・これ、さっき見たな。
たしか・・・このあたりで。

文机の上に立てかけてあったノートを手に取る。
ナンバーは0(ゼロ)。
開けると・・・日記か?
瑛一の字と図が、ページを埋めている。

ここ一ヶ月近く、一緒に戦っていた仕事の内容。
陣形の取り方に関する考察。
俺の戦い方の分析、改善点。
丁寧に、図入りで示された俺の成長の記録。

これだけだと、まるで授業ノートのようだったが。
他愛の無いことも、書き込まれていた。

俺と話した内容や、俺が笑った様子、俺の服装。
瑛一が感じた俺との日常。
俺との時間が増えて、鬼になって良かったと思える、なんて・・・そんなことまで書かれてある。
バカじゃねーの?
んなわけねーだろう・・・

目頭が熱い。
視界が、ゆがむ。

自分の変化も、隙間を生めるように書かれていた。
鬼の感覚と人間の感覚が混ざっていく流れ。
飢餓状態の心理の変化。
後世に伝えるための資料のように、淡々と。

これは、瑛一の日記じゃない。
俺の日記。
俺のことが、なんでこんなに書かれてるんだよっ
頬を伝う涙を袖でぬぐい。
鼻を啜りながら開けた、最終ページ。

今までのページより、少し大きく固く。
ところどころ震えた、緊張した字が綴られていた。


『弥勒 瑛二様

16歳の誕生日おめでとう。
もう、思い残すことは無いから、今日でこれを最後に更新は止める。
処分するか迷ったけれど、このノートを残すことで瑛二の力になれるかもしれない。
・・・嘘、ただ、俺を知ってほしいからだ。
僕が当主になってから、書きとめたノートは和箪笥の最下段。
鬼の書物と一緒に隠している。
全て言い訳になってしまったけど、僕が当主になってからどう思っていたかも含めて読んで欲しい。
そして、重荷になっても、僕は瑛二の記憶に残りたいと願ってしまう。
最後まで、瑛二には迷惑をかけてごめんね。

弥勒 瑛一』


「ハッ・・・んだよ、コレ?」

最後の文を読み上げ、ノートで顔を覆う。
遺言、じゃねーか。
こんなの。
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