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弥勒過去編(瑛二&白銀)
誕生日
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「お誕生日おめでとう!
久々に作ってみたんだ」
待ちわびていた誕生日当日。
夜中から寝ずに仕込んで作った料理の数々。
今日以降なら、いつ砂になってもかまわない。
むしろ、今日終わりたい。
エネルギー消費を出し惜しみする必要はなかった。
料理に取り掛かり、今更驚いたのは味覚が変わっていたこと。
調味料はもちろん、野菜を食べても全く味を感じない。
むしろ、不快で吐き出した。
砂を噛んでいるようで、口の中が気持ち悪くて。
味見が全く出来ないことで、昔母が使っていた料理本を片手に。
瑛二の好きだったものを、材料が許す限り並べた。
その味には自信があった。
でも。
一番食べて欲しい出し巻き卵は、母の見様見真似。
レシピが無いから、記憶を頼りにつくったため一番自信がない。
「あ、ありがとう。
誕生日を祝われるガラでもねーけどな」
食卓に着いた瑛二は、さすがに朝から多すぎると苦笑い。
それでも初めに手をつけてくれたのは、出し巻き卵だった。
だい、じょうぶだろうか?
「・・・懐かしいな」
瑛二の感想にホッとする。
瑛二の誕生日を祝うなんて、何年ぶりだろう。
小学校に上がってからしばらくは祝っていた記憶がある。
途中から、友達と遊びに行ったまま帰らなかったり。
もう食べてきたといって離れに直行していたり。
角無し鬼になっても、悪いことばかりじゃなかったな。
こんな間近で、瑛二と一緒に生活できた。
高校生らしい食欲全開で、胃に収めていく瑛二。
どれもうまいと、その箸が物語ってくれている。
「食べきれない分は、また帰ってから食べれるように保存しておくよ」
「だな。
これ以上喰ったら、居眠りしそうだ」
「蹴飛ばされるぞ」
人間だったときより、兄弟らしい距離感。
僕が選択肢を間違っていなかったら。
もっと、こんな時間をもてたのかな。
思わず、瑛二の顔を見つめていたら、眉間に皺を寄せられてしまった。
違和感を感じさせる前に、今のうちに渡しておこう。
「瑛二にこれを」
手渡したのは。
瑛二名義の通帳と印鑑。
本当は、本当は。
こんな形で渡したくは無かった。
進路に悩む瑛二に、自由に生きていいんだと。
したいことを、思い切り楽しんでほしいと。
そう、背中を押して渡せるはずのものだった。
「なんだ、この額!?」
通帳の最終ページに、瑛二の目が見開く。
「瑛二に使って・・・」
ここで暗転。
僕は、最後の最後まで中途半端。
瑛二の驚いた顔、傾く景色。
そうか、これが、僕の限界。
久々に作ってみたんだ」
待ちわびていた誕生日当日。
夜中から寝ずに仕込んで作った料理の数々。
今日以降なら、いつ砂になってもかまわない。
むしろ、今日終わりたい。
エネルギー消費を出し惜しみする必要はなかった。
料理に取り掛かり、今更驚いたのは味覚が変わっていたこと。
調味料はもちろん、野菜を食べても全く味を感じない。
むしろ、不快で吐き出した。
砂を噛んでいるようで、口の中が気持ち悪くて。
味見が全く出来ないことで、昔母が使っていた料理本を片手に。
瑛二の好きだったものを、材料が許す限り並べた。
その味には自信があった。
でも。
一番食べて欲しい出し巻き卵は、母の見様見真似。
レシピが無いから、記憶を頼りにつくったため一番自信がない。
「あ、ありがとう。
誕生日を祝われるガラでもねーけどな」
食卓に着いた瑛二は、さすがに朝から多すぎると苦笑い。
それでも初めに手をつけてくれたのは、出し巻き卵だった。
だい、じょうぶだろうか?
「・・・懐かしいな」
瑛二の感想にホッとする。
瑛二の誕生日を祝うなんて、何年ぶりだろう。
小学校に上がってからしばらくは祝っていた記憶がある。
途中から、友達と遊びに行ったまま帰らなかったり。
もう食べてきたといって離れに直行していたり。
角無し鬼になっても、悪いことばかりじゃなかったな。
こんな間近で、瑛二と一緒に生活できた。
高校生らしい食欲全開で、胃に収めていく瑛二。
どれもうまいと、その箸が物語ってくれている。
「食べきれない分は、また帰ってから食べれるように保存しておくよ」
「だな。
これ以上喰ったら、居眠りしそうだ」
「蹴飛ばされるぞ」
人間だったときより、兄弟らしい距離感。
僕が選択肢を間違っていなかったら。
もっと、こんな時間をもてたのかな。
思わず、瑛二の顔を見つめていたら、眉間に皺を寄せられてしまった。
違和感を感じさせる前に、今のうちに渡しておこう。
「瑛二にこれを」
手渡したのは。
瑛二名義の通帳と印鑑。
本当は、本当は。
こんな形で渡したくは無かった。
進路に悩む瑛二に、自由に生きていいんだと。
したいことを、思い切り楽しんでほしいと。
そう、背中を押して渡せるはずのものだった。
「なんだ、この額!?」
通帳の最終ページに、瑛二の目が見開く。
「瑛二に使って・・・」
ここで暗転。
僕は、最後の最後まで中途半端。
瑛二の驚いた顔、傾く景色。
そうか、これが、僕の限界。
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