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弥勒過去編(瑛二&白銀)
会いたい 1
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身体が、軽い。
風に乗って、自分の思う先へ身体が進む。
地面に足をつけなくても、進んでいく。
不思議な感覚、でもそれが当たり前に摩り替わる。
あぁ、きっと。
こうやって徐々に鬼になるのか。
漠然とした、実感。
今日まで僕は、鬼だけじゃなく。
鬼落ちした人間も、何体も斬り捨ててきた。
中には、記憶が残っていることを隠して。
わざと斬られた鬼がいたのかもしれないな。
今、僕は、瑛二に殺されに行くのが楽しくて仕方ない。
鬼の嫁となり、子どもを孕む方が恐ろしい。
鬼落ちしたまま、生き続けるほうが恐ろしい。
ただ、空を滑るだけで、あっという間に着いてしまった。
弥勒家の本邸真上。
今日の戦に、ほとんどの人間は借り出されている。
直接、瑛二の使う離れへ降りれば見つかることも無いな。
あぁ、瑛二に会える
瑛二に会える
僕は、ただ嬉しくて楽しみで。
浮き足立っていた。
瑛二に対して、申し訳ないという気持ちが維持できていなかった。
離れの庭に、降り立ち。
耳を澄ませる。
家の壁を通しても。
その中にいる息遣いが聞こえてくる。
帰宅、していたようだな。
庭に面した雨戸を開けようとして。
「誰だ」
瑛二の起きる気配。
スタンドライトでもあるのだろうか?
雨戸の隙間から。
瑛二のシルエットが、その手元の光で浮かび上がるのが見えた。
名乗っても、いいのか?
名乗ってわかってもらえるのか?
この、身体で。
「ここが、弥勒家と知ってのことか!?」
警戒した声と、びりびり伝わってくる緊張。
人を呼ばれる前に、終わらせたい。
どうすれば、どうすれば。
模索していても。
顔が見たい、顔が見たい
瑛二の顔が見たい
気持ちが逸ってまとまらない。
「ぼ、僕は、瑛一だ。
鬼落ち、した」
殺して欲しい・・・口に出そうな言葉を飲み込む。
あぁ、そんな言い方では殺してもらえない。
「弥勒家当主として、鬼落ちした者への厳罰を依頼しに来た」
バンッ
障子が左右に勢いよく開かれる音。
窓を開け、雨戸を開け。
目の前に。
ジャージ姿の瑛二が見える。
あぁ、見たかったのはこの姿だ。
瑛二を、見たかった。
家の中にいる瑛二を、僕の方が見下ろしてしまう。
僕は、随分背が高くなっていたらしい。
膝を屈め、正面でその顔を確認する。
春の高校の入学式以来かな。
正面から顔を見るのは。
合間を縫って、覗きに行ったそのときでさえ。
瑛二は視線すら合わせてくれなかった。
風に乗って、自分の思う先へ身体が進む。
地面に足をつけなくても、進んでいく。
不思議な感覚、でもそれが当たり前に摩り替わる。
あぁ、きっと。
こうやって徐々に鬼になるのか。
漠然とした、実感。
今日まで僕は、鬼だけじゃなく。
鬼落ちした人間も、何体も斬り捨ててきた。
中には、記憶が残っていることを隠して。
わざと斬られた鬼がいたのかもしれないな。
今、僕は、瑛二に殺されに行くのが楽しくて仕方ない。
鬼の嫁となり、子どもを孕む方が恐ろしい。
鬼落ちしたまま、生き続けるほうが恐ろしい。
ただ、空を滑るだけで、あっという間に着いてしまった。
弥勒家の本邸真上。
今日の戦に、ほとんどの人間は借り出されている。
直接、瑛二の使う離れへ降りれば見つかることも無いな。
あぁ、瑛二に会える
瑛二に会える
僕は、ただ嬉しくて楽しみで。
浮き足立っていた。
瑛二に対して、申し訳ないという気持ちが維持できていなかった。
離れの庭に、降り立ち。
耳を澄ませる。
家の壁を通しても。
その中にいる息遣いが聞こえてくる。
帰宅、していたようだな。
庭に面した雨戸を開けようとして。
「誰だ」
瑛二の起きる気配。
スタンドライトでもあるのだろうか?
雨戸の隙間から。
瑛二のシルエットが、その手元の光で浮かび上がるのが見えた。
名乗っても、いいのか?
名乗ってわかってもらえるのか?
この、身体で。
「ここが、弥勒家と知ってのことか!?」
警戒した声と、びりびり伝わってくる緊張。
人を呼ばれる前に、終わらせたい。
どうすれば、どうすれば。
模索していても。
顔が見たい、顔が見たい
瑛二の顔が見たい
気持ちが逸ってまとまらない。
「ぼ、僕は、瑛一だ。
鬼落ち、した」
殺して欲しい・・・口に出そうな言葉を飲み込む。
あぁ、そんな言い方では殺してもらえない。
「弥勒家当主として、鬼落ちした者への厳罰を依頼しに来た」
バンッ
障子が左右に勢いよく開かれる音。
窓を開け、雨戸を開け。
目の前に。
ジャージ姿の瑛二が見える。
あぁ、見たかったのはこの姿だ。
瑛二を、見たかった。
家の中にいる瑛二を、僕の方が見下ろしてしまう。
僕は、随分背が高くなっていたらしい。
膝を屈め、正面でその顔を確認する。
春の高校の入学式以来かな。
正面から顔を見るのは。
合間を縫って、覗きに行ったそのときでさえ。
瑛二は視線すら合わせてくれなかった。
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