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弥勒過去編(瑛二&白銀)
許さない 1
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「初夜はそこでいいのか?
オレの花嫁よ」
暗闇浮かぶ白磁の肌。
その額には、三本の角。
宙を浮き、僕を見下ろす一対の瞳。
この場でたっている人間は、僕一人。
金色に輝く瞳には。
涙を流しながら、尚、抗う僕が映っていた。
そこは、いつもの戦場のはずだった。
切り立った崖の隙間に作られた。
鬼の隠れ家。
襲い来る鬼を斬り捨て。
鬼落ちした仲間だったモノも斬り捨て。
鬼の住みかを暴きに来た、この日。
そこを急襲し、殲滅。
それ、だけで済むはずだったのに。
「瑛一様、首の確認を終えました」
完全に息の根を止めるため、首の斬り捨てを命じ。
身体が砂となり崩れる。
その確認が終わったころ。
全ては一変した。
戦いの中、見られているのは感じていた。
ねっとりと絡み付くような。
他の鬼のような殺気とは違う。
値踏みするような視線。
辺りも暮れた、逢魔が時。
血と肉の匂いで蒸せる場に。
突然、小柄な鬼が現れる。
「生き残りがいたのかっ」
「逃すなっ」
近くにいた者が、剣を振るい。
その首を落としたかのように見えた刹那。
次々と、人の首が跳ね飛び、宙を舞っていた。
「うろたえるなっ
陣形を取れっ」
距離、300m。
まだ、立て直せるっ
後方で、帰り支度を始めていた者にも声をかけながら。
目は、離さない。
身長、150cmにも満たない。
一角が一体?
だが。
一角でこの力はありえない。
まだ姿を見せていない鬼が周りにいるのか。
こちらに向かい、宙を滑るように進んでくる。
その両側。
生き残っていた人間の形が崩れ。
鮮血が吹き上がる。
距離、50m。
周りに、他の鬼の姿は見えない。
この鬼しかいない。
他の生き残っている者も、その異常さに気付き始める。
あり得ない、あり得ない・・・
修羅場を潜り抜けてきた者たちが、一太刀も浴びせずに死んでいく。
近づいてきた、その額。
角は、三本あった。
三角鬼は、2mを超えるはず。
それが、なぜ・・・
調べるのは、後だ。
まずは、仕留めなければ。
周囲に残っている者の中に、手練れはすでにいない。
まだ、実践が浅いものばかり。
冷静な判断も出来ず。
自分たちが教えられてきた常識から。
外れているその鬼の姿と実力に、動揺している。
このままでは、生きて戻れなくなるっ
「姿かたちに惑わされるな!
動きを止めろ。
弥勒の者は、剣を抜けっ」
号令で、動き出すが・・・遅い。
動きについてきているのは、半数。
10名程か。
僕も、弥勒家当主に代々受け継がれてきた刀を構え。
迫りくる、鬼に応戦しようとしたはずだった。
それが、なぜ。
距離、0m
「邪魔だよ」
まだ、幼い声で。
その鬼は人の命を否定する。
人差し指で、宙を払っただけで。
生き残っていた人の身体は。
両足を地に付けたまま、上半身は離れた場所へ転がっていた。
後方の、捕縛師の死により。
その角無し鬼が、鬼へと戻り歓声を上げている。
自由を取り戻し、笑っているのが聞こえる。
すぐ、傍のことなのに。
まるで遠い。
この、鬼から目も意識も外せない。
勝てるわけがない。
この、鬼の強さは異常だ。
僕は、戻れないのか。
オレの花嫁よ」
暗闇浮かぶ白磁の肌。
その額には、三本の角。
宙を浮き、僕を見下ろす一対の瞳。
この場でたっている人間は、僕一人。
金色に輝く瞳には。
涙を流しながら、尚、抗う僕が映っていた。
そこは、いつもの戦場のはずだった。
切り立った崖の隙間に作られた。
鬼の隠れ家。
襲い来る鬼を斬り捨て。
鬼落ちした仲間だったモノも斬り捨て。
鬼の住みかを暴きに来た、この日。
そこを急襲し、殲滅。
それ、だけで済むはずだったのに。
「瑛一様、首の確認を終えました」
完全に息の根を止めるため、首の斬り捨てを命じ。
身体が砂となり崩れる。
その確認が終わったころ。
全ては一変した。
戦いの中、見られているのは感じていた。
ねっとりと絡み付くような。
他の鬼のような殺気とは違う。
値踏みするような視線。
辺りも暮れた、逢魔が時。
血と肉の匂いで蒸せる場に。
突然、小柄な鬼が現れる。
「生き残りがいたのかっ」
「逃すなっ」
近くにいた者が、剣を振るい。
その首を落としたかのように見えた刹那。
次々と、人の首が跳ね飛び、宙を舞っていた。
「うろたえるなっ
陣形を取れっ」
距離、300m。
まだ、立て直せるっ
後方で、帰り支度を始めていた者にも声をかけながら。
目は、離さない。
身長、150cmにも満たない。
一角が一体?
だが。
一角でこの力はありえない。
まだ姿を見せていない鬼が周りにいるのか。
こちらに向かい、宙を滑るように進んでくる。
その両側。
生き残っていた人間の形が崩れ。
鮮血が吹き上がる。
距離、50m。
周りに、他の鬼の姿は見えない。
この鬼しかいない。
他の生き残っている者も、その異常さに気付き始める。
あり得ない、あり得ない・・・
修羅場を潜り抜けてきた者たちが、一太刀も浴びせずに死んでいく。
近づいてきた、その額。
角は、三本あった。
三角鬼は、2mを超えるはず。
それが、なぜ・・・
調べるのは、後だ。
まずは、仕留めなければ。
周囲に残っている者の中に、手練れはすでにいない。
まだ、実践が浅いものばかり。
冷静な判断も出来ず。
自分たちが教えられてきた常識から。
外れているその鬼の姿と実力に、動揺している。
このままでは、生きて戻れなくなるっ
「姿かたちに惑わされるな!
動きを止めろ。
弥勒の者は、剣を抜けっ」
号令で、動き出すが・・・遅い。
動きについてきているのは、半数。
10名程か。
僕も、弥勒家当主に代々受け継がれてきた刀を構え。
迫りくる、鬼に応戦しようとしたはずだった。
それが、なぜ。
距離、0m
「邪魔だよ」
まだ、幼い声で。
その鬼は人の命を否定する。
人差し指で、宙を払っただけで。
生き残っていた人の身体は。
両足を地に付けたまま、上半身は離れた場所へ転がっていた。
後方の、捕縛師の死により。
その角無し鬼が、鬼へと戻り歓声を上げている。
自由を取り戻し、笑っているのが聞こえる。
すぐ、傍のことなのに。
まるで遠い。
この、鬼から目も意識も外せない。
勝てるわけがない。
この、鬼の強さは異常だ。
僕は、戻れないのか。
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