鬼ごっこ～あのこがほしい～

修行編(瑠璃丸＆京一郎) ３

治療・・・？ １

「ハッ、それでこれかよ」

朝に白銀さんと現れた瑛二さん。
外傷が塞がっている訳を聞いてから。
瑛二さんは、詳しく雅の傷の治癒具合を確認。
特に今は、お尻を上げさせて中を触診して。
どうやら問題なかったようだ。
笑ってるし。

瑛二さんの、後ろには。
昨夜まで行方不明だった黒曜様が立っている。
朝、様子を見にきたら、雅に膝枕していた。
仲直り、したらしい。

その背中が、今、瑛二さんに怒っているのが伝わってくる。
雅も、昨日まで私が看病のために同席してても何も言わなかったのに。

「黒曜まで、見てんなよ、馬鹿っ」

顔を真っ赤にして怒ってる。
天窓からの太陽光に、細部まで照らされて覗かれて。
確かに恥ずかしいとは思う。

鬼隠しを強行した結果とはいえ、未だに歩行は止められてるし。
包帯替えたり、薬塗ったり。
お風呂に入れないから、身体も拭いてるし。
排泄だって、処理してるし。
補佐役というか、お母さんになった気分・・・
初日と比べて、元気になって本当に良かった。

「まぁ、治りは早くなるに越したことはねーしな。
鬼の舌と唾液なら、塞ぐのは完璧だろう。
後は、打ち身や関節への負担。
舌が届いてない腸内の裂傷か。
熱は、早くに下がったしな」

瑛二さんは、もう服を着ていいぞと雅に告げ。
パチンっと透明の手袋を外し、持参しているゴミ袋に捨てた。

「まぁ、彰姫サンもいってたけど、GWまでは休んどけ。
固形食まではまだ時間がかかるだろう。
おい、白銀、アレ渡してやれ」

雅が着替えている間に。
横で待機していた白銀さんへ、瑛二さんが指示。
白銀さんは、鞄から紙袋を出して雅の横に置いた。

「どうぞ」
「これは？？」
「腸の裂傷を治す薬。
弥勒家は、俺は例外として代々角無し鬼を持たない。
だから、裂傷の怪我には秘薬があんだよ」

雅が紙袋から出したのは。
浣腸が入った大箱。
一巻き毎にパウチされてる細いチューブ。
同じく一本毎にパウチされた針のない１００ｍｌ注射器。
無記名のアルミのTパウチには、薬が入っているんだろうな。
各１０個が一組ずつ、ビニール袋に入れられている。

最後に取り出したのは。
医療用潤滑剤と書かれた白いチューブが３本。

「出口をそんだけキレーにされたら、痛みも無いだろう。
浣腸して、出し切ってから潤滑剤を尻の穴に塗りこんで。
この細いチューブを、痛みを感じない長さまで差し込んで注入する。
柔らかいから、力加減が初めは難しいかもしれねーけど。
注入する前に、この注射器に薬を補充して、チューブの先端から漏れるのを確認してからいれろよ？
空気が入ったら苦しいからな。
無理やり差し込んで傷つけんのも無し、な。
ぜったいに無理はすんなよ。
量も、少しずつ増やしていけばいい。
全部入れようとはすんな。
俺がしてやるつもりだったが、この調子じゃあな」

黒曜に睨まれながらも、瑛二さんは笑っている。
雅の顔は、せっかく色がさめたのにまた赤く染まる。