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修行編(瑠璃丸&京一郎) 2
子守唄 side 雅 3
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隣にいるから伝わってくる。
気持ちが張り詰めてる。
「なんか、寝れないわけとかあったりする?」
眠れないわけじゃないとは、思う。
疲れてフラフラしてるのは隠せてないし。
「・・・雅に会う前、オレは」
「お、オレっ!?」
「・・・おかしいか?
オレ以外で・・・」
「いや、オレで、お願いします」
黒曜が、オレか~
カッコいいな。
明日、正面むいて言ってもらおう。
「オレは、ずっと封じられていた。
暗く、何も無いところに、多くの鎖で縛り付けられていた。
気を抜けば、さらに底へ引きずり込まれるくらい、ずっと緊張した状態だった」
淡々と話すけど、神宮寺家が出来る前からの話しだろ?
ずっとって、俺の想像がつかないくらいの長さだろ?
「それで、今も、寝るとそのまま引きずり込まれそうだと、感じている。
もう、外に出ていると、わかってはいるが、恐れている」
「だから、ずっと外見てるのか?」
「そうだな。
外じゃなくてもいい。
自分しかいない空間じゃない、保証を探して安心しているんだ」
寝転んだまま、黒陽に近づいて。
右手にオレの左手を合わせて、握る。
触れるのに、拒否されるんじゃないかという心配はなくなっていた。
「大丈夫、俺いるし」
だから、寝ても大丈夫だ。
ついでに、別々にかけていた布団をやめて、黒曜の布団を引っ張ってもぐりこむ。
この方が近い。
「もう、寝ても大丈夫だ、黒曜」
ぽんぽんと、黒曜の胸を軽く右手で叩きながら。
記憶の中の、声をたどる。
俺が寝付けなかったとき、母さんが歌ってくれてた歌。
『ねんねんころりよ おころりよ
坊やは良い子だ 寝んねしな
坊やのお守りは どこへ行った
あの山越えて 谷超えて
里のおみやに なにもろた
でんでん太鼓に 笙の笛
ねんねんころりよ おころりよ
鬼が来ぬまに 寝んねしな
坊やのお守りは どこへ行った
あの川越えて 海越えて・・・』
覗き込んで、黒曜が目を閉じ寝ているのを確認する。
あぁ、よかった。
ちゃんと、寝れてる。
布団をかけなおして、その寝顔に見とれてしまう。
無防備で、すごく気を許してくれてるのがわかる。
黒曜の寝息を聞きながら、俺も目を閉じた。
このとき。
俺はただの子守唄を歌ったつもりだったんだけど。
俺の歌には、母さんと同じように力が籠もっていて。
黒曜にゆっくり休んで欲しいと想う気持ちも加わり。
深く、深く、眠ってもらえたらしい。
気持ちが張り詰めてる。
「なんか、寝れないわけとかあったりする?」
眠れないわけじゃないとは、思う。
疲れてフラフラしてるのは隠せてないし。
「・・・雅に会う前、オレは」
「お、オレっ!?」
「・・・おかしいか?
オレ以外で・・・」
「いや、オレで、お願いします」
黒曜が、オレか~
カッコいいな。
明日、正面むいて言ってもらおう。
「オレは、ずっと封じられていた。
暗く、何も無いところに、多くの鎖で縛り付けられていた。
気を抜けば、さらに底へ引きずり込まれるくらい、ずっと緊張した状態だった」
淡々と話すけど、神宮寺家が出来る前からの話しだろ?
ずっとって、俺の想像がつかないくらいの長さだろ?
「それで、今も、寝るとそのまま引きずり込まれそうだと、感じている。
もう、外に出ていると、わかってはいるが、恐れている」
「だから、ずっと外見てるのか?」
「そうだな。
外じゃなくてもいい。
自分しかいない空間じゃない、保証を探して安心しているんだ」
寝転んだまま、黒陽に近づいて。
右手にオレの左手を合わせて、握る。
触れるのに、拒否されるんじゃないかという心配はなくなっていた。
「大丈夫、俺いるし」
だから、寝ても大丈夫だ。
ついでに、別々にかけていた布団をやめて、黒曜の布団を引っ張ってもぐりこむ。
この方が近い。
「もう、寝ても大丈夫だ、黒曜」
ぽんぽんと、黒曜の胸を軽く右手で叩きながら。
記憶の中の、声をたどる。
俺が寝付けなかったとき、母さんが歌ってくれてた歌。
『ねんねんころりよ おころりよ
坊やは良い子だ 寝んねしな
坊やのお守りは どこへ行った
あの山越えて 谷超えて
里のおみやに なにもろた
でんでん太鼓に 笙の笛
ねんねんころりよ おころりよ
鬼が来ぬまに 寝んねしな
坊やのお守りは どこへ行った
あの川越えて 海越えて・・・』
覗き込んで、黒曜が目を閉じ寝ているのを確認する。
あぁ、よかった。
ちゃんと、寝れてる。
布団をかけなおして、その寝顔に見とれてしまう。
無防備で、すごく気を許してくれてるのがわかる。
黒曜の寝息を聞きながら、俺も目を閉じた。
このとき。
俺はただの子守唄を歌ったつもりだったんだけど。
俺の歌には、母さんと同じように力が籠もっていて。
黒曜にゆっくり休んで欲しいと想う気持ちも加わり。
深く、深く、眠ってもらえたらしい。
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