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計画的1
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「あ~、もぅ!
リアンは、楽観過ぎる!!」
あの後。
御子息に助け出された現当主は。
泣きじゃくるお師匠様を身体の痛みをおして抱き寄せ、「大丈夫だから」と何度も言い聞かせた。
お師匠様が落ち着くと、私たちにこの部屋から出ないようにと念押し。
痛む首を押さえながら。
適当にごまかしてくると、出て行ってしまった。
どうやらこの座敷は、新宮寺家の本家。
そのどこかの部屋らしい。
まさか、前当主の愛娘が連れ添うわけにも行かず。
面識が今まで無かったその弟子も同じく出来ず。
まだ身を隠さなくてはいけない御子息も同じ。
救出直後、青ざめていた現当主を眼前にし。
お師匠様は、言葉を失い震えていたが。
喉を潰されずに済んでよかったと。
へラッと笑う現当主を前に、子どものように泣いていた。
首筋に残る青痣と。
流れて固まった血。
空腹だったから、この程度で済んだ。
と、現当主は思わせたかったんだろう。
部屋から出る際。
私に扇子を託す現当主が、一言。
「ばらさないように、ね」
こっそり、耳打ちした、その一言。
あぁ、やっぱり、わざとだったんですね。
しかも、私が気付いていたことさえ、自分は気付いているんだと。
お見通しなわけですね。
あの時。
首を絞められながら、切っていた印は。
相手の動きを封じるものと。
この部屋の守りを強化するものだった。
角無し鬼は、力を使いきっている状態。
エンスト寸前。
角無し鬼への攻撃に転じれば、勝てる見込みは十分あった。
それをしなかったのはなぜなのか。
おそらく、御子息にわからせるため。
自分が『はじまりの鬼』を止められる、主であることを。
実施で教え込ませるため。
こういうところ、お師匠様の教え方と似てるな~
強く、厳しく、適時適所で徹底的に。
言葉よりも身体で覚えろと。
瑠璃丸と過ごした修行の日々、その思い出と重なる。
いつも余裕たっぷりで、誰にも隙も見せず。
勇ましくて怖くて、たまに優しいお師匠様。
そんなお師匠様の、まさかガン泣きするところを見ることになろうとは・・・
今更ながら、お師匠様も泣くことがあるのかて。
超人的な一面ばかり見すぎていたから、感心してしまった。
一方御子息は、父親の無事を確認し。
胸を撫で下ろしていた。
そして。
なぜか。
『はじまりの鬼』に直に触れたことに、怯えていた。
「あ、その、触って・・・」
「今は、貴方が我が主だ」
『はじまりの鬼』の方が、困惑している。
困惑し、そして、自分の手を眺め。
空腹を満たすために、爪や指についた現当主の血を舐めとった。
すでに時間もたっているから。
不純物と劣化で、それほど足しにはならないだろうな。
今は、現当主の帰りを待つしかないのかと。
自分もお腹が空き始めたなと。
ぼんやりしていた耳に。
「な、なんで!
俺以外の血を、食べるんだ!
約束、してたのに!!」
今まで怯え、避け、躊躇っていた角無し鬼に。
思い切り御子息が怒鳴っていた。
瑠璃丸も私も、お互いの顔を見合わせる。
契った相手以外を糧にしてはいけない、なんて。
自分たち以外にもいたんだな。
今まで出会ったことがなかっただけに、新鮮だ。
リアンは、楽観過ぎる!!」
あの後。
御子息に助け出された現当主は。
泣きじゃくるお師匠様を身体の痛みをおして抱き寄せ、「大丈夫だから」と何度も言い聞かせた。
お師匠様が落ち着くと、私たちにこの部屋から出ないようにと念押し。
痛む首を押さえながら。
適当にごまかしてくると、出て行ってしまった。
どうやらこの座敷は、新宮寺家の本家。
そのどこかの部屋らしい。
まさか、前当主の愛娘が連れ添うわけにも行かず。
面識が今まで無かったその弟子も同じく出来ず。
まだ身を隠さなくてはいけない御子息も同じ。
救出直後、青ざめていた現当主を眼前にし。
お師匠様は、言葉を失い震えていたが。
喉を潰されずに済んでよかったと。
へラッと笑う現当主を前に、子どものように泣いていた。
首筋に残る青痣と。
流れて固まった血。
空腹だったから、この程度で済んだ。
と、現当主は思わせたかったんだろう。
部屋から出る際。
私に扇子を託す現当主が、一言。
「ばらさないように、ね」
こっそり、耳打ちした、その一言。
あぁ、やっぱり、わざとだったんですね。
しかも、私が気付いていたことさえ、自分は気付いているんだと。
お見通しなわけですね。
あの時。
首を絞められながら、切っていた印は。
相手の動きを封じるものと。
この部屋の守りを強化するものだった。
角無し鬼は、力を使いきっている状態。
エンスト寸前。
角無し鬼への攻撃に転じれば、勝てる見込みは十分あった。
それをしなかったのはなぜなのか。
おそらく、御子息にわからせるため。
自分が『はじまりの鬼』を止められる、主であることを。
実施で教え込ませるため。
こういうところ、お師匠様の教え方と似てるな~
強く、厳しく、適時適所で徹底的に。
言葉よりも身体で覚えろと。
瑠璃丸と過ごした修行の日々、その思い出と重なる。
いつも余裕たっぷりで、誰にも隙も見せず。
勇ましくて怖くて、たまに優しいお師匠様。
そんなお師匠様の、まさかガン泣きするところを見ることになろうとは・・・
今更ながら、お師匠様も泣くことがあるのかて。
超人的な一面ばかり見すぎていたから、感心してしまった。
一方御子息は、父親の無事を確認し。
胸を撫で下ろしていた。
そして。
なぜか。
『はじまりの鬼』に直に触れたことに、怯えていた。
「あ、その、触って・・・」
「今は、貴方が我が主だ」
『はじまりの鬼』の方が、困惑している。
困惑し、そして、自分の手を眺め。
空腹を満たすために、爪や指についた現当主の血を舐めとった。
すでに時間もたっているから。
不純物と劣化で、それほど足しにはならないだろうな。
今は、現当主の帰りを待つしかないのかと。
自分もお腹が空き始めたなと。
ぼんやりしていた耳に。
「な、なんで!
俺以外の血を、食べるんだ!
約束、してたのに!!」
今まで怯え、避け、躊躇っていた角無し鬼に。
思い切り御子息が怒鳴っていた。
瑠璃丸も私も、お互いの顔を見合わせる。
契った相手以外を糧にしてはいけない、なんて。
自分たち以外にもいたんだな。
今まで出会ったことがなかっただけに、新鮮だ。
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