鬼ごっこ～あのこがほしい～

鬼隠し２

「どうやら、鬼にさらわれ、鬼落ちせずに人のまま戻ってきた史実を幾つか見つけたんだ。
光を失った、または一時的に光をなくした状態でね。
服従させようとして失敗するような、どうも拮抗した間柄に起きていたようで」

角無し鬼の表情が、曇り。
現当主を険しい目で睨む。

「その内容までは記載されてないんだけど、『鬼隠し』って人は恐れて・・・」
「それを、我が主にしろというのか！？」

言い終わらぬうちに、角無し鬼は声を荒げかき消す。
その腕が、瞬時に現当主の首を捉え天井に頭を強打させる。

扇子が現当主の手を離れ。
畳の上に、ヒラヒラと螺旋を描くように落ちた。

え、なんで。
今まで大人しかったのに！
このままでは、殺されてしまうっ

「お、お師匠様！！」

動けずにいたお師匠様に鋭くを呼び掛けた。

「こらっ、ミヤビちゃん！
早くアレを止めろ！
リアンが死んだら、どうしてくれるんだ！！」
「え、え、え」
「鬼隠しってなんや？」

瑠璃丸以外、三者三様でパニック。
どうあっても、自力では太刀打ちできない。
でも、ギリギリと食い込む爪が！

現当主と契った元一角も。
各々、緊急事態に気付いたらしい。
部屋を埋め尽くす勢いで、集まりだす。

けれど、同じく立ち打ち出来ないから。
数ｍ離れた壁際でバタバタ、ワタワタ。

その間も。
角無し鬼の爪が、ギリギリと現当主の首に食い込み。
幾筋もの血が流れ、服を濡らす。

「・・・っ、アッ・・・グ・・・」

現当主も、震える指で印をきり。
抵抗を試みているようだけど。

その指の動きも・・・遂に、途切れた。

「はやく止めさせろ、ミヤビ！」

バチンッ

お師匠様の鉄拳が、御子息の左頬を打ち。

「や、止めろ、離せ！！」

御子息が、現当主を持ち上げている腕にしがみつき。
その手から、父親を救出、した。

その間。
一分も無かったかもしれない。
わずかな時間だったが。
その場のギリギリ保たれていた均衡は、崩れてしまった。