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上野家
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「自己紹介を続けるね」
現当主とお師匠様は、御子息と手をつないだまま両脇に立った。
「この人は、雅ちゃんの母親。
上野 彰姫さん、私は彰ちゃんと呼んでるよ。
そこにいる、京一郎君の師匠でもあるし。
私の秘密の妻でもある。
と、いうのもね」
現当主は、扇子を開いたり閉じたり。
言葉を選びながら続ける。
「雅ちゃんを穏便に神宮寺家に受け入れるには、土台作りが必要でね。
私が神宮寺家の当主となるのもそのひとつ。
前当主である彰ちゃんの父親を、『鬼比べ』という契った鬼同士を競わせる大会で倒す必要があったから、二人の接点を表向きはなくしていたんだ。
おそらく、前当主一人だけなら、事情を話してもよかったんだろうけど。
取り巻きさんがそれをゆるさないからね」
「親父を利用して、如何に自分たちの望むほうへ持っていくかしか考えてないのもいるからナ」
夫婦で笑って話すけど。
内容は、神宮寺家に激震を走らせるものですよ。
というか、これから語られ続けるであろう『御子息を穏便に公にする計画』は。
一体、何年前から発動してるんですか!?
「上野家は、代々角無し鬼の使役がうまい家系でね。
調べてみたら、三十代以上遡れるくらい、ずーっと当主を務めている家なんだ。
その分、周りを取り巻く利権争いもすごいんだよ。
だから、雅ちゃんの存在と私たちの関係は、まだまだ秘密にするのでよろしくね。
雅ちゃんの光が収まって、もうすこし神宮寺家を掃除したら公にするから」
掃除って、何する気なんだろう。
また、黒い笑みが・・・
お師匠様の怖さは、表立った怖さというか。
とてもわかりやすくて、見たら逃げろと鬼が逃亡する怖さ。
現当主の怖さは、気付いたら内側から氷付けにされそうな怖さ。
逃げる間も与えず、急所を貫き、抉ってくるような怖さ。
怖さの次元が違う。
「当主の娘なんて関係なく蔑んできたリアンくんに、こちらが惚れて迫って追い掛け回してたときはこんな大事になるとは思ってなかったんだヨ。
ミヤビちゃんには、かなり負担をかけてしまってごめんネ」
そんなことないよと、母親の肩を抱く御子息。
感動深い光景だけど、私の思考はその前で止まっていた。
お師匠様、蔑んできた相手を好きになるって、Mだったんですか!?
いや、そもそも。
前当主の一人娘であるお師匠様は、婿を選び放題の立場。
神宮寺家内で、相手にされないなんてことは考えられない。
この二人、何があったんだ・・・
私の驚愕をよそに。
話はどんどん進められる。
すっかり私の中で、現当主の印象は変わっていた。
『前当主派が蹴落としたい人』としか認識がなかったけれど。
この人には、逆らわないほうがいい。
お師匠様よりも、恐れなければならない人だ・・・
「私が当主になる前は、それこそ貴方がいた時代と同じ」
現当主は、沈黙したままの角無し鬼に語りかける。
「人と鬼の争いは、小さいながらも続いていたんですよ」
現当主とお師匠様は、御子息と手をつないだまま両脇に立った。
「この人は、雅ちゃんの母親。
上野 彰姫さん、私は彰ちゃんと呼んでるよ。
そこにいる、京一郎君の師匠でもあるし。
私の秘密の妻でもある。
と、いうのもね」
現当主は、扇子を開いたり閉じたり。
言葉を選びながら続ける。
「雅ちゃんを穏便に神宮寺家に受け入れるには、土台作りが必要でね。
私が神宮寺家の当主となるのもそのひとつ。
前当主である彰ちゃんの父親を、『鬼比べ』という契った鬼同士を競わせる大会で倒す必要があったから、二人の接点を表向きはなくしていたんだ。
おそらく、前当主一人だけなら、事情を話してもよかったんだろうけど。
取り巻きさんがそれをゆるさないからね」
「親父を利用して、如何に自分たちの望むほうへ持っていくかしか考えてないのもいるからナ」
夫婦で笑って話すけど。
内容は、神宮寺家に激震を走らせるものですよ。
というか、これから語られ続けるであろう『御子息を穏便に公にする計画』は。
一体、何年前から発動してるんですか!?
「上野家は、代々角無し鬼の使役がうまい家系でね。
調べてみたら、三十代以上遡れるくらい、ずーっと当主を務めている家なんだ。
その分、周りを取り巻く利権争いもすごいんだよ。
だから、雅ちゃんの存在と私たちの関係は、まだまだ秘密にするのでよろしくね。
雅ちゃんの光が収まって、もうすこし神宮寺家を掃除したら公にするから」
掃除って、何する気なんだろう。
また、黒い笑みが・・・
お師匠様の怖さは、表立った怖さというか。
とてもわかりやすくて、見たら逃げろと鬼が逃亡する怖さ。
現当主の怖さは、気付いたら内側から氷付けにされそうな怖さ。
逃げる間も与えず、急所を貫き、抉ってくるような怖さ。
怖さの次元が違う。
「当主の娘なんて関係なく蔑んできたリアンくんに、こちらが惚れて迫って追い掛け回してたときはこんな大事になるとは思ってなかったんだヨ。
ミヤビちゃんには、かなり負担をかけてしまってごめんネ」
そんなことないよと、母親の肩を抱く御子息。
感動深い光景だけど、私の思考はその前で止まっていた。
お師匠様、蔑んできた相手を好きになるって、Mだったんですか!?
いや、そもそも。
前当主の一人娘であるお師匠様は、婿を選び放題の立場。
神宮寺家内で、相手にされないなんてことは考えられない。
この二人、何があったんだ・・・
私の驚愕をよそに。
話はどんどん進められる。
すっかり私の中で、現当主の印象は変わっていた。
『前当主派が蹴落としたい人』としか認識がなかったけれど。
この人には、逆らわないほうがいい。
お師匠様よりも、恐れなければならない人だ・・・
「私が当主になる前は、それこそ貴方がいた時代と同じ」
現当主は、沈黙したままの角無し鬼に語りかける。
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