鬼ごっこ~あのこがほしい~

三日月

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望まない活躍1

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「近づくけど、攻撃してこないでね」

現当主がお師匠様の手を放し、ひとりでゆっくりと角無し鬼のほうへ歩いていく。

その間も、私は瑠璃丸に抱きかかえられたまま。

息を整え、落ち着きたいのに。
どれだけ待ちわびていた、とか。
どれだけおいしかった、とか。
延々と、耳元で熱烈に瑠璃丸から感想を述べられ。
羞恥で真っ赤に染まり、事態を正確に把握できない。

「もぅ、今は・・・しゃべるなっ」

そして、私をしゃべらせるな。 

頼むから。
吐息のような、掠れた自分の声に。
ますます、いたたまれない。
とっさに口を手で隠そうとして、指が頬に触れただけなのに。
ビクンッと身体がはねてしまう。
全神経が過敏に成りすぎて、息を咄嗟に止めないと洩らすには恥ずかしい声が出そうになった。

「え~、じゃあ、帰ってからにするぅ」

ギュッと、後ろから抱きしめられ。
頭に頬擦りされて、ゾクゾク背中に甘い痺れが走る。
口内と記憶に残った、あれやこれや。
しばらく瑠璃丸の顔を正面から見れそうにないのでこの体勢は逆に助かる。
声が漏れないよう細心の注意を払いながら、すぐに乱れそうなっている息を整えた。

「全然敵意がないのは、わかるよね。
君の主を起こしたいから、近づくし、触るよ~」

現当主は、ニコニコ笑いながら扇子で光る人を指し示す。
角無し鬼は、無言でうなずき立ち上がった。
代わりにその場に跪く現当主を、すぐ傍で見下ろしている。
ただそれだけの動作。
力も入っていない、自然な二人の動き。
けれど。
見ているほうが、こんなに緊張するのはなぜなんだろう。

緊張で、胸が苦しく、チリチリ肌が焼けるような痛みを感じる。

「あぁ、その前に」

扇子を一振りし、開けると。
光る人を優しい風で一回、二回と仰ぐ。
仰ぐたびに、光が弱まり消えていく。

本人の意思を介在しない、外側からの制御。

扇に宿った力が、光を、香りを。
内部へ収束させていくのがわかる。
さすが、歴代随一のクラフター。

「もともと、私は非戦闘員だからね。
こういったものも作れるんだ。
でも、わかるよね?
コレは、この子には一時しのぎにしかならない」

現当主は、角無し鬼を見上げる。

「だから私たちは、この子を守るために君を選ばせてもらったんだよ」
「・・・計算して出来ることではないだろう」

角無し鬼は、人である現当主の目を見て。
現当主と、話している。
認めている。

「計算無しで、成り立つと思う?」

私は無視され。
光る人の母親だったお師匠様には、言葉を発し。
現当主とは、対話している。

そういえば、さっき・・・現当主はこの人を。
光が途切れ、目で観察できるようになったこの人を。
なんと言っていたか・・・うちの、子だったような。
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