14 / 195
望まない活躍1
しおりを挟む
「近づくけど、攻撃してこないでね」
現当主がお師匠様の手を放し、ひとりでゆっくりと角無し鬼のほうへ歩いていく。
その間も、私は瑠璃丸に抱きかかえられたまま。
息を整え、落ち着きたいのに。
どれだけ待ちわびていた、とか。
どれだけおいしかった、とか。
延々と、耳元で熱烈に瑠璃丸から感想を述べられ。
羞恥で真っ赤に染まり、事態を正確に把握できない。
「もぅ、今は・・・しゃべるなっ」
そして、私をしゃべらせるな。
頼むから。
吐息のような、掠れた自分の声に。
ますます、いたたまれない。
とっさに口を手で隠そうとして、指が頬に触れただけなのに。
ビクンッと身体がはねてしまう。
全神経が過敏に成りすぎて、息を咄嗟に止めないと洩らすには恥ずかしい声が出そうになった。
「え~、じゃあ、帰ってからにするぅ」
ギュッと、後ろから抱きしめられ。
頭に頬擦りされて、ゾクゾク背中に甘い痺れが走る。
口内と記憶に残った、あれやこれや。
しばらく瑠璃丸の顔を正面から見れそうにないのでこの体勢は逆に助かる。
声が漏れないよう細心の注意を払いながら、すぐに乱れそうなっている息を整えた。
「全然敵意がないのは、わかるよね。
君の主を起こしたいから、近づくし、触るよ~」
現当主は、ニコニコ笑いながら扇子で光る人を指し示す。
角無し鬼は、無言でうなずき立ち上がった。
代わりにその場に跪く現当主を、すぐ傍で見下ろしている。
ただそれだけの動作。
力も入っていない、自然な二人の動き。
けれど。
見ているほうが、こんなに緊張するのはなぜなんだろう。
緊張で、胸が苦しく、チリチリ肌が焼けるような痛みを感じる。
「あぁ、その前に」
扇子を一振りし、開けると。
光る人を優しい風で一回、二回と仰ぐ。
仰ぐたびに、光が弱まり消えていく。
本人の意思を介在しない、外側からの制御。
扇に宿った力が、光を、香りを。
内部へ収束させていくのがわかる。
さすが、歴代随一のクラフター。
「もともと、私は非戦闘員だからね。
こういったものも作れるんだ。
でも、わかるよね?
コレは、この子には一時しのぎにしかならない」
現当主は、角無し鬼を見上げる。
「だから私たちは、この子を守るために君を選ばせてもらったんだよ」
「・・・計算して出来ることではないだろう」
角無し鬼は、人である現当主の目を見て。
現当主と、話している。
認めている。
「計算無しで、成り立つと思う?」
私は無視され。
光る人の母親だったお師匠様には、言葉を発し。
現当主とは、対話している。
そういえば、さっき・・・現当主はこの人を。
光が途切れ、目で観察できるようになったこの人を。
なんと言っていたか・・・うちの、子だったような。
現当主がお師匠様の手を放し、ひとりでゆっくりと角無し鬼のほうへ歩いていく。
その間も、私は瑠璃丸に抱きかかえられたまま。
息を整え、落ち着きたいのに。
どれだけ待ちわびていた、とか。
どれだけおいしかった、とか。
延々と、耳元で熱烈に瑠璃丸から感想を述べられ。
羞恥で真っ赤に染まり、事態を正確に把握できない。
「もぅ、今は・・・しゃべるなっ」
そして、私をしゃべらせるな。
頼むから。
吐息のような、掠れた自分の声に。
ますます、いたたまれない。
とっさに口を手で隠そうとして、指が頬に触れただけなのに。
ビクンッと身体がはねてしまう。
全神経が過敏に成りすぎて、息を咄嗟に止めないと洩らすには恥ずかしい声が出そうになった。
「え~、じゃあ、帰ってからにするぅ」
ギュッと、後ろから抱きしめられ。
頭に頬擦りされて、ゾクゾク背中に甘い痺れが走る。
口内と記憶に残った、あれやこれや。
しばらく瑠璃丸の顔を正面から見れそうにないのでこの体勢は逆に助かる。
声が漏れないよう細心の注意を払いながら、すぐに乱れそうなっている息を整えた。
「全然敵意がないのは、わかるよね。
君の主を起こしたいから、近づくし、触るよ~」
現当主は、ニコニコ笑いながら扇子で光る人を指し示す。
角無し鬼は、無言でうなずき立ち上がった。
代わりにその場に跪く現当主を、すぐ傍で見下ろしている。
ただそれだけの動作。
力も入っていない、自然な二人の動き。
けれど。
見ているほうが、こんなに緊張するのはなぜなんだろう。
緊張で、胸が苦しく、チリチリ肌が焼けるような痛みを感じる。
「あぁ、その前に」
扇子を一振りし、開けると。
光る人を優しい風で一回、二回と仰ぐ。
仰ぐたびに、光が弱まり消えていく。
本人の意思を介在しない、外側からの制御。
扇に宿った力が、光を、香りを。
内部へ収束させていくのがわかる。
さすが、歴代随一のクラフター。
「もともと、私は非戦闘員だからね。
こういったものも作れるんだ。
でも、わかるよね?
コレは、この子には一時しのぎにしかならない」
現当主は、角無し鬼を見上げる。
「だから私たちは、この子を守るために君を選ばせてもらったんだよ」
「・・・計算して出来ることではないだろう」
角無し鬼は、人である現当主の目を見て。
現当主と、話している。
認めている。
「計算無しで、成り立つと思う?」
私は無視され。
光る人の母親だったお師匠様には、言葉を発し。
現当主とは、対話している。
そういえば、さっき・・・現当主はこの人を。
光が途切れ、目で観察できるようになったこの人を。
なんと言っていたか・・・うちの、子だったような。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる