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裏技1

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「では、話を進める前に、キョウイチロウくんに新たな知恵を授けよう」

お師匠様と現当主のいちゃいちゃも、ようやく終了したようだ。
現当主もお師匠様も立ち上がり、私たちの方へ近づいてくる。

恋人繋ぎ、で。

え~っと、この二人。
ずっとこんな感じなんですか?

ここにつれてこられているのは、私たちだけじゃない。
このまま内輪で話を進めていたら、角無し鬼がいつか怒り出すんじゃ・・・

ちらっと後方を見れば。
畳の上に寝たままの光る人。
その傍に跪き、角無し鬼はじっと見下ろしている。
光が強すぎて把握でなかったけど、どうやら寝ているのか気を失っているのか。
目覚めを待っているみたいだな。

お師匠様の声が、弾む。

「鬼や角無し鬼の糧とはな~んだ?」
「汗と涙と血、それと肉や骨、毛です」

うんうん、即答正解オメデトウとお師匠様は笑う。
あ、機嫌がかなりいいな。

「ただしそれは、一般的に、身の丈にあった鬼と契った場合。
気づいてたはずだよネ?
キョウイチロウくんとルリルリは、明らかにアンバランス。
ルリルリが力を抑制してるから、君は鬼落ちせずにすんでるって」
「はい」

改めて突きつけられる事実に、素直に頷く。

他の捕縛師が連れている元鬼に比べて、瑠璃丸の力は強い。
容姿がそれを物語っている。
神宮寺家でも二体しかいない、属性持ちと呼ばれる最高ランクの力を有している。
でも、私に力がないから全力は出せていない。

「それに、ルリルリがいつも空腹を我慢してるのも気づいてるよね?」
「・・・はい」

私が自分で調整し、渡せるのは血だけ。
涙より栄養価は高いらしいが、一定量しか渡せない。
瑠璃丸が、街中で保護対象にならない弱々しい光る人を目にすると。
脆弱な光を無意識に目で追っているのを知っている。

「力は、今後のキョウイチロウくんのノビシロ次第。
空腹対策として、今回は裏技を教えます。
今答えたもの以外で、キミの身体にあるもので。
糧となるのはな~んだ?」

え、おおざっぱすぎる質問。
それでも、お師匠に聞かれたら答えないと。
鼻水含む排泄物は混じり物が多すぎて入らないというのは知っている。
他に、なにか・・・・

「はい、時間切れ」

「いや、まだちょとしか時間・・・」

お師匠様は、ニマニマと人の悪い笑みを浮かべ。
当主も扇子で口元は隠している。

「即答しか認めません。
さ、ルリルリ!
この場で教えられる範囲で、キョウイチロウくんに正解を実践で教えてあげて~
キョウイチロウくんは、ルリルリの正面に座る!」

条件反射で、言われるがままに正面で正座。
そこで、やっと気づいた。

瑠璃丸が、力を使い果たした空腹の状態で。
極上認定の光る人と同じ部屋にいつづける環境。
食欲を押さえることが、どれだけつらいことなのか。
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