鬼ごっこ~あのこがほしい~

三日月

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極上の御子息様

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こちらが片付け終えたところで、どうやら向こうも一掃されたようだ。
教会の裏手。
この場に立っているのは、私と瑠璃丸、角無し鬼。
その足元に寝かされた人の光は、未だ持続している。


さて。
冷徹な目でこちらを見下ろし。
臨戦態勢で、漆黒の細身の剣をこちらに向ける角無し鬼相手に。
何からどう話を進めれば、そこの人を回収できるのか・・・

「なんの用だ」

しかも、その瞳に映るのは私の横で座り込んでしまった瑠璃丸だけのようだ。

「あの~」

二体の間に入り話しかけてみたが、一瞥して無視。
これは、瑠璃丸に説明をさせるしかないな。
鬼の中には、食料である人と対等に話すことを嫌うタイプがいる。
この角無し鬼は、そのタイプなんだろう。
あれこれ話しかけて逆上されても困るし・・・

「瑠璃丸、まずは・・・」

「無理ぃ・・・
もう、頭回らん・・・」

お腹を抱え、私の足に体重を預けてくる。
いつもは薄く色づいた唇が、青かった。
本気でお腹が空いているな・・・
説明させるのは、無理か。

だが。
瑠璃丸の情けない姿を見下ろし、見下し、値踏みしているこの角無し鬼に。
空腹を理由に、人と話せと願っても、通じるとは思えない・・・

場が膠着したところで。

「お疲れさ~ン」

周囲に残った鬼の死骸目掛け。
紙札を飛ばし、触れた先から焼き尽くし。
お師匠様が悠々と歩いてくる。

「一小節では、光を封じれてないかぁ~」

光りを宿したままの人を認知し、口を尖らせ困った困ったと首を振り。
瑠璃丸だけを認識する角無し鬼の視線をさえぎるように、お師匠様は瑠璃丸の前に立った。

「さア、ちゃんと顔を見てもらおうか」

角無し鬼が苛立ち、剣に力が込められていくのがわかる。
周囲の空気が、一気に下がったのを肌で感じる。

殺戮の意志、有り。

それでも、お師匠様は話を続ける。

「そこの君の主の頭。
覗いたときに、この顔が見えてたろう?
剣より話をしたい。
こちらで場所は用意するからサ」

話している内容はわからないが、角無し鬼には思い当たる節があったらしい。

動きが止まり、手から剣が消える。

「・・・確かに、近しい者のようだな」

「近いも何も、お母さんだしナ」




・・・・え?




自分と瑠璃丸の身体が、ビクッと震え。
同時に思考が停止したのを感じる。

いやいや、聞き間違いか?

前当主の愛娘にして、鬼が逃げ出す『鬼姫』
その美貌と血統から寄ってくる、父親経由の後取り候補が。
次々と手荒な歓迎を受けて帰るのを、修行場でも数え切れないくらい見ていたぞ・・・

いつ結婚?
いつ妊娠?
と、いうか、オカアサンって母親以外に何か指したか??

「おい、おい、キョウイチロウくんとルリルリ。
驚きすぎじゃなイ?」

くるりと振り返り、失敬だなと睨まれましても。

いやいや。

だって、そんな、子持ちなんて話・・・
誰からも、どこからも、聞いたことありませんよ!
前当主も、一生独身だと諦めたって噂を聞いてますよ!

にやにや笑いで振り返り、地面に札を叩きつけるお師匠様。

「通せ、鬼走り!」

3人と二体含む空間が暗転。
足元に光が走る。

鬼か人と契った角無し鬼同士を起点と終点にした移動手段。

行き先は、修行場の御山か・・・?

状況を理解できないまま、終点に私たちは渡った。
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