鬼ごっこ～あのこがほしい～

弥勒過去編(瑛二＆白銀)

一葉 １

「俺が決めたんだっ」
「いいかげんにしてくださいっ！！！」

瑛二と、弥勒家内では地位も高く一目置かれている利一との言い争い。
学校から帰宅すると、毎日のように瑛二は利一を呼び出している。
角無しになった鬼の僕がその間に入ると、白髪の利一は口も聞かなくなるので。
障子を隔てた廊下で、この二週間ほど膠着している問題の決着を待っている。

いい加減、二人の意見も出尽くしていたけど。
瑛二を止めるには至っていないから。
・・・そろそろ利一も諦めるだろう。

瑛二が、考えた計画は色々あるみたいで。
事前に内容を説明してくれた瑛二は、そのどれも譲る気はないと悪い顔で嗤っていた。

「何度も申しますが、神宮寺家に属する家、特にその当主となる瑛二様が！
定められた本家を離れた場所で生活するなど、前例がありませんっ」
「どの時代に生まれたんだ、利一？
今は携帯もあるし、そんな近くにいる必要なんてナイ。
急ぎのようなら、俺には白銀が居るから距離も関係ナイ」
「周りの者が迷惑しますっ」
「あ”－、周りの者？
その周りの者が、全然俺より動きが鈍いのはお前の耳にも入ってるだろ？
俺、命預けてんだぜ？
ついでにこの本家に合宿でもさせて鍛えなおせよ」

利一が珍しく黙る。
年が明けてから瑛二の身体に傷がつくことも増えて、僕もついて行かざるを得なくなってきてるしね。
質が落ちてきたのは事実。

「今の本家の人間は俺だけ。
それに大してこの広大な屋敷、必要か？
年間の、ここの維持費と使用人への支払いは割りにあわねーよ。
白銀と俺だけ別に住んだほうが、経済的。
合宿やら年末年始の挨拶やら、その最低限出来る程度に出費はとどめろ。
で、余った分を、給与として支払ってやれ。
命張って俺を守る人間の給与にしては安すぎんだよ。
やる気も出たら、動きだって良くなるだろ？」
「しかしっ」
「当主は俺だ。
不備が出たらまた戻せばいい。
来月には、俺たちは出て行くぞ、いいな？」


強引な瑛二のやり方も。
給与という形で反映されれば、全員が反対には回らない。
士気を高めるためにも、有効。
それに、弥勒家では当主の命は絶対だ。