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弥勒過去編(瑛二&白銀)
悩み 4
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瑛二の誘いを受けて、町に出たクリスマス。
僕は瑛一の姿で、瑛二についていく。
人間だった頃なら、装飾が一切ない無地のセーターにスキニーパンツ、ダウンジャケット。
シンプルで当たり障りの無いものを無難に選んでいた。
今回も、そのつもりだったけど・・・
モッズコートで体格を覆って、パンツもゆるめのデザインにしている。
初めて着るデザインは、似合っているのか今の僕には判断も出来ない。
兎に角、瑛二には気付かれないように、しないと。
鬼の化け術は、思い描いたとおりの体型や服装を再構築する。
それは、想像が詳細で鮮明であればあるほど、よりリアルに化けることが出来る。
鬼にとって人間は食料でしかないから、本来なら個体差の認識は難しい。
人間だった頃の記憶がないと、人間としてはどこか違和感がある容姿になってしまう。
僕の場合は、瑛一の記憶も継承しているし。
瑛一の身体であれば、鬼落ちする直前までリアルに化けることが出来ていた。
今回も、26歳の瑛一に化けたはずだったのに。
うまく、いかなかった。
腹部だけが、何度試しても思い通りに再構築されない。
膨らみのある、それこそ、人間だったときにも見たことがないお腹になってしまう。
何度やり直しても、鍛えていたあの頃とは似付かない体型に変わってしまう。
今までは気付かなかったけれど。
鬼の状態に戻って腹部に注意して見てみると、以前よりもわずかに膨らんできているような気もしてくる。
鬼の病気なんて・・・聞いたことがない。
毎日、瑛二を食べ過ぎてるせいだろうか。
控えないといけないのかな。
そう考えただけで、ジワジワ唾液が口の中に滲む。
「白銀、どーかしたか?」
考え事をしていた僕を気遣う瑛二。
瑛二には心配をかけたくない。
弥勒家の当主に、あの学校での生活。
同行した10月の学園祭で、多少黙らせたけど・・・
これ以上、僕が負担になりたくない。
「いや、瑛二と出かけることなんてなかったからな。
不思議で、ね」
「そうだな・・・俺、避けてたからな。
ガキくさ過ぎて、自分のことしか考えてなかった」
「違うよ。
僕が、それを望んでいたからだよ」
ウィンドーショッピングに、カラオケ、ゲーセン。
瑛二のかつてのホームグラウンドを歩きながら。
久しぶりだなと、声をかけられる瑛二の姿を見ながら。
僕は、瑛二の未来を変えてしまったことを思い知る。
僕さえ、生きていれば。
「おーまえ、また、自分責めてるだろ」
友達の輪から戻ってきた瑛二に、軽く肩を叩かれ。
慌てて取り繕おうとするけど、簡単に見抜かれる。
苦笑しながら、鋭い視線で俺の後悔を砕いてくれる。
「俺が、今の俺の方がイイっていってんだから。
そろそろ、開き直るくらいしろよ?
働いて、修行して、それしかしてこなかったんだ。
全然息抜きもせずに生きてたお前に、この雰囲気を味わって欲しくて来てんだぜ?
・・・お前がそこまで気に病むとか、思ってなかったからさ」
「た、楽しんでるよ。
確かに僕は、こうやって遊ぶことがなかったからね。
瑛二の歌も、もっと聞きたいし。
瑛二のいろんな顔を見たいから、また来たい」
「なら、いいんだけど」
イルミネーションに彩られた公園を歩きながら。
瑛二が右手を伸ばしてくれる。
繋ぎ、たいけど。
さすがに・・・目立つ。
躊躇する僕の手を、瑛二は強引に掴んでそのまま歩く。
「あの、瑛二・・・」
「いーだろ、どうせ今は仲がいい兄弟くらいにしか思われねーよ。
ま、あんまり似てないけどな」
瑛二は、父様似の目力と男らしい顔立ち。
僕は、母様似でどちらかといえば中性的だった。
年も離れているから、周りに兄弟として映るだろうか??
瑛二が何か言われないか、心配ではあるけれど。
僕はその手を離せない。
瑛二と過ごす時間が大切で仕方ない。
僕は瑛一の姿で、瑛二についていく。
人間だった頃なら、装飾が一切ない無地のセーターにスキニーパンツ、ダウンジャケット。
シンプルで当たり障りの無いものを無難に選んでいた。
今回も、そのつもりだったけど・・・
モッズコートで体格を覆って、パンツもゆるめのデザインにしている。
初めて着るデザインは、似合っているのか今の僕には判断も出来ない。
兎に角、瑛二には気付かれないように、しないと。
鬼の化け術は、思い描いたとおりの体型や服装を再構築する。
それは、想像が詳細で鮮明であればあるほど、よりリアルに化けることが出来る。
鬼にとって人間は食料でしかないから、本来なら個体差の認識は難しい。
人間だった頃の記憶がないと、人間としてはどこか違和感がある容姿になってしまう。
僕の場合は、瑛一の記憶も継承しているし。
瑛一の身体であれば、鬼落ちする直前までリアルに化けることが出来ていた。
今回も、26歳の瑛一に化けたはずだったのに。
うまく、いかなかった。
腹部だけが、何度試しても思い通りに再構築されない。
膨らみのある、それこそ、人間だったときにも見たことがないお腹になってしまう。
何度やり直しても、鍛えていたあの頃とは似付かない体型に変わってしまう。
今までは気付かなかったけれど。
鬼の状態に戻って腹部に注意して見てみると、以前よりもわずかに膨らんできているような気もしてくる。
鬼の病気なんて・・・聞いたことがない。
毎日、瑛二を食べ過ぎてるせいだろうか。
控えないといけないのかな。
そう考えただけで、ジワジワ唾液が口の中に滲む。
「白銀、どーかしたか?」
考え事をしていた僕を気遣う瑛二。
瑛二には心配をかけたくない。
弥勒家の当主に、あの学校での生活。
同行した10月の学園祭で、多少黙らせたけど・・・
これ以上、僕が負担になりたくない。
「いや、瑛二と出かけることなんてなかったからな。
不思議で、ね」
「そうだな・・・俺、避けてたからな。
ガキくさ過ぎて、自分のことしか考えてなかった」
「違うよ。
僕が、それを望んでいたからだよ」
ウィンドーショッピングに、カラオケ、ゲーセン。
瑛二のかつてのホームグラウンドを歩きながら。
久しぶりだなと、声をかけられる瑛二の姿を見ながら。
僕は、瑛二の未来を変えてしまったことを思い知る。
僕さえ、生きていれば。
「おーまえ、また、自分責めてるだろ」
友達の輪から戻ってきた瑛二に、軽く肩を叩かれ。
慌てて取り繕おうとするけど、簡単に見抜かれる。
苦笑しながら、鋭い視線で俺の後悔を砕いてくれる。
「俺が、今の俺の方がイイっていってんだから。
そろそろ、開き直るくらいしろよ?
働いて、修行して、それしかしてこなかったんだ。
全然息抜きもせずに生きてたお前に、この雰囲気を味わって欲しくて来てんだぜ?
・・・お前がそこまで気に病むとか、思ってなかったからさ」
「た、楽しんでるよ。
確かに僕は、こうやって遊ぶことがなかったからね。
瑛二の歌も、もっと聞きたいし。
瑛二のいろんな顔を見たいから、また来たい」
「なら、いいんだけど」
イルミネーションに彩られた公園を歩きながら。
瑛二が右手を伸ばしてくれる。
繋ぎ、たいけど。
さすがに・・・目立つ。
躊躇する僕の手を、瑛二は強引に掴んでそのまま歩く。
「あの、瑛二・・・」
「いーだろ、どうせ今は仲がいい兄弟くらいにしか思われねーよ。
ま、あんまり似てないけどな」
瑛二は、父様似の目力と男らしい顔立ち。
僕は、母様似でどちらかといえば中性的だった。
年も離れているから、周りに兄弟として映るだろうか??
瑛二が何か言われないか、心配ではあるけれど。
僕はその手を離せない。
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