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「日当三万、一日限りで守秘義務ありのバイトしてくれない?!」
扉を開けると、瞬が瀕死の表情で立っていた。
驚きすぎて固まっていたら、ズイッと目と鼻の先にアップに耐えうる義兄の整った顔が迫ってくる。
これが平時であれば、同性の悠介さえドキッと胸を高鳴らせるところだが。
ギラギラ輝く血走った目に、無理やり笑顔を作ろうとしてピクピク引き攣る口元。
顔は良くても纏っているオーラが悪過ぎる。
悠介は無言のまま扉を閉めようとした、が。
「待ってぇぇぇっ」
隙間に無理やり肩を入れ、腕に縋りついてくる様はホラーの域。
挨拶以外の交わす言葉は、「洗濯物置いとくね」「ご飯出来たよ」の業務連絡並。
それでさえ、お互い気を使ってオドオドしながら話していた。
どう接してよいかわからない義兄は、この瞬間不審人物、いや、危険人物へ降格した。
瞬の細身な見た目のどこにこんな力があるのか。
悠介が腕を引き剥がそうと指を掛けても、その倍の力で握られる。
肩や背中で扉を押し、なんとか瞬を追い出そうとするが一回り大きい瞬との攻防に時間はかからない。
悠介抵抗虚しく、無理やり部屋に入られてしまった。
「ちょ、ちょっと、なんなんだよっ」
「五万、うぅん、十万出すからっっ」
両膝を床に着いた瞬は、悠介の腰にガッチリ腕を回して必死の表情。
鬼気迫る顔は明らかに正常な判断能力を失っている。
この様子では、悠介の声なんて届いていないのだろう。
提示された金額は、小遣い月五千円の悠介には魅力的過ぎる。
だけれど、これで引き受けたら大事な何かを失いそうだ・・・
悠介が躊躇っているうちに、遂に瞬はその場で土下座。
額を床に擦り付け、涙ながらに懇願。
「お願いしますぅぅっっ」
義兄からの、初めての頼み事、が、コレ。
嫌な予感しか、しない。
しない、けれども。
「ーーー取り敢えず、内容を聞かせてください」
悠介は軽い溜め息とともに身体から力を抜くと、腰を落とし、そっとその震える肩に手を置いた。
扉を開けると、瞬が瀕死の表情で立っていた。
驚きすぎて固まっていたら、ズイッと目と鼻の先にアップに耐えうる義兄の整った顔が迫ってくる。
これが平時であれば、同性の悠介さえドキッと胸を高鳴らせるところだが。
ギラギラ輝く血走った目に、無理やり笑顔を作ろうとしてピクピク引き攣る口元。
顔は良くても纏っているオーラが悪過ぎる。
悠介は無言のまま扉を閉めようとした、が。
「待ってぇぇぇっ」
隙間に無理やり肩を入れ、腕に縋りついてくる様はホラーの域。
挨拶以外の交わす言葉は、「洗濯物置いとくね」「ご飯出来たよ」の業務連絡並。
それでさえ、お互い気を使ってオドオドしながら話していた。
どう接してよいかわからない義兄は、この瞬間不審人物、いや、危険人物へ降格した。
瞬の細身な見た目のどこにこんな力があるのか。
悠介が腕を引き剥がそうと指を掛けても、その倍の力で握られる。
肩や背中で扉を押し、なんとか瞬を追い出そうとするが一回り大きい瞬との攻防に時間はかからない。
悠介抵抗虚しく、無理やり部屋に入られてしまった。
「ちょ、ちょっと、なんなんだよっ」
「五万、うぅん、十万出すからっっ」
両膝を床に着いた瞬は、悠介の腰にガッチリ腕を回して必死の表情。
鬼気迫る顔は明らかに正常な判断能力を失っている。
この様子では、悠介の声なんて届いていないのだろう。
提示された金額は、小遣い月五千円の悠介には魅力的過ぎる。
だけれど、これで引き受けたら大事な何かを失いそうだ・・・
悠介が躊躇っているうちに、遂に瞬はその場で土下座。
額を床に擦り付け、涙ながらに懇願。
「お願いしますぅぅっっ」
義兄からの、初めての頼み事、が、コレ。
嫌な予感しか、しない。
しない、けれども。
「ーーー取り敢えず、内容を聞かせてください」
悠介は軽い溜め息とともに身体から力を抜くと、腰を落とし、そっとその震える肩に手を置いた。
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