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9 大浴場
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「もう、洗わせてもらえないのか・・・」
ガックリと面白いくらいに肩を落としてぼやく木曽。「お前、なんかしたんじゃねーの?」と築花に問われ、真剣に考え込んでいる。これまで木曽は、千里と入浴時間が重なったときは欠かさず願い出て、2、3回に一度は許可を得れていた。αの能力ではなく、千里の器の大きさにあこがれている木曽にとって、その背中に触れ、疲れを癒やす一助となり得る意味は大きい、らしい。群れの一端として鋼を通して役に立つのではなく、直接千里本人になにかさせて欲しいと常に願っていても、なにせ、それをリーダーの鋼が阻むのでチャンス自体が早々無いのだ。千里が一人で風呂場へ向かうときがあれば教えてほしいと頼まれていた身としては、そこまでするのかと呆れつつも完全に拒まれた今の状態を若干不憫にも思う。
(まぁ、胡麻みたいに問答無用で一撃喰らうよりかはマシだろう)
群れの執行役を担う木曽は、千里に隠れて動くことが多くそばにいる時間も少ない。今後は、鋼が千里のガードを更に上げているから極端に減るだろう。
「そう、気を落とすなよ。俺が一回群れを出されたときなんか、食堂で手を振っても挨拶しに行っても無視されてたんだぞ。背中洗えないくらい、全然温い」
「・・・いや、俺はお前と違ってドMじゃねーから」
「俺だってドMじゃねーわっ」
キャンキャン騒がしくなってきた下級生に胡麻が「うるせぇ」と割り込み、なぜかドM三人組がどれくらい鋼に酷いことをされてきたかを競い始める。
本日の一撃を浴びた胡麻の話を直に聞き(漆戸から事前に説明はしている)、「うぉおーっ、センパイの本気の一撃浴びてぇーーーっ」と瞳を輝かせる築花は間違いなくドM優勝だ。峯森が未来の変態上司から目を背け、星空を仰いで現実逃避に走っている。
「お前も大概されてんだから、入ってきたらどうだ?」
「いや、俺は大丈夫だ」
漆戸は、浴槽の隅で大人しくしている葛籠に声を掛けたが遠慮される。同室歴ほぼ6年、誰よりも鋼と長い時間一緒にいるのだからエピソードには事欠かないと思うのだが。
「おい、追加で話がある。築花、お前みたいな笹部さん信者は除いて」
「ふふん」
ドヤ顔をする築花に、漆戸は半目。鋼に傾倒していることを揶揄し、わざわざ信者と呼んでも喜ばれてしまうのはなぜだろう。(深く考えないでおこう)
「穂高さんがさっき木曽に触れてほしくない素振りを見せ、笹部さんはそれを嬉しそうに見ていたのを確認した者もいるだろう。穂高さんに触れようとする人間は、尽く排除するぞ。嫌な予感しかしないからな」
「教師もか?」
攻撃された胡麻が、手を上げて確認してくる。
「笑って許されそうなレベルだったか?」
「まさか!ってことは、教師も生徒も、なんなら学園の外でもってことかよ」
「生徒会から退いたから、学園の外に出向く機会は無いと思うが。もし、一人で外出されるようなことがあれば随行する」
「そこまで必要かぁ?」
千里に重きを置かない築花は疑問視。
「俺が張り付くっっ」
一方木曽は、勢いよく立ち上がり、漆戸に迫って猛アピール。漆戸は、顔にかかる飛沫を手で払いのけながら頷いた。
「わかった、わかった。そのときは木曽を優先させる」
「ヨッシャーーーーーッッッ」
両拳を天井高く上げて喜ぶ木曽。(まぁ、笹部さんが一人にしそうに無いけどな・・・)漆戸は、明日から授業に出る鋼と千里の周りで問題を起こさないよう、それぞれの群れに細心の注意を払えと厳命した。
ガックリと面白いくらいに肩を落としてぼやく木曽。「お前、なんかしたんじゃねーの?」と築花に問われ、真剣に考え込んでいる。これまで木曽は、千里と入浴時間が重なったときは欠かさず願い出て、2、3回に一度は許可を得れていた。αの能力ではなく、千里の器の大きさにあこがれている木曽にとって、その背中に触れ、疲れを癒やす一助となり得る意味は大きい、らしい。群れの一端として鋼を通して役に立つのではなく、直接千里本人になにかさせて欲しいと常に願っていても、なにせ、それをリーダーの鋼が阻むのでチャンス自体が早々無いのだ。千里が一人で風呂場へ向かうときがあれば教えてほしいと頼まれていた身としては、そこまでするのかと呆れつつも完全に拒まれた今の状態を若干不憫にも思う。
(まぁ、胡麻みたいに問答無用で一撃喰らうよりかはマシだろう)
群れの執行役を担う木曽は、千里に隠れて動くことが多くそばにいる時間も少ない。今後は、鋼が千里のガードを更に上げているから極端に減るだろう。
「そう、気を落とすなよ。俺が一回群れを出されたときなんか、食堂で手を振っても挨拶しに行っても無視されてたんだぞ。背中洗えないくらい、全然温い」
「・・・いや、俺はお前と違ってドMじゃねーから」
「俺だってドMじゃねーわっ」
キャンキャン騒がしくなってきた下級生に胡麻が「うるせぇ」と割り込み、なぜかドM三人組がどれくらい鋼に酷いことをされてきたかを競い始める。
本日の一撃を浴びた胡麻の話を直に聞き(漆戸から事前に説明はしている)、「うぉおーっ、センパイの本気の一撃浴びてぇーーーっ」と瞳を輝かせる築花は間違いなくドM優勝だ。峯森が未来の変態上司から目を背け、星空を仰いで現実逃避に走っている。
「お前も大概されてんだから、入ってきたらどうだ?」
「いや、俺は大丈夫だ」
漆戸は、浴槽の隅で大人しくしている葛籠に声を掛けたが遠慮される。同室歴ほぼ6年、誰よりも鋼と長い時間一緒にいるのだからエピソードには事欠かないと思うのだが。
「おい、追加で話がある。築花、お前みたいな笹部さん信者は除いて」
「ふふん」
ドヤ顔をする築花に、漆戸は半目。鋼に傾倒していることを揶揄し、わざわざ信者と呼んでも喜ばれてしまうのはなぜだろう。(深く考えないでおこう)
「穂高さんがさっき木曽に触れてほしくない素振りを見せ、笹部さんはそれを嬉しそうに見ていたのを確認した者もいるだろう。穂高さんに触れようとする人間は、尽く排除するぞ。嫌な予感しかしないからな」
「教師もか?」
攻撃された胡麻が、手を上げて確認してくる。
「笑って許されそうなレベルだったか?」
「まさか!ってことは、教師も生徒も、なんなら学園の外でもってことかよ」
「生徒会から退いたから、学園の外に出向く機会は無いと思うが。もし、一人で外出されるようなことがあれば随行する」
「そこまで必要かぁ?」
千里に重きを置かない築花は疑問視。
「俺が張り付くっっ」
一方木曽は、勢いよく立ち上がり、漆戸に迫って猛アピール。漆戸は、顔にかかる飛沫を手で払いのけながら頷いた。
「わかった、わかった。そのときは木曽を優先させる」
「ヨッシャーーーーーッッッ」
両拳を天井高く上げて喜ぶ木曽。(まぁ、笹部さんが一人にしそうに無いけどな・・・)漆戸は、明日から授業に出る鋼と千里の周りで問題を起こさないよう、それぞれの群れに細心の注意を払えと厳命した。
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