Ωにしちゃってゴメンナサイ

3 初等部教室

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　代々官僚として国の中枢で活躍する穂高家に生まれた千里は、物心つく前から自分も同じ道を辿るべきだと理解し努力し続けてきた。二歳年上の兄の背を追い掛け、同年代のαよりも背伸びした知識を蓄え、身体の鍛錬にも日々取り組み剣道の才能は兄よりも高く評価されるほどだった。
　どうすれば、自分も両親のように官僚として国を動かす担い手となれるか。
　それは憧れや夢といった漠然としたものでは無く、千里が未就学児だった頃からの明確な目的だった。その達成のために一番近道となるαとしての力量は、初めて出席した同年代のαが集まる交流会でそれほど高く無いと自己評価を下して早々に見切りをつけていた。遊びも混じったマウントフェロモンのぶつけ合いで、千里が勝てない相手が何人もいたからだ。
　それならば、他の何を自分は武器に出来るのか。千里が行き着いたのは、足りない部分は他人に頼ると言うことだった。この考え方は、プライドの高いαが選ぶには珍しく、千里がそこへシフトチェンジ出来たのは頼れる兄がいた次子だったからだろう。
　兄の通う優生学園の四季会の存在を知ってからは、如何にそこへ入り込むか。そして入り込むだけでは無く、穂高　千里の名前を広く印象づけ縦横の繋がりを円滑に使うためにはどうすれば良いかを考えた。そして、行き着いたのが誰もなし得ていなかった三冠生徒会長であり、生徒会の完璧な運営だった。
　そもそも、隣に座る笹部に千里から初めて声を掛けたのはその二つの目標を成し得るために笹部の力が必要不可欠だったからだ。笹部は、αの同世代交流会のマウント遊びでは敵無し。そして、それ以上にその姉の存在が有名だった。五歳年上の笹部　鈴は『苛烈姫』として千里が初等部に入学した時点で誰よりも恐れられ、裏の生徒会長として実質初等部のトップだった。
　鋼が入学したときには、予測不能の人災『苛烈姫』に取り入ろうとする上級生の群れの誘いが殺到した。千里が兄に聞いたところによると、どうも笹部姉はファミリータイプの群れしか作らないαだったらしく、初等部では誰も群れに入れず孤高の存在。ならばとその弟を手駒にしようとしたらしい。
　けれど鋼はどの誘いにも乗らず、『苛烈姫』の群れに入ってしまった。そして、姉の鈴が卒業するまでの一年間で、鋼自身も能力の高いαだと知られるには十分な動きをしていた。鈴が卒業した後、鋼の争奪戦が復活したのは言うまでもない。